五話「終わりと始まり」
日曜日が終わり、月曜日の学校が始まった。月曜日は朝に集会があるため体育館より広い講堂という所に全校生徒が集まる。そして背の順で並んだ俺の左側の女子列には惜しくも木崎が居るのだった。
「切っても切れぬ腐れ縁」 「何よ!」
いや、何でもない。とだけ木崎に言ってから委員長に「前習え」とかいう号令をかけられ、皆が両手を挙げ整列をする。前の人から順番に座っていき周りが静かになった所で、改めて生徒の多さに感動した。
すると、校長先生らしき人が講堂の舞台に上がり、一礼をしてからこう言った。
「えー、生徒の皆さん。お早う御座います。肩っ苦しく長い話は無しにしようと思いますので、気を抜いて聞いてください。二,三年生の方々は知っての通りですが、五月に【学年序列決定戦】を開始します。ルールは至ってシンプル。クラス内の全員で其々配られた競技をしてもらいます。その中で一位と二位を決めてもらい、その二人をクラスの代表ペアにします。今度はその決められたメンバーで学年ごとに決められている協議をしてもらい、最後に残った一,二,三年生の生徒六人で対決をしてもらう、という事です。尚、この協議には力の変更が許されているので有効且つバンバン使ってくださいね」
ニコっと笑う校長に「冗談じゃねぇ」と心でツッコミを入れた。
「あーっと、競技内容はサッカーやらドッヂボールやら色々あります。さて、これにて校長のお話を終わりにします」
ペコリ、とお辞儀する校長に湧き出る殺気を抑えきれないでいると、体操座りをしてる隣の木崎が「ふふ、潰してあげるわ」みたいな目で此方を見てきた。
俺は力の変更できないってのに……不運だ。
***
運動神経は割りといい方だ。
五十メートル走六秒前半、
シャトルラン百十九、
走り高跳び百五十センチ、
浸水時間三分、
親の影響で球技経験は豊富だし、ある程度いける所まで行けた。基本運動で苦手な事は少ない。
――しかし、しかし、だ。考えても見ろ。ソレは基本ステータスである。この現代では力の変更というものがあって運動能力を向上させる事が出来る。運動量を通常の二倍にすろだけで俺の力は越されるであろう。
まぁ、とはいっても二倍じゃ足が速くなったりはしないらしく、力が少し上がるだけだが、それでも劣ってしまうかもしれない。その可能性は否めないのだ。
そんな超人だらけの世界で力比べって、力の変更が出来ない俺はどう生き延びれば良いんだ?教えてくれよ神様仏様。俺は仏教も神教も良くわかんないけど。
いやこれは深刻な問題だろう。まだ四月の初めだ。あと一ヶ月と時間はある。今のうちに鍛えとくか――、
「里堆君、どうしたんだぃ!そんなに頭抱えてぇー」 苅野がてくてくやって来た。
「か、苅野……うぐ、俺はどうすればいいんだ!このクラスには学校にクレーターを発生させる女とか居るんだ!なのに【学年序列決定戦】って……助けてくれーっ死ぬーっ!」
と、放課中に俺の席に来た女子にすがる。おふざけではあるが頼りなく助けを求めると、
「えーっとね。一応言っておくけど、リミッター所有者っていうのは、力を使い過ぎたりると体が壊れちゃうんだよね。元々脳は体が壊れるのを制御するために七割の力しか出せなくしてるのに、ソレを全開にするということは逆に言うと「制御が無くなる」という事になるの。だから100%の力で相手を殴ると殴った人の肩が脱臼したりするんだよね。つまり、力を変更している人は皆90%ぐらいで戦ってるんだよ?勿論木崎さんも。もっと出せるけど、90%の力でやめているって事になるんだぁー。だからさ、心配しなくていいと思うよん!」
といいながら机に突っ伏す俺の後頭部をポンポンと叩く苅野。顔が机に当たって痛いからやめて欲しい。
「……いや、それでもクレーター作る事実は変わらなくね?」 顔を起こして言ってみた。
「あ、そっかぁ」 首を傾げる苅野。
つまり結局俺が危険だという事実は苅野の意見で揺るぐ事はなかった。という事で、集会が終わり俺の「死」と言う名のタイムリミットと【学年序列決定戦】は残り一ヶ月と二日になった。
隣を見れば、木崎が飛び切りの笑顔で自分のカレンダー帳に斜線を引いている。そこには、残り一ヶ月と二日(ハート)と書いてあり、背筋が凍った。
――これから如何しよう。
心の叫びは誰にも聞こえない。
「日常の中の非日常」
ソレは、集会が終わって俺の地獄への三十二日が始まった「終わりの始まり」。
ご愛読有難う御座います。
コレにて一章の一節が終わりました。短かったような気もします。
次回からはやっとタイトル+メインのリミッターを使った話をします。
失礼ですが、誤字脱字があればご報告お願いします。
それでは、有難う御座いました。