守りたかったモノ
――この両手に余る幸せを守りたかった。
初めはそれだけのはずだったのに……
生まれてからずっと幸せとは無縁の所で生きてきた。
あるのは人間の死骸と咽るような血の香り。
そんな幸せとは程遠い世界に居た自分にも初めて幸せが訪れた。
心が休まり醜さとは無縁の時間。
そんな時間を満喫していたかったが、自分には許されなかったようだ。
再び訪れる死体と血だまりの世界。
だけど今の自分はあの時とは違う。
今は守りたい世界がある。守りたい人達がいる。
だから再び両手に武器を持ち、現実に立ち向かった。
自分自身の幸せを守るために――
殺して、殺して、殺し続けた。
周りの人間全てを殺し続けた。
そうして殺し続けている時、気がついてしまった。
そして気がついた時には自分の守りたかったモノまでも殺していた。
「は、はは…………」
どうして守りたかった人達が死んでいるのだろう?
そんな事は分かっている。自分で殺したんだ。
自分の幸せを守るために殺していたのに、いつの間にかその幸せまでも殺していた。
きっとそこで自分の心は壊れてしまったのだろう。
泣き叫びながら他の全てを殺していった。
だって、もう二度とあの時間は戻らないのだから。
我儘で八つ当たりだと分かってても、それでも――自分には殺す事しか出来ないから。
ああ……どうして世界はこんなにも醜い人間に優しくないのだろうか。
人に誇れるような生き方はしていないけど、それでも人並みの幸せを過ごしてもいいじゃないか。
神様はそれすらも自分には許さないと言うのですか?
本当に自分はただ、この両手に余る幸せを守りたかっただけなのに。
それだけのはずだったのに……
一番守りたかったモノも守れず、最終的には守りたかった理由さえ分からなくなっていた。
なんという中二病な話。でも、書きたかったんです。