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とある後日の後日談

 先輩とお別れしてからのドタバタ騒動も明けてのお正月、三ヶ日も明けたのでいつものように東京駅地下ダンジョンに出勤する前に上の階のダンディコーヒーに立ち寄った時にだ。


「あ……」

「おっと……」


 アリサ先輩が普通にいた。たまごサンドって本当にこれで合ってます?って言いたくなるドでかサイズのたまごサンドを瞬殺しているところだ。やはり先輩の天職は大食いタレントなのでは?

 久しぶりに会った先輩はまぁ元気そうだ。表情も顔色もいい、おそらくは目いっぱい食べられているのだろう。


「お久しぶりです、と言っても配信は見ていましたが」

「コメント欄見てたよ~……ゴリラゴリラ言ってたね?」


 やべえ、バレてる!

 俺が慌ててると先輩がくすりと笑い出した。


「何突っ立ってんの、ここ座りなよ」

「では遠慮なく」

「そうそう、遠慮なんかすんな~」


 向かいに座るとまた笑われた。再デビューの影響なのかご機嫌だ。……腹いっぱい食べられているせいかもな。


「しかし本当に久しぶりな気がしますね、以前は毎日会っていたからそう感じるだけかもしれませんが」

「うんうん、寂しかったんだね~」


 いえ別にそういうわけではありません、という本心を伝えることに意味はあるだろうか?

 いや、ない、やめておくべきだ。ここは素直にわんこ系後輩の誤認に甘んじておこう。ご機嫌であるならそれに越したことはない。


「いやぁごめんねぇ最近は忙しくてさ、連絡しようしようと思いつつも中々できなかったんだ」

「嬉しい悲鳴ですね」

「そうなんだよね~」


 しかし先輩の機嫌はいいのはここまでだった。

 原因は俺の不用意な発言によるものだ。


「あ、連絡といえばノキアからは毎日きますね」

「……待って」


 肩を掴まれた。かなりの力を込めているな。


「待って、あたし聞いてないそれ、どういうこと? どういう用件で?」

「用件も何も他愛のない雑談ですけど……」

「それはそれで問題があるやつじゃん!」


 先輩がガタッと立ち上がった。せっかくセットした頭をヒステリックにくしゃくしゃするのは止めた方がいいと思う、これから配信だろうし。

 あー、もしかしてこの人また発症してんじゃねえだろうな、ってのは自意識過剰か?


「……見せて?」

「見せてって何を?」

「ノキアちゃんとのやり取り」

「プライバシーって知ってます? いえ、まあ構いませんが……」


 とりあえず今朝の分を見せよう。ノキアはなぜか自分の自撮りから会話を始める変な奴だから会話のネタにはなるだろ。



◇◇◇◇◇◇



 これは今朝の話だ。俺が朝の洗顔を終えた頃になって届いたノキアからのメッセージを開くと、なぜかお雑煮のモチをにょーんと伸ばしているノキアの写真だった。目がバッテンになってるな。


ノキアだよ『お雑煮をがんばって食べようとしても全然食べられない私』

ノキアだよ『どう、可愛い?』


逢魔梟介『可愛いのは可愛いがあざといので減点70点』

逢魔梟介『え、もしかして実家?』


ノキアだよ『んにゃ、ミカが作ってくれた』

ノキアだよ『うまうま』


逢魔梟介『ふーん、アスミが作りそうなもんだがな』


ノキアだよ『アスミは色々入れちゃうからお雑煮に向いてない』

逢魔梟介『あのぐらい料理ができる人がお雑煮に向いてないことある?』

ノキアだよ『アスミが作るとおもち入りの豚汁になっちゃう』

逢魔梟介『それはそれでうまそう』


ノキアだよ『これね』


 そして届いたアスミの豚汁……じゃなくてお雑煮はたしかに完全に豚汁だ。豚ばら肉がたっぷり入っているしごぼうも入ってる。いやいやこれもう完全に豚汁として作ってるじゃん! 力うどんならぬ力豚汁じゃん!


ノキアだよ『どう?』

逢魔梟介『素直にうまそうで変な笑いが出た』


ノキアだよ『実際うまいよ』

逢魔梟介『じゃあ何が問題なんだよ』

ノキアだよ『お正月感がゼロ』

逢魔梟介『それはそう!』


 こんなやり取りをしてて思ったね。

 せっかくの正月だし自分でもお雑煮を作ってみるかなーっていう新鮮な気持ちと、そういやお雑煮なんて作ったことないなっていう事実をだ。



◇◇◇◇◇◇



 そしてダンディコーヒーで先輩にノキアとのやり取りを見せながら聞いてみよう。聞いてみたいが、唸りながらスマホを凝視しているのが怖いなこれ。


「むむむ……完全に仲良しの会話だこれ」

「そりゃあタメですし」


「梟介って年上には壁があるタイプだよね」

「壁というか態度と敬語には気をつけていますね、中学は一応野球部でしたので」

「うそ、見えない!」


 体育会系は年功序列、先輩は上位種、監督はゴッド、この精神を一年間みっちり叩きこまれた純粋な野球少年は年上というだけで少し身構えてしまうのだ。


「今はこうして実力主義の社会に出ていますが年功序列の精神を叩きこまれた身としては未だに慣れないところがあります」

「そ…それなのにあたしにあんなスパルタ指導をしたの?」


 そこを突かれると痛いというか何と言うか……

 そんな俺だからこそ年上をいたぶるのには多少の快感があるというか……


 こんな話正直に言えるか!


「話は変わるんですが先輩ってお雑煮作れたりします? 作れるのなら是非ともお教えねがいたいのですが」

「あんなもの作れない人いるの?」

「それは完全に上級者のセリフです……」


 この後はクックパッドを見ながら説明してもらったが本当に意外と簡単だった。よし、これなら明日にも作れる気がする!


 まぁこれはこれだけのお話だ。



 一章をたっぷり使ってのキャラ紹介、こんな連中を中心にした物語となります。

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