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コラボ企画、Two-wiseの十階層ボス倒すまで帰らないぞ①

 出発は八時だが起床は六時だ。セットしたアラームが鳴り響き、神殿内の各所から物音が聞こえ始める。

 起床後、すぐに始めるのはお湯を沸かすことだ。お湯はなんにでも使える。飲み物、洗顔、体を拭くタオルに少し垂らしてもいい。水は祭壇の泉のものを使用するので多少歩かなきゃいけないのは手間だが科学的に安全性が立証されている水はダンジョン内では貴重だ。……どうしてロールボードが出現するのかとかダンジョン言語の謎が解明できていない時点でその立証意味あんの?って思うが寄生虫はいないらしいしまあ。


 水汲みなどの雑務をこなしつつ素早く身支度を整え、配信の準備に入る。


「身支度は念入りにお願いしますよ、ダンジョンの苦労なんて知らない視聴者は可愛い顔を求めています」

「そっちは適当に済ませたくせにぃ」

「俺は配信に映らないんで」


 なんてギャーギャー言い合ってるとアスミが近づいてきた。何やら含みのあるニヤニヤ顔のまま俺達二人の肩を叩く。


「ご両人、朝からお熱いですなー」

「ちょっ!」

「そういうのではありませんよ」


 否定したが信じてない顔つきだ。トワイスの三人が三人とも信じていない。それどころか立場の弱い後輩で遊ぼうとする悪い先輩女子の空気だ。あ、昨日一日でいじってもいいキャラだと認識されたな。


「まあまあ、でも私達、二人を応援したいしぃ?」

「うん、健気に世話してくれる美少年の後輩……私も欲しかった」

「私達はいま無性に素材の提供を求めています! 実際のところどこまでいっているんですか!?」


 マジで面白い人達だな……

 いつも動画で見ていたトワイス節に巻き込まれるなんて感動ものだが、否定はきちんとしなければならない、他ならぬ先輩の夢が懸かっている。


「好きあってもいなければ付き合ってもいません。今後も絶対にありえません」

「それはひどくない? ほら、アリサちゃん泣いてるよ」

「え!?」


 っと思って先輩を見たが泣いてねーよ。驚いたよ、二重の意味で。


「冗談でもやめてください。みなさんと同じく先輩もアイドルです、アイドルに男の影があるなんてファンからしたら暴動ものですよ。先輩の夢を応援している俺が先輩の夢を邪魔するわけがないんです」

「ええ~~~、でもぉ」


 いじりの気配を察してアスミの顔面を鷲掴みにする。そしてちょっと力を込める。


「おっ、おおおぉぉぉ……」


 いじりの気配が去っていく。存在するのは恐怖とか畏怖とかやべえとかそんなのだけだ。


「やめてくださいね?」

「りょ…りょうかいしました」


 よし、鷲掴み解除。座り込んだアスミが自分の頭をさすってる。


「ど…どしたんアスミ?」

「やばかった、絶対に敵わないって一瞬でわからされた……」

「やっぱ大人しい男子がキレるとやばいんだって、謝っておけアスミ!」

「あんたら何一瞬で関係者席から離籍してんのぉ!? 同罪だよ、同罪犯がここにもいるよ梟介くん!」


 アスミがギャーギャー騒いでる。俺達はもう無視して配信の準備に取り掛かった。


「ちょっとぉ、これじゃあ私だけひどい女なんですけどぉ!?」


 いやー、アスミは本当にオモシレー女だな、まだ二日目の朝なのに俺ちょっと胃もたれしてる。静かな朝が恋しいというか……

 トワイスは当分週一くらいでいいかなって素直に思ったよ。



◇◇◇◇◇◇


 そしてコラボ配信が始まった、題してTwo-wiseの十階層ボス倒すまで帰らないぞ回だ。


「どうもー、トワイスで一番可愛いと噂のアスミです!」

「おはようございます、トワイスで一番可愛いのミカでっす!」

「おは、トワイスで一番可愛いのは私だよねのノキアだよー」


 竜胆会長:邪悪降臨

 土方歳三への愛を叫ぶBOT:またノッキーがフラグを立てておられる

 FAN太爺:自分で言っといて羞恥心で震えるミカ姉可愛い

 えんけんゲームス:おまえら、ミカ姉のこと可愛い枠じゃないだろとか絶対いうな、絶対だ!

 ひとりさん:ミカ姉の全盛期は小学生だから

 ジャンボ太郎:中学一年時との比較はコーヒー噴いた←身長差

 氷帝会長最推し:別人疑惑出たもんね、一年で四十センチ伸びるとかすごい!


「おおっとぉ、コメントで誰も私に触れてくれない。これはトワイス一可愛いアスミに異論なしってことぉ!?」

「哀れアスミ、誰も触れない=人気がないとなぜ気づかないのか」


 福沢耳郎:アスミ可愛い!

 淀川まもる:アスミ一番可愛い!

 山猫隊長:アスミお馬鹿可愛い!


「誰が馬鹿だこらぁ!」


 すごい、開始間もなくテンションが振り切れてる。まぁ配信外でも同じテンションなんだからすごいよ、逆にこっちが疲れてきたくらいだ。

 しかしさすがはトワイス、一週間かけて予告しまくってきたとはいえ配信直後の同接数が七千だ。これすぐに万を超えるだろ。


「さあ今日は特別ゲストが来ているぞー!」


 ミカとノキアが小ラッパでパフパフ盛り上げている。


「最近話題の気になるあの子、アリサちゃんの登場だー!」


 こっちはこっちで配信しているアリサ先輩がアスミの隣へと駆け込み、俺は俺でカメラを回す。うん、今日も顔が可愛い。


「おはようトワイスチャンネルのみんな、日高アリサです! 今日はコラボ配信なのでこっちの配信にも度々映ると思いますがよろしくお願いします!」

「そういうわけでみんな、アリサちゃんに優しいコメントしてあげてよ!」


 淀川まもる:アリサさん可愛い!

 山猫隊長:アリサちゃんアスミより可愛い!

 FAN太爺:アスミよりも礼儀正しくて可愛い!


「こらぁ! 私にも優しいコメントしろー!」


 うん、楽しみなコラボが始まった。

 できれば裏方なんて立場ではなく部屋でのんびり楽しみたかったぜ……



◇◇◇◇◇◇



 第六階層『水落ちる渓谷』は美しい景色を背後に映している。霧の合間に見える落水と険しい山肌、そして時を弁えずにやってくる鳥系モンスター。……美しいが危険なエリアだ。


 ここで最も注意すべきモンスターはギロチンリッパーという(モンスターは最初の発見者に命名権があり、自衛隊はこれを行使しなかった)猛禽類だ。高空から落下してきて一瞬で探索者の首を狩っていく閃光の断頭台。第六階層の攻略を遅滞させている最大の原因がこいつの存在だ。

 だがトワイスに限っては断頭台の露と消えることはない。特殊パーツ気配察知スキルを有するノキアの存在がでかい。


「アスミ、よけて!」

「へ……? あわわわわっ!」


 自分の首を完全ガードしながら大慌てで前転するアスミと、死の力を持つ閃光が交差する。間一髪避けたな。

 そのまま上空に逃げていこうとする猛禽類の翼を先輩の抜き打ちが打つ。惜しい、空振った!


「ごめん、外した!」

「また来るよ! 警戒警戒!」


 淀川まもる:緊張する

 心外DEATH:こえー

 FAN太爺:心臓とまりそう

 真田新:アリサちゃん頼む、ノキアたんを守ってくれ

 山猫隊長:アスミは?

 ミカLOVE:アスミは殺したって死なねーよ

 民ダムおじ@関東おじさん探索者同盟:棺桶の中でも騒いでそう


 コメントを読みつつも上空の気配を探る。まずいな、集まってきやがった。

 ギロチンリッパーの厄介なところは対処できずにいるとお零れを貰いに他の個体が集まってくる性質だ。

 こうなるともう水落ちる渓谷の各所にある洞窟に逃げ込むしかない。


 先輩が俺の判断を仰ぐふうに見つめてくる。用意済みのカンペを掲げる。


『洞窟に退避』


「一旦逃げよう!」

「さんせー! あれ、ノキアは?」

「とっくに逃げてる!」


 涙目で逃げてるノキアを先頭にみんなして一目散にダッシュする。すごい、すごくトワイスっぽい。


 カメラを構えながら俺も後を追う。それと数は減らしておこう。

 拳銃を召喚して上空に向けて撃つ。狙いは勘頼りだが三年も撃ちまくった男の当て勘だ、そこは信用してもらっていい。


 ジャキッ! ガオォン! ガオォン! ガオォン!


 山猫隊長:めっちゃ銃声がしてんだけど

 怒り言動:こわー

 ジェームズ日野:アリサちゃんねるは初めてかい? 名物のたまにする謎の銃声だ

 日野まりか:兄貴よほ

 愛ラブ煉瓦倉庫:いやここトワイスチャンネルなんで

 淀川まもる:ここは日高アリサのダンジョン探索チャンネルですよ


 とりあえず三尾仕留めておいたがこれ以上はいいだろ。上空のギロチンリッパーどもが散っていく。こいつらビビリだから同種が倒されるとすぐに逃げるんだ。


 洞窟の中のコラボメンバーを撮影する。みんな地面に伏せながら息を整えているところだ。


「やっぱあいつらやべー」

「ガチでやべーって夜の間は大人しいんだけどなあ」

「もしかして夜スタートがよかったんじゃ?」

「ノキア、それ言ったらほんとそれとしか言えないから」


 新崎健斗@レイジングジャパン2031準優勝:じゃあ夜にスタートしろよって突っ込んでいいか?

 ダンゾン専門家:許す、つっこめ

 怒り言動:じゃあ夜にスタートしろよwww

 ジェームズ日野:自衛隊でさえ第六階層は夜間踏破を徹底しているよ

 三田義男:探索者の人かな、情報たすかる


 フリップを出す。

『安全な洞窟だけを通って第七階層に行くルートもあります』


 死んだように地面に伏せているみんなの目に精気が戻る。


『でも配信映えはしません』


「「あー」」


 やっぱりそこはね、配信なのでね。面白い絵でいきたいよね。


『群がってきたら一匹を残して俺が倒す地上ルートと配信映えのしない洞窟ルート、どっちにします?』


 やがてアスミが、苦悩する感じに声を絞り出す。


「もうちょっと休憩したら洞窟をでよっか」


 配信者の鑑だなマジで。

登場人物紹介


山口アスミ

 ①活発な容姿が示すとおりに欲望と行動力の権化なアスミは欲しい物を絶対に諦めない、それがどれほど遠く手の届かない物でも絶対にだ。ビカビカに光るピンクに染めた髪と緑のカラーコンタクト、重ね着したお洒落な古着がトレードマークのイケてる女だが中身はチンパンジーだぞ。

 元々はミカと二人でトゥーウェイスターズというアイドルユニットを組んでいたが人気が出なかった。なんでや!って憤る関口マネージャーが道頓堀でアイスを食ってたノキアをスカウトしてトワイスになったという誕生秘話がある。まぁそれでも伸び悩んだ挙句のダンジョン配信アイドルだ。

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