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とあるアフター

 ダンジョンに潜ると腹が減る、それは不思議なパワーが働いてバッドステータス空腹が発動するのではなく単純に戦闘行動には多くのカロリーを必要とするからだ。

 長時間のエリア歩き、襲撃への警戒、バトル、そして帰りも徒歩。世間は探索者なんてお気楽商売と見ているが一日に十数キロ、深層に潜るチームなら三十も四十も歩く足が資本の商売だ。


 というわけで先輩とのダンジョン帰り、土と葉っぽに汚れた俺達は大変な空腹を抱えたまま夜の町を彷徨っている。自然と猫背になってしまうのはなぜ?


「うぅぅぅ梟介ぇ、何食べたいぃ……?」

「固形物がいいです……」


 夜の十時すぎの東京駅近辺は飲食店を探すのに適してはいない。駅ビルの上階でやってるビュッフェバイキングはしまっているしカフェだってしまっている。まったく不適格だ。すぐに別の駅に移動した方がいい、なんなら家に帰った方が早い。それは理解している。

 それでも早く何か食いたいという衝動に身を任せずにはいられない、そんな瞬間もあるのだ。今まさに!


 歩き始めてから十五分、もう東京駅近辺というか駅一つ分は歩いたそこで、ビルとビルの谷間にある小さなラーメン店を見つけた。煌々と灯る赤ちょうちんは営業中の証だ。


 しばしラーメン店を見つめる俺達。砂漠で見つけた遠景のオアシスは本物か蜃気楼かと疑う時間はジャスト一分。


「先輩っ、ここにしましょう!」

「だよね、あたしもそう思ってた!」


 入店する! まったくこんな時間だってのに店内は日本のお父さんたちでいっぱいだ。ご苦労さまだぜこんちくしょう!


 カウンター席にするりと滑り込み、メニューをかっさらう。

 ラーメン850円、回鍋肉950円、唐揚げ500円、餃子400円、白米250円。決まった、これが俺の夕飯だ!


「俺は決めました、先輩はどうしますか!?」


 先輩はメニューを見ていなかった。その視線を追っていくと壁には……


 壁には大きな文字でジャンボラーメン三キロ&ジャンボカツ丼三キロ、完食できた方には三万円を進呈!なんてでっかく書かれた張り紙がある。小さな文字で食べ切れなかったら一万円ってある。


 他にもチャレンジ成功者と店主のツーショット写真やフードファイター達のサイン色紙と思われるものがある。ジャイアント黒田、赤坂直美、大林尊、知らない名前ばかりだ。


 そんな壁を先輩がじぃっと見ている。この人マジでミーハーだな。……そう思っていたんだが。


「へえ、三万か、美味しいね」

「せ…先輩……?」


 え、まさか挑戦するつもりですか? え、六キロですよ?

 健全な男子高校生の一日の必要カロリーが3700だと言われている社会で? いやいや混乱してるなカロリーと重量はイコールではない。計六キロのラーメンとカツ丼なんて五桁カロリーはいくだろ。


「やる気ですか、六キロですよ」

「うん、二十分は掛かっちゃうかも」


 いや二十分って俺なら明日までかかる量なんですけど、むしろ途中でギブアップするの確定の量なんですけど?


「見ててね、たまには先輩の格好いいとこ見せてあげるから」


 この後先輩はカウンターに載り切らない大きさの丼二つを宣言どおりの二十分で完食して、手に入れた賞金を使って杏仁豆腐とティラミスを三つずつ食べていた。

 あぁそうか、普段は金欠だから抑えていたわけだ。八百屋で働いていたのも余った野菜を貰えるからか。


 剣道二段で大食いキャラとかこの人自分を売り出す方向を致命的に間違えてるよ……

 美少女フードファイターで売り出したらすぐに地上波デビューできる気がする。

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