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恋をした  作者: 沙羅双樹
3/10

恋の結末②


母に掴みかからんとばかりに、顔を真っ赤にさせて駄々をこねる妹、

慌てて妹を止めようと、椅子を蹴倒して手を伸ばす三男に

びっくりして、カラトリーを皿の上に跳ねさせる次男


そんな弟妹たちを落ち着けようと一斉に駆け寄る使用人たち


混沌とした場で、スッと母上が徐に立ち上がった


それだけで、場が、すべての視線が母に寄せられる


でも、母を見た瞬間、ヒュッと息をのんだ



いつも、基本、優しい笑顔を浮かべている母上の顔から一切の表情が消えていた


母上は美しい故に、能面のようなその表情は恐ろしくて

まったく知らない誰かを見ているようで、誰一人声が出せなかった


今までの喧騒が嘘のようにシンッと静まった部屋から

母上は何も言わずに、そして、誰のことも一瞥することもなく

出て行ってしまった



母が去ってしまったことで見捨てられたと感じたのか

泣き叫んで、癇癪を続ける妹を抱きしめながら

父上は、すまない、と繰り返した


僕は立ち尽くす弟たちの背を撫ぜることで自分を落ち着かせた


それから、一か月、母上の顔を見ることはなかった


あの後、母上は意識を失って、高熱に倒れた



そのことで

自分のせいだ、と己を責める妹を私たち兄弟は抱き締めて

必死に幸せな今を壊すまいと抗った


病床で見る母上は今にもここから消えてしまうかのように儚く

傍で懺悔を繰り返す父上はいつも大きく感じていたその背が

小さく感じるほど弱々しく感じた。



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