恋に破れた。だから②
恐怖で縮こまる私に大人たちは困った顔をしていた
でも、そんな中、カレはそっと手を伸ばしてくれた
その時、ようやく伺うように見たカレの目にはただ
顔色の悪い私に対する心配しかなくて
カレはキレイな目をした、柔らかな笑顔を浮かべた男の子だった
いつ会っても、キレイな目をした真っ直ぐなカレを慕うのは
安易と言われようと私にとって必然だった
「君が恐れるモノから僕が守るよ」
そう誓って、手を包んでくれた温かさに
私だけが恋に堕ちた
カレにその熱量がなくとも、誠実なカレだからこそ
ともに、と誓ってくれたその言葉に嘘はない
それだけで十分だ、と
幸せになれる、とあの瞬間までそう信じていた
カレが恋に堕ちたのはすぐに分かった
だって、ずっと見ていたから・・・・・・
それでなくとも、真っ直ぐな人なのだ
いつだって、どんなことにだって・・・・・・
だけど、誠実な人だ
だから、私という存在がある故に
カレは己の気持ちを押し込んで飲み込もうとした
そんなカレを見て
私も己の寂しさや心を焼き尽くそうとする激情を飲み込んだ
心が痛み、泣き叫びたくなったし
相手の女性を罵り、カレに詰りたかったけど
必死に耐えた
だって、私たちは政略なのだ
愚かにも、私だけが舞い上がって
ともにある未来が確定していることで
恋は叶うと、勝手に幸せになれると自惚れただけで
そんなことは誰も何も約束されてないというのに
愚かな私は自身の価値を高く見積もって
カレとカレとの未来に縋っていた
そのことをその時、
現実に打ちのめされることでようやく思い知った。




