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08 親族会議

「既に決まった話はさっさと終わらせるに限る。いいかね? クロヴィスでは辺境伯位を継ぐのに不足がある。彼はまだ子どもだ。彼に必要なのは辺境伯の位ではなく、静かに、そして自由に暮らせる時間だろう。では、クロヴィスではないとしたら誰が辺境伯に相応しいか。そんなの考えるまでもない。先代の当主の第一子であった私、アルベリクこそが相応しい」


 私が指名するのも待たずにしゃべりだしたのは伯父上だった。私に指名されるのも嫌だったのかな? 伯父上と父上は仲が悪かったから、たぶん父上の子である私も嫌われているのだろう。


 伯父上と父上の確執は、父上が辺境伯家の当主になる前から始まっているらしい。


 伯父上と父上は、兄と弟の関係だ。普通なら、兄である伯父上が辺境伯家の当主になるのが通例。しかし、父上にはその通例を打ち破るだけの武器があった。


 それが、闇竜バルツァーレクの存在だ。


 今は亡きお爺様も、バルツァーレクの存在を無視しきれず、次期当主を父上に決めた。


 まぁ、通例を順守するか、ドラゴンを取るかと訊かれれば、私だってドラゴンを優先する。お爺様の判断は間違っていない。


 伯父上には気の毒だが、それが普通だ。しかし、伯父上には受け入れがたかったのだろう。


 今まさに同じような目に遭いそうになっている私には、伯父上の気持ちはわからなくもない。


 まぁ、わかるだけで同情はしないが。


「そうだ。アルベリク様こそ次の辺境伯に相応しい」

「まったくだ」

「アルベリク様こそ我らの盟主よ」


 伯父上が事前に根回ししていたのだろう。過半数の者が伯父上のことを支持していた。


 まぁ、こうなるだろうな。


「では――――」

「待て!」


 話を終わらせようとしたら、枯れたような、しかし力強い声が待ったをかけた。一族の長老、オーバンだ。


「次のご当主は、クロヴィス様である! 異論は認めん!」

「そうだ!」

「クロヴィス様以外ありえない!」

「うむ!」


 まさかオーバンをはじめ、私を支持してくれる者たちが四人もいるとは思わなかったな。これは嬉しい誤算だ。彼らのことは大切にしよう。


「何を言うかと思えば……。クロヴィスを見ろ! あの体では当主の仕事など勤まるわけがない!」

「それをお支えするのが我らの役目であろう! 当主の座をかすめ取ろうとするなど、言語道断である!」

「あれがバルバストル侯爵家の当主になれば恥だ」

「キサマ、なんということを!」

「すべてはクロヴィス様がお決めになることだ」

「あんな子どもに何が決められる!」


 会議は紛糾する。七人が伯父上派、そして残りの四人がクロヴィス派だ。二つのグループに分かれて激しく言い合っている。


 このままでは平行線だな。


「少しいいだろうか?」

「ガキは黙っていろ!」

「キサマ、クロヴィス様になんて口を利くんだ!」

「クロヴィス様がお言葉を述べられる。皆、心して聞くように!」

「ちっ」


 やれやれ、伯父上派閥は口が悪いな。


 まぁ、当主になるか、それとも一介の親族かで身分も財力も扱える兵力もなにもかもが違うから仕方がないと言えば仕方がないのかもしれない。ここにいる誰もが、ここが正念場だとわかっているはずだ。


「私は、伯父上が当主になってもいいと思っている」

「ほう?」


 私の言葉に、伯父上が笑みを浮かべる。


「なりませんぞ、クロヴィス様! クロヴィス様はなにも恥じる必要は無いのです!」

「ありがとう、オーバン。だが、この場は私に任せてくれ」

「はっ……」


 オーバンがなんともやりきれない表情で静かに頭を下げた。


「それでクロヴィス? この私を当主に認めると言ったな? クロヴィスが認めている以上、もはや論議は不要だ。私こそが次の当主である!」


 晴れやかな顔で語っているところ悪いが――――。


「伯父上、私はまだ伯父上を正式に当主に認めるとは言っていません」

「どういうことだ?」

「伯父上方には、これからあるお方にお会いしていただきます。その方が許せば、私は喜んで伯父上を当主として認めましょう」

「……ほう?」

「伯父上、会っていただけますか? 伯父上が当主になるためには避けては通れぬ道ですが」

「……是非もない。誰であろうが連れてくるがいい」

「ありがとうございます。では皆さん、移動しましょう」

「移動?」

「ええ。そのお方はもうお庭でお待ちです」


 私は親族連中を連れて部屋を出て廊下を歩く。親族たちの態度は対照的だ。伯父上のグループはこれからの栄達を夢見ているのか、誰もが朗らかな表情で元気に歩いている。


 反対に、オーバンのグループは皆が背中を丸めてのっそりと歩いているように見えた。


 まぁ、普通に考えたら、私が当主の座を放棄したと見做されても仕方がない場面だからな。


 だが、私はまだ当主の座を諦めたわけではない。これは一種の通過儀礼なのだ。


 私たちは庭に出ると、離れとは反対側に歩いていく。


「お、おい、こっちは――――」


 何かに気が付いたらしい伯父上が声をあげた。


 しかし、少しだけ遅かったね。

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