46 ダンジョンからの帰還
当初の目的であったエリクサーを無事に手に入れることができた。
これで私は死病に怯えなくてもいい。
そして、人類を裏切る必要もなくなった。
これで破滅エンドを回避だ!
あとはヴィオをどうやって生き返らせるかだが、これにも考えがある。
それは、ゲームのメインヒロインであるセラフィーヌが持つ復活の首飾りだ。
ゲームのシナリオにおいて、メインヒロインであるセラフィーヌは、主人公を庇って一度死ぬことになる。
そこで活躍するのが復活の首飾りだ。
死んだはずのセラフィーヌは、復活の首飾りのおかげで生き返るのである。
これを利用する。
ヴィオに復活の首飾りを使い、生き返らせるのだ。
問題はどうやってセラフィーヌから復活の首飾りを受け取るかだが……。
復活の首飾りは、セラフィーヌが肌身離さず着けている。盗むのも難しい。
まぁ、それは追々考えよう。
ダンジョンでは、エリクサーの他にもさまざまなアイテムを手に入れた。
オニキスリングやホワイトファングなどがそうだ。
元々ゲームではあのダンジョンは隠しお助けダンジョンだった。経験値を多く貰えるモンスターが出現するし、手に入る装備も良い物が多い。
手に入れた装備は有効活用させてもらおう。
だが、王都で手に入れた装備も加えると、着けたい装備が多すぎる。とくに多いのが指輪だ。今回手に入れたオニキスリングも指輪だし、王都で手に入れたマナリングも指輪だし、これだけでもう指輪装備が埋まってしまった。
しかし、まだまだ着けたい指輪装備は多い。
なんとかならないものか……。
ダンジョンに行った恩恵はまだある。
それはレベルだ。
元々、あのダンジョンはラストスライムが多く出現し、それなりにレベルアップできるだろうと踏んでいた。
しかし、蓋を開けてみれば、ラストスライムだけではなく、メタルスライムが大量発生していた。
ゲームだったら一度でも会えればラッキーなメタルスライムが数えるのも億劫なほど出現した。
ボスもビッグメタルスライムだったしね。
そのおかげで、ずいぶん私もヴィオもレベルが上がっただろう。たぶん、もう百レベルは確実に超えていると思う。
それによってステータスも上がり、ヴィオやシャルへの魔力補給も苦ではなくなった。
これからは余った魔力で魔眼の成長にも回せるだろう。
そして、レベルが上がったのは私とヴィオだけではない。
カルラはもちろんだけど、なんとシャルもレベルが上がったのだ。
まさかただの猫であるシャルのレベルが上がるとは思わなかったけど、考えてみれば、ゲームでもモンスターにもレベルがあった。そう考えれば不思議はないかもしれない。
◇
「ありがとう、カルラ。カルラのおかげで助かったよ」
『これぐらいなんでもない。それよりも、我のことは外ではバルツァーレクと呼ぶように』
「わかったよ、バルツァーレク」
「ありがとね、バルツァーレク」
「にゃー」
バルバストルの屋敷に帰ってきた私たちは、バルツァーレクと別れて屋敷へと帰る。
屋敷では爺やメイドたちが整列して私たちの帰りを待っていた。
「おかえりなさいませ」
「ただいま、爺」
「ただいま帰りましたわ」
「にゃー」
「お疲れでしょう。すぐにお茶をご用意いたします」
爺に案内されて居間に入ると、すぐにお茶とお菓子が用意された。シャル用に干した小魚が用意されているのもポイントが高い。さすが爺だな。
「ふぅー……」
ソファーに座ると、腰がとろけそうになった。知らず知らずのうちに疲れを溜め込んでいたらしい。
「本日のお菓子はミルクレープでございます。お茶はいかがなさいますか?」
「私はストレートを貰おう。ヴィオはどうする?」
「わたくしもストレートを」
「かしこまりました」
煎れたて紅茶のかぐわしい香り、ミルクレープの甘い匂いが合わさって、なんだか癒されていく。
「クロヴィス様、本日はいかがでございましたか?」
「やっとダンジョンを見つけてな。攻略してきた」
「真ですか!? まさか本当にダンジョンを見つけてしまわれるとは、感服いたしました。しかも攻略までなさるとは、お見事です」
「ありがとう、爺」
「すごく大きなピカピカのスライムがいたのよ。倒すのに苦労したわ」
「そんなに大きなスライムがいたのですか!?」
ヴィオの話に爺が驚いていた。
そしてテーブルの下ではシャルが我関せずとばかりに小魚をむしゃむしゃ食べている。
私はその光景を見ながら、なんだか帰ってきたんだなぁと実感を深くしていた。
とりあえず、念願だったエリクサーも手に入ったし、今後は領内の内政に励もう。近いうちに特区の様子も見に行かないとな。
その後は、王都の学園に入学することになる。
そこで主人公をはじめ、ゲームのメインキャラクターたちに会うことになるが……。どう振る舞うか……。
正直、私はあまり主人公のことが好きではない。むしろ嫌いだ。
しかし、相手は将来出世するのが決定している。
「気は進まないが、融和策だろうなぁ……」
そんな私の呟きは誰にも届くことなく消えていった。
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