22 アーティファクト探し
「ありがとうございました」
店員の男と屈強な警備員に見送られ、私たちは装飾店を出た。
「ふふっ」
隣を歩くヴィオが、嬉しそうにその後頭部を撫でる。そこには紫色の宝石の付いたバレッタがあった。私がヴィオに贈ったものだ。
ヴィオは銀髪だし、肌も白い。あんまり色を感じさせない彼女だけど、唯一色を持っているのはその紫の瞳だ。
ヴィオの紫の瞳は、とても美しく、かつ珍しい。私はヴィオ以外で紫の瞳を持つ人を見たことがない。
その高貴な輝きに魅せられて、幼少期の頃はヴィオの瞳を褒めたり、紫色のプレゼントをよくしたものだ。
それが原因なのか、ヴィオは紫色が大好きになってしまった。ドレスを選ぶ時もだいたい紫か白を選ぶし、持っている装飾品も紫の物が多い。
まぁ、ヴィオの持っている装飾品の半分くらいは私が贈った物なのだけどね。
だから、今回も紫色を取り入れたバレッタにしてみた。
「どう、クロ? かわいい?」
「髪を結ったヴィオもいつもとは違った魅力があって素敵だね」
「えへへ」
屈託なく笑うヴィオはかわいいな。ちょっとドキドキする。
そんなヴィオにこんなことを言うのはとても心苦しいけど……。
「ヴィオ、申し訳ないけど、今日は私に付き合ってくれないか?」
「クロ? うん、いいわよ」
「ありがとう!」
笑顔のヴィオに申し訳ない思いを感じつつ、私はお礼を言う。
デートで女性をエスコートできないとは紳士の風上にも置けないが、今日ばかりは許してほしい。今日しかチャンスがないんだ!
ヴィオの了解が取れたところで、私はさっそく予定を変えることにした。
「アルノー、アーティファクトが欲しい。店を探してくれ」
「かしこまりました」
さすが爺の息子だな。急な予定変更を告げられても動揺を見せることなく、すぐに馬車を走らせる。私の中でアルノーの好感度がぐーんと上がった。
しばらく馬車で走る。下町というのは本当に人がいっぱいいるようで、どこもかしこも人だらけだ。
やがて、一軒の店の前で馬車が止まる。
「こちらにございます」
「ほう」
アルノーが馬車の扉を開けてると、目に飛び込んできたのは、ちょっとくたびれた外観の店だった。ボロいというわけではない。なんだか雰囲気があるお店だ
「行こう」
「ええ」
ヴィオをエスコートして店の中に入る。
しかし、店の中は狭くてアーティファクトらしき物が一つも置いていない。ただ木のカウンターテーブルがあるのみだ。他に客もいないどころか店員もいない。
これは、店としてどうなんだ?
よく見ると、カウンターテーブルにはハンドベルが置いてあった。手に取ってチリンチリンと鳴らすと、奥から元気な様子のおじいちゃん店員が出てくる。
「なんじゃ、客か?」
仮にもお店なのだけど、その態度はどうなんだろう?
今までかしこまったタイプの店員しか相手にしてこなかったから、ちょっと対応できるか不安だ。
「アーティファクトが欲しいのだが、ここで売っているのか?」
「売っとるぞ。客ならこっちに来い」
そう言っておじいちゃんはカウンターテーブルの一部を開けてくれる。
奥で商談というわけか?
「こっちじゃ」
「何? あの態度?」
「まあまあ」
私は不機嫌そうに呟くヴィオを宥めながら、店の奥に入っていく。
通されたのは、それなりにおしゃれな部屋だった。
「座れ」
どこまでも偉そうなおじいちゃんだなぁ。
眉を逆立てるヴィオの背中を撫でて、私とヴィオは部屋の中央にあるソファーに座った。
「それで、何が欲しいんだ?」
「エリクサー」
エリクサーは、先史文明の遺跡で稀に見つかる霊薬だ。その効果は凄まじく、HP全回復、おまけにすべての状態異常が回復する。
私はこのエリクサーに希望を見出していた。
ゲームでのクロヴィスは、十五歳の学園の卒業と同時に死病に罹ることになる。
原因がわかれば避けることもできるかもしれないが、死病の原因は不明。おそらく、私も死病に罹るのだろう。
ゲームでのクロヴィスは死病に罹り、ある一つの希望を持つことになった。
それは、自分が死んでもヴィオが動き続けること。
クロヴィスは、ヴィオに死体の状態でもいいから生き続けてほしかったのだ。
そのためにある錬金術アイテムのレシピを知るために人類の情報を魔王に売る。
その錬金術アイテムとは『黒の宝珠』。周囲から魔力を吸収して蓄える先史文明の遺産だ。
それをヴィオに装備させて、ヴィオレットが魔力切れになることを防ごうとしたのだ。
だが、その計画は失敗することになる。
主人公によってクロヴィスとヴィオレットは討伐されてしまうのだ。そして、『黒の宝珠』は戦利品として主人公に奪われることになる。
クロヴィスは全人類を裏切ってでもヴィオレットを生かそうとした。彼にとっては、全人類なんかよりもヴィオレットの方が大事だったのだ。
その気持ちは痛いほどよくわかる。同じ状況なら、私も同じことをするだろうから。
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