21 マナリングとアーティファクト
マナリング。
装備するとMPの最大値が五十増える指輪装備だ。私自身のステータスはわからないけど、主人公の初期レベルでのMPが二十三。たぶん私のMPも似たようなものだろう。これ一つあれば、MPが一気に三倍以上に増える。
そしたら、ヴィオともっと一緒にいることができる!
でも、なんでこんな所にあるんだ?
マナリングは先史文明の遺跡にしかない超貴重アイテムだぞ!?
なぜ王都のお店に売ってるんだ……?
王都で店売りの指輪アイテムはシルバーリングとゴールドリングしか売っていないはずなのに……。
「どうしたの、クロ?」
「い、いや、ちょっといいかな?」
「え? ええ」
私は逸る気持ちを抑えてずらりと指輪が飾られた台へと近づいていく。
「手に取っても?」
「どうぞどうぞ。そちらは冒険者から買い上げた発掘品を並べています」
「おぉ……」
私は、ついにマナリングを手に取る。
「本当にマナリングだ……!」
繋ぎ目のないまるで磁器のような柔らかみのある乳白色。しかしずっしりと重く、冷たく、まるで金属のようだ。私はこんな金属を知らない。
しかも、何度見ても指輪に刻まれた紋様はマナリングのものだ。
本当に本物のマナリング?
「それは遺跡から発掘された指輪ですな。何で作られているのか不明です。お値段は金貨十枚になります」
「買った!」
最高のMPブースト装備が、金貨十枚!?
そんなの買うに決まってるだろ!
「クロ、気に入ったの?」
「うん! ん?」
あれ? これも知ってる指輪だ。
私は指輪が並べられた台から一つの指輪を摘まみ上げた。
「間違いない……」
これは防御力を上げる珍しい指輪、タンクリングじゃないか!
「え? こっちにも!」
よく見たら、他にも私の知っている指輪が売られていた。どれもゲームの王都では売っていなかった指輪ばかりだ。
どうして王都で売っているんだろう?
だが、私にはその答えがすぐにわかった。
「おそらく、ゲーム的な都合か……」
ここ王都には、王国中から物が集まる。そんな王都で、シルバーリングとゴールドリングしか指輪装備がない方が不自然だ。
でも、ゲームの開始地点である王都で、最強とはいかなくてもかなり良い装備が揃ってしまうなんて事態は、ゲーム的に不都合だったのだろう。
前世のゲームの知識は確かに有用だ。しかし絶対じゃない。
これは計画を見直す必要もあるか……?
「ねえクロ、それも気に入ったの?」
「え?」
私はヴィオに声をかけられて、現実へと戻ってきた。
そうだった。今はヴィオとデート中だった。
「そうだね。これとこれ、あとはこれも買っちゃおうかな」
「お買い上げありがとうございます」
私は知っている指輪の中から役に立ちそうな物をピックアップして買い取る。店員の男もホクホク顔だが、私の顔も緩んでいることだろう。
「さあ、次はヴィオの番だよ。気に入る装飾品があるといいね」
「ええ!」
私は、ヴィオの装飾品を一緒に見ながら考える。
この店のように、王都に質のいい装備品やダンジョンでしか手に入らないはずのアイテムが集まっているのなら、買い集めないといけない。
装備品をどうするかは、ずっと悩みだった。今までずっとゲーム通りにしかアイテムが売っていないと勘違いしていたのだ。だから、初めての冒険というもっとも危険な状況に半端な装備で挑むしかないと思っていた。
しかし、王都で装備品が買えるなら話が変わってくる。
どんな装備が集まるかはまだわからないが、これは計画を早めてもいいかもしれない。
だが、装備の能力を見極められるのが私しかいないのは問題だな。
ゲームではステータス画面を見れば装備の能力がわかったけど、この世界にはステータス画面がないからだ。だから、マナリングなんて最強のMPブースト装備がこんな捨て値で売られていたのだろう。
ゲーム知識を持つ私が直接見るしかないが……。
もしかして、今日がチャンスなのでは?
今日は下町で一日過ごすことになっている。貴重な自分の足で店に赴くチャンスだ。
事前に立てたデートプランとは違うし、もしかしたらヴィオには退屈かもしれない。でも、今日ばかりは許してほしい。
そう思いながら、私は口を開く。
「ちょっと尋ねたいのだが、冒険者が装飾品を売りに来るのはよくあることなのか?」
「それほど多くはありませんが、たまにある程度ですね。アーティファクトと認められなかった発掘品を売りに来るのです」
「アーティファクト?」
そんな単語、ゲームでは登場しなかったが……。
「先史文明の遺跡から出土する特別な力を持ったアイテムの総称でございます。わかりやすく言えば、ギフトを持ったアイテムでしょうか」
「おぉ!」
そんな物もあるのか!?
おそらくだが、ステータス画面が見れなくてもその異能がわかりやすい装備品のことだろう。
いや、もしかしたら、ゲームでは登場しなかった新たなアイテム群の可能性も……!
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