10 あれこれ
復讐も終わり、ようやく一段落付いたな。
とはいえ、復讐をしたからといって、父上や母上、そしてヴィオが蘇るわけじゃない。これはあくまで、私の心を慰めるためのもの。そして、バルツァーレクを当家に繋いでおくための布石に過ぎないのだ。
「伯父上に代わり、オーバンをこれから親族の代表に任命する」
「はっ! 謹んでお受けいたします!」
「さあ、みんな顔を上げてくれ。私はこんな体だ。みんなの助けが必要だ。どうか、私を助けてほしい」
「「「「「はっ!」」」」」
うんうん。みんな素直に頷いてくれたね。みんなが危惧しているように、私に逆らってもバルツァーレクが粛清に動くとは限らないのだけど、そんなことをわざわざ言う必要もない。
それから私は爺に頼んで、死んだ四人を代官に指名していた土地を接収したり、父上が亡くなったことを正式に領民に認めたり、他領から来た葬儀に参列する貴族やその代理人の相手をしたり、とにかく目が回るような忙しさだった。
葬儀には王族も参列しくださって、華やかにおこなわれた。バルバストル辺境伯家は、ここセナンクール王国の五大頂に任じられた王国の重鎮だ。王族も無視はできないのだろう。派閥の内外からも多くの貴族家当主が直接葬儀に参加したほどだった。
そのほとんどが、次期辺境伯である私の能力を見極めに来たのだと思うと、背筋の伸びる思いがしたよ。
そのほとんどにバルツァーレクとの関係を示せたのはよかったな。
それから、ユニヴィル伯爵に後見してもらって領地の経営も学んだ。まぁ、爺をはじめ、父上の補佐をしていた者たちがいるからたぶん大きな間違いはないだろう。これはじっくり学んでいけばいい。
「クロ、お疲れ様ですわ」
「ありがとう、ヴィオ」
バルバストル屋敷の自室。オレはソファーでヴィオに向き合っていた。
「そうだ、ヴィオに話があるんだ」
「お話? なんですの?」
ヴィオは紅茶のカップを左手で持っていたソーサーに置く。
私も最近知ったのだが、ヴィオは普通に飲食ができる。ちゃんと味も感じるらしい。ヴィオは成長はできないけど、食事の楽しさを味わえることが嬉しい。
そんな小さな幸せを噛み締めながら、私はヴィオに提案する。
「ヴィオ、よかったら私と一緒に剣を習ってみない?」
「剣を?」
ヴィオがこてんと首をかしげた。
「そうそう。ヴィオのギフト、【スピードスター】は素早さを上げるだろう? たぶん、ヴィオはこれからどんどん速く動けるようになるはずだ。ヴィオが剣を習ったらすごく強くなれるんじゃないかな?」
速さとは力だ。実際、ゲームでのヴィオは強かった。ヴィオに攻撃は当たらず、ヴィオの攻撃は大ダメージだった。クロヴィスという足手まといがいなければ、ヴィオは主人公たちに勝っていただろう。
それほどまでにヴィオは強くなれる素質がある。今後の計画のためにも、私たちが生き残るルートへたどり着くためにも、ぜひヴィオには強くなってもらいたい。
「どうだろう?」
「やるわ!」
ヴィオは二つ返事で頷いた。
「強くなって、今度こそクロを守ってあげる!」
「それは私のセリフなんだけどなぁ」
今度こそヴィオを守りたいのは私も同じだ。強くなって、今度こそヴィオを守りたい。そして、ヴィオを蘇生したい。そのためならば私は――――すべてを捧げられる。
「じゃあ、さっそく今から始めよう。実はもう教師役の選定も終わってるんだ」
私はソファーから立ち上がると、ヴィオに向かって手を伸ばす。
ヴィオは私の手を取った。
ヴィオの手はひんやりと冷たい。死者の手だ。私は必ず、この手に温もりを取り戻してみせる!
◇
屋敷を出て、馬車で十分ほど街中を走ると、草も生えないまっ平らな大地、練兵場が見えてきた。簡単な木の柵で覆われた練兵場には、たくさんの兵士たちが訓練に精を出している。その三分の一くらいが女性の兵士だ。
この世界では、十歳になると女神からギフトという不思議な力を授かる。そのため、戦闘に役立つギフトを持つ者は、女性でも男性でも兵士になる場合があるのだ。
まぁ、兵士になるのは比較的あまり強力なギフトの持ち主ではない場合が多い。強力なギフトを持つ者は、個人での立身出世を夢見て冒険者になるケースが多いのだ。
そのため、冒険者は個人の力を生かしやすい少人数でパーティを組み、兵士たちは規律を持ち、組織の力を生かしやすい集団戦に強いと言われている。
そのあたりは領主の仕事とも関係してくる。
例えば、強力なモンスターが街道に出現した時、冒険者に討伐を依頼するのか、それとも兵士たちを派遣するのか、どちらにするか決めるのも領主の務めだ。
まぁ、よほどモンスターの数が大規模でない限り、冒険者に依頼するのが通例みたいだけどね。死者が出ても後腐れないし。
まぁ、そんな話は今はいいんだ。
今日から、私とヴィオの剣の訓練が始まる!
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