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6/13

焼肉定食

 その二人は、だいたいのことが逆だった。


 片方は背が高く、片方は小柄。

 片方はスカート長め、片方はスカート短め。

 片方はおとなしい、片方はさわがしい。

 片方は勉強ができて運動がイマイチ、片方はその反対。


 ざっとあげただけでも、これだけある。

 しかし、おどろくべきことにその二人は(だい)の親友だった。

 かつクラスの中心的存在で、すごく目立っている。


 昼休みの今も、二人は女子のグループにとり囲まれて、楽しくおしゃべりしていた。

 ぼくの前の席にすわっている男子が、そっちを人差し指でさしながら言う。


「な、なあ、高泊(たかどまり)くんなら、どっちがいい?」

「いやぼくはそんな……えらべるような立場じゃないから」


 この彼は、二学期からよく話しかけてくれるようになった。

 ぼくは一学期をずっとぼっちですごしてたから、正直ありがたい流れだった。

 ただ、少し押しのつよいところがあって、

 何十巻もある自分が()すマンガをいきなり「かすよ」と持ってこられたときは、けっこうこまってしまった。


「逆に、そっちは?」

「そうだなぁ……ツインテ活発キャラも捨てがたいけど……やっぱりセレブお嬢様キャラの彼女がいいな」


 うんうん、とよくわからないが同調する。


 まあとにかく、大きなイベントの前に友だちができたのは良かった。


 来週には修学旅行がある。この高校は高二の10月にそれがあるんだ。



「きゃわいそう」



 帰り道の電車でばったり顔を合わせると、幼なじみはいきなり言った。


「なにが?」

「自由行動。修学旅行の。でもポジティブにいこ? 先生とまわるのも、なかなかレアな経験だしね」

「ノア。おまえ誤解してるだろ。もうぼく、友だちいるぞ?」

「あれっ? そうなの?」


 駅にとまってちょうど二人分の座席があいた。

 まよわずノアがそっちに行ったので、ぼくもついていきとなりにすわった。


「カツキくんには?」

「まだ……っていうか友だちに『友だちができた』とか、あまり報告するもんじゃないだろ」

「私から言っていい?」


 いいよ、とぼくは了承した。

 二年になって、ノアは克樹(かつき)とクラスメイトになっている。


「よろこぶだろうな~。ずっと心配してたんだよ? 永太(えいた)のヤツがさびしそうだ、って」

「うん」

「きゃわいそうじゃなくなってたか」

「それ、気に()ってるのか?」


 なによ、とノアは目を細めた。


「かわいそうと思ってくれる幼なじみがいることを、もっとよろこびなさいよね」

「はいはい」


 駅の改札を出た。

 後ろ姿を向けたまま、雑音にかき消えるギリギリの声量でノアは言った。



「私がいっしょにまわっても、よかったんだけどなー……」



 それはふいうちだった。

 夕方の雰囲気もあって、より効果的にぼくの心をつかんだといえる。

「いいぞ」と反射的に言いそうだった。

 手帳がなければ、きっとそうしてる。


(きこえなかったフリしたけど)


 すこし後悔。

 だがおそらく、ちがう時間軸のいつかのぼくが、あいつとの自由行動をえらんでいることだろう。


(……しょうがない。ノアとくっついたんじゃ、高校を出られないんだ。永遠に)


 行き先は、歴史的な名所が多い「修学旅行といえばここ」みたいな定番のところだ。


 新幹線でとなり、バスの座席でとなり、部屋は同じ部屋で、自由行動もいっしょ。

 それでも友だちは話すことがなくなるどころか、時間がたつごとによくしゃべるようになった。

 

(情報量すごいな……)


 今いるこの橋の上でも、彼の話はとまらなかった。

 建てられた由来とか、幕末にどういう事件があったとか。


 ぼくたちがいるのは、大きな川にかかる大きな橋の真ん中あたり。

 

 さー、というどこか落ちつく水の音をバックに、友だちの説明にうんうんうなずいていると、



「よく知ってるね」

「ほんまにな」



 声をかけてきた女子がいた。

 二人組。


 片方は一つ結び、片方はツインテール。


「あ、ごめんなさい。お邪魔しちゃったかな? 面白いお話がきこえてきたものだから」

高泊(たかどまり)くんたち、よかったらうちらといっしょにまわってくれへん?」


 ふぇっ!? と友だちが声をあげる。

 ぼくも同じ気持ちだった。

 声が出なかったのは、あまりにも想定外のことにおどろきすぎたからだ。


 ありえない。


 クラスの人気女子ツートップと、ぼくたち二人が同行するなんて。


「え、えっと、この寺はむかし、えらい人を(とむら)うために……えらい人って、だれだったかな……」


 完全にペースが乱れた彼を前に、二人ともニガ笑い。

 ぼくも、スマホでしらべて横からできるだけサポートしてみたが、力になれたかどうか。


「おいしい!」


 菱川(ひしかわ)さんがほっぺたをおさえた。

 お昼どき。

 電車にのって市街地へ出たあと、ぼくたちはいったん昼食を食べることにした。

 レトロな感じがする喫茶店。

 赤いイスとか、ステンドグラス、ランプみたいな照明、むかしっぽい置き時計。


「うまかったなー」

「ほらほらシズク。デザートも食べようよ」


 と、横にすわる逆巻(さかまき)さんの肩をさわる。


「ふとるでー?」

「こんなときぐらい、いいじゃない」


 食事中も、しゃべっているのはほとんど二人だけだった。ぼくたちはガチガチになって無言だった。


「ねえ、みんなでアフォガートを食べません?」


 ぼくと彼は同じタイミングで首をかしげた。

 バニラアイスにエスプレッソをかけたものです、と菱川さんが説明する。


「いや……遠慮しとこうかな……なんか高そうだし」友だちはメニューで価格を確認してそう言った。

「大丈夫です。お代は、私に出させて下さい。親からも、友人のためにつかえと言われておりますので」


 すっ、と財布を出して会計してくれた。

 ごちそうさま、と言ったあとで、彼がぼくに小声でぼそっとつぶやいた。


「セレブですなぁ……」


 菱川さんはお金持ち。

 それも、どうもケタがちがうレベルらしいというのは、クラスのみんなが知るところだった。

 運転手さんつきの高級車で登下校をしてるだけでも、なみの家庭じゃないことを示している。


(はーやれやれ)


 家にもどってきて、ぼくは真っ先に机にしまった手帳を確認した。


(二年も半分すぎたのに、彼女どころか仲のいい女子もいない。あー、これ終わったなー)


 ――――と、


 途方(とほう)にくれていると、


 ちょっとした事件が起こった。



「い……いっしょに!?」



 ぼくと友だちの声がそろった。


「あかん?」


 ツインテの逆巻(さかまき)さんが、眉を八の字にして残念そうな声で言い、

 菱川(ひしかわ)さんがそのあとをつづける。


「修学旅行の話、四人でいっしょにしませんか?」


 食堂の四人がけのテーブル。

 意識しないようにしても、彼女たちがチラチラ見られてるのが気になる。


 やはりこの二人は特別なんだ。


 気軽にネットにあげた動画――休み時間のおしゃべりみたいなふつうの内容――が、おそろしい速度で広まって次の日には学校が特定され、あわててそれを削除したというエピソードはダテじゃない。 


 次の日も、その次の日もぼくたちは相席(あいせき)した。



「また焼肉定食なの? シズクはほんとに、それが好きなのね」

「ええやん。好きなもん食べるんが一番やで」



 いつしか、お昼にこの四人で食堂で食べるのが、当たり前になった。


 クラスの女子にお弁当の人が多かったのも、こうなった原因の一つだろう。

 ようは、四人がけのテーブルをうめれる話し相手がほしかったってことだ。

 たまにヘンな男子がすわってきてイヤやってん、と逆巻さんは言っていた。


(まあ、ボディガード気分でわるくないな)


 ぼくと友だちもいつまでも無口でもなく、ふつうにしゃべるようになる。


 一度、彼女たちと話すぼくの様子をノアにみられたときがあった。


(……なんだこれ)


 その日の夜、あいつからとどいたメッセージは、亀と三日月の絵文字だった。意味はわからない。


 そして、さらに日常をゆるがすようなことが。


 ――ぼくの友だちが、菱川さんに告白された。


 彼がしたほうじゃなく、されたほう。


 以前から気になっていて、じつはあの修学旅行のとき、彼女は足がふるえながらも勇気をだして声をかけたそうだ。


 カップル成立。


 しかし、つきあってることはオープンにせず、まわりには秘密にしていた。

 だからこのクラスでそれを知ってるのは、二人をのぞいてはぼくと……



「あ。今日はタカくんも焼肉定食なんやね」



 逆巻(さかまき)さんだけ。

 その日、食べ終わったあと、彼女はなかなか席を立たなかった。

 食器を下げに行く菱川(ひしかわ)さんたちを、頬杖(ほおづえ)をついてぼんやり見てる。


「ほんま、よかったなぁ。そう思わへん?」

「うん。思うよ」

「自分は?」

「自分? ぼくのこと?」

「好きな子とか、おらんの?」

「……」ぼくは逆にきいた。「逆巻さんは?」

「まーおってもな……うち、あの子ほど美人さんやないから」


 そんなことはないとぼくは思う。

 見た目のレベルみたいな話じゃなくて、彼女はちゃんと魅力的だ。


「ショックやしなー。好きな人できて、その人にうちじゃなくてあの子がいいって言われたら。たぶん、そうなるやん?」

「そうかな。それはわからないと思うよ」

「ええねんええねん」にかっ、と彼女は両目を細くアーチ状にして笑う。「気つかわしてごめんな」


 食器をもって立ちあがるとき、

 彼女はひとりごとのように言った。


「うちは、あの子の()(もん)やねん」


 2月になった。

 ぼくはあるウワサを耳にした。


 菱川さんの私物が盗まれた、って。


 あまり高校生がもってない、ハイブランドの財布。


 犯人さがしはしたくないからと、彼女はそのことを親や先生に知らせていないようだ。


(ぼくも、クラスに犯人がいるなんて思いたくないけど……)


 気になる。

 オゴってもらったお返しじゃないが、

 できることは何かないだろうか、とぼくは頭が切れる蛍一(けいいち)に相談した。


「盗んだ人間をさがさない。そういう判断もあるだろうな」

「でも……見つけてあげたいんだ」


 そうか、と目をつむってうなずく。


「そういうときは、逆問題で考えるのはどうだ?」

「ぎゃく……問題?」

「結果から原因にさかのぼるんだ。この場合なら、どういう行動が財布を取られる原因になったのか、たとえばそれが〈ハラがたった〉とか〈ムカついた〉なら、どうしてそういう気持ちになるに(いた)ったのか……」

「へー。なるほど」


 とはいったものの、よくわからない。


 一番親しい人に、くわしくきくしかないか。


 放課後の廊下で、逆巻さんをつかまえた。


「心あたり? んー、見てわかると思うけど、ウラミ買うタイプちゃうからなぁ」

「女子のだれか、その財布のブランドが好きみたいなこと、言ってなかった?」

「べつに、やな」彼女は片手を腰にあてる。「ずいぶん熱心やね」


 自分でもそう思う。

 けどなんか、ほっとけないんだ。


(もっと情報が必要だな)


 ぼくはなんでもないことのように、



「日曜日、会えないか?」



 と逆巻(さかまき)さんをさそった。


 デートが目的なら、ビビッてできなかっただろう。


 そうじゃないから気負(きお)わずにさらっといえた。



「また遊ぼうな」



 わかれるときのそれは社交辞令じゃなかった。

 何日かして、今度は彼女からさそってきた。



「あっははは! おもろいやん、それ」



 ぼくの失敗談を、逆巻さんは面白がってきいてくれた。

 笑うと、ちらっと口から八重歯がのぞく。

 本人はコンプレックスのようだが、ぼくは好きだった。


(あれ?)


 いつのまにか、菱川さんの財布のことを忘れてしまっていた。


 女の子と仲良くなっていくことがぼくの心を満たして、意識から追いやられたんだと思う。


(まてまて……たしか逆問題だったよな)


 どういう人が財布をとる?

 それは、その財布をもってない人だ。

 財布はハイブランドらしい。

 ハイブランドを買えないのは――――



「うちの家いま大変やねん。お母さんがずっと入院しててな」



 そんなにお金をもってない人……。


 三年生になった。


 ぼくは彼女と二人きりで食事するようになった。


 あいかわらず(しずく)は焼肉定食が好きだった。影響されて、ぼくもそれをえらぶことが多くなった。



「同じもん食べて……相性ええな、うちら」



 学年が上がってクラスもべつべつになり、(しずく)菱川(ひしかわ)さんとあまり会わなくなったみたいだ。

 スマホでも、ほぼやりとりがないらしい。


 あんなに仲が良かったのに。


 それとも、そう見えていただけ―――


 または何か、二人の関係が壊れるようなことが、ぼくの知らないところで発生したとか。


(まさかだよ。いくらなんでも……)


 が、考えはじめると、日に日にその疑惑はふくらんでいく。


 同時に、彼女への想いも強くなっていった。


 磁石のように、近づいてある距離をこえると、すごいスピードで引きあう。



「なんか飲みもんとってくるわ」



 場所は彼女の部屋。


 タタミの上にピンクのカーペットをしいていて、白いローテーブルと、部屋の(かど)に置かれた学習机と、ちいさなタンスに、木製のベッド。

 壁にはセーラー服をハンガーでかけていて、その横のボードに小物入れとかカギとかをひっかけている。


(いいのかな……こんなじっくり観察しちゃっ………………ん?)


 小物入れからこぼれ落ちそうなほど、ハミ出しているもの。


 その色、その形、その質感にぼくは見おぼえがあった。


 ――「お代は、私に出させて下さい」


(……)

「おまたせー。っていうか、なにがええ? それきくん忘れてたわ」


 にこっ、と彼女は笑う。

 デート後の今は、トレードマークのツインテールをつくっていない。

 ぼくは立ち上がった。


「ごめん。急用ができた。ぼく帰るよ」

「え~そうなん?」


 その日から卒業式までは、時間が飛んだようにあっというまだった。

 ぼくはなるべく、態度に出ないように(しずく)とは接したつもりだけれど。



 ―――彼女の部屋にあったのは、菱川さんの財布だった。



 卒業式の日。


 ノアがぼくに告白した。


 あいつは、ぼくが返事するのもまたず、すぐ背中を向けて立ち去った。


 入れかわるように、彼女が目の前にあらわれた。手をふりながらこっちに来る。ツインテールの髪がゆれている。


(ぼくと(しずく)()(こころ)も相性抜群(ばつぐん)だ。今なら、きっと幼なじみよりも――)


 財布のことに目をつぶれば、すべてうまくいく気もする。


 高校を出ていける可能性は、じゅうぶんにあるんだ。


 だったら……


「ほら、私と手ぇつないで、いっしょに学校出ようや」

「……」

「そうしたいって、前に自分()うてたやん?」


 ぼくは首をふった。

 ぴくっ、と彼女の右の下まつ毛が一回こまかくうごいた。


「キミとは手をつなげない」

「な……」

「たとえキミと、一生いっしょにすごせるとしても」

「は……はぁ!? なにいうとんか、わけわからんわ!」


 肩ごしに一度ぼくをにらみ、彼女は行ってしまった。


(たしかにな、ぼくも、なにやってるのかわけわからないよ)


 高校三年間で最終的にやったことはといえば(しずく)が知られたくなかったことを発見して、

 手をつなぐことを拒否しただけ。


 ひとりよがりな判断だったか?


 そうではないと、思いたいけど……。


(あー、天気いいなー)


 見上げた空は快晴だった。


 まさに今日は、卒業式日和(びより)といえる。


(もう何もできることもない)


 手帳に引き継ぎは残してる。

 一ヶ所、本文とはべつに走り書きで『重ね合わせ』と書かれていたのも、一応そのまま残すことにした。

 あとのことは次のぼくにまかせるとしよ―――


「えっ? まじ?」

「まじまじ! 事故(じこ)ってる。女子がトラックに……」


 すれちがいざま、学校へ入っていく生徒が興奮した様子で話していた。


 気になって(あゆ)みをとめようとするも、あげた足をおろした場所は、すでに学校の外だった。


 ◆


 高校初日の朝からツイてない。

 寝癖(ねぐせ)はひどいし、家にスマホ忘れて定期券つかえなかったし、ほどけたスニーカーのひもをふみつけてコケるし。


「どーぞぉ!」


 あ。

 反射的に受け取ってしまった。

 駅前の広場で、ポケットティッシュみたくくばっていたから、てっきりポケットティッシュだと思ったんだけど。


 手帳だ。

 しかもずっしりくる革製。黒い色の。

 こんなのタダでもらっていいのか?


(……なんか、はさまってるな)


 しおりみたいなのが。手帳の上の部分にちょっとだけ見えている。


(なんだこれ……はっ!!!???)


「親愛なる自分へ


 まず、ページをさかのぼって『逆巻(さかまき) (しずく)』の名前をさがせ。

 さすがにないとは思うが。」


 おいおい。

 なんだよその投げやりな書き方は。


 もっと自信持てよ……って、まだよくわかってないんだけど。


 ぼくの字なのはまちがいないな。


 一応、指示にしたがってさがしてみたが、その名前はなかった。


(ようするに高校を出るために一生いっしょの相手をさがせ、ただしその相手はノアではない……と)


 ある日の午前中、ノアからラインが入った。


「今日お弁当忘れちゃって」

「食堂行かなきゃなんだけど」

「友だちみんなお弁当派だから」

「いっしょに行ってくれない?」


「?」のうしろには手を合わす絵文字。

 あいつがぼくにこんな絵文字をつかったの、はじめてかもしれないな。


「いいよ」

「券売機混むから、休み時間に食券買っとけよ」


 と送る。

 友だちの二人には、かくさずそのまま話した。幼なじみと食べるって。

 克樹(かつき)は「うらやましいやつだなー」とぼくをひじでつつき、蛍一(けいいち)はだまってうなずいただけだった。


 さあ、ぼくも買っとかないとな。


 二時間目が終わり、二人と食券を買いに行く。


 券売機のまわりはぼくたちだけのように思えたので、何を食べるかじっくり考えこんでいると、


「どしたん? まよってんのぉ?」


 うしろから声をかけられ、ぼくはふりかえった。


「あ……すいません。すぐ決めますから」

「ええんよ。こっちこそ()かしてごめんな」と言って笑う。「そうやなぁ、焼肉定食とかどう? おいしいで」


 ぼくは、その子におすすめされたものをえらんだ。

 笑うと目がニコニコマークみたいになる、かわいらしい、ツインテールの女の子だった。


(うまい)


 濃厚なタレがからんだ肉と、あっさりしたキャベツの千切りの組み合わせは、じつにいいと思った。



「いっこもーらいっ!」


 

 あきらかにあいつのハシがつまんでるのは一個(いっこ)じゃなかったが、ゆるしてやるか。

 なんとなく今日のぼくは、キャベツを多めに食べたい気分だったんだ。

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