唯一無二
二度目の春がきた。
「まあ、しゃあねぇな」
「そうだなカツキ。だが、おれたちの関係は変わらないさ。そうだろ、永太」
一年生でできた友だちは二人ともべつのクラスになって、ぼくは一人になった。
その後しばらくして再会すると、
克樹はバリバリ一軍のグループに入ってて、
蛍一には―――
「それ彼女じゃね?」
「いや、そういう存在ではない」
「おいおい~、なあ、永太はどう思うよ?」
仲の良い女子ができて、いい感じだそうだ。
きけば、一年のときにクラブハウスのそばを歩いていたら地面にボードゲームのカードが落ちていて、
それを部室に届けたのがきっかけらしい。
それからたまに放課後に一対一で会っている、と。
「よせよ。ユキコはそういうんじゃないんだ」
「下の名前で呼んでちゃ説得力ねぇぜ」ぱん、と克樹は手をたたいた。「よーし、おれも夏までには彼女つくるぞーっ!!」
あは……とぼくは愛想笑いしていた。
もちろん、友だちの恋愛がうまくいってほしいという気持ちはある。めっちゃある。
しかし、友だちを応援している場合ではない。
この手帳―――
(一生いっしょのパートナーなんて……そんなの、ほんとに見つかるのか?)
エレベーターのドアがあいて、ぼくは手帳をスクールバッグにしまう。
(高校生活がループしてるって言われてもなー……正直実感ないし)
でも過去の自分は、どうやらがんばったようで、
その証拠に、4人もの女子とつきあえてる。
これ、ほんとに同じ〈自分〉がやったこと?
今のぼくはといえば、同級生の女子にもろくに話しかけれないまま、一年を棒にふったというのに。
(ていうか、友だちづくりから不安……。カノジョどころか、このままぼっちで終わる可能性もあるぞ……!)
「あーっ。おっそ」
マンションの前の街路樹のしたに、セーラー服の女子が立っている。
二年になって、スカートの丈がやや短くなったようで、
逆に、ボブカットの髪の毛は長くなった。毛先が首の一番下までとどいている。
幼なじみは不機嫌そうに言った。
「おそいよ。今日、休みなのかと思ったじゃない」
「ごめんごめん」
と、わけもわからずあやまるぼく。
あれ? と思ったのはその数秒後。
ついてくる。ぼくの横にならんで。
「なあノア。だれか待ってたんじゃないのか?」
「だれをよ」
「知らないけど……お父さんとか」
「お父さんなんか、朝の六時には家でてるんだからね」
「へー」
「ねぇ、新しいクラスはどう?」
と、そこからテニスのようにラリーをつづけ、
やがて駅につき、電車にのり、電車をおりた。
「さすがにこの時期、一年生はこっちの道つかわないね」
「学校公認の道じゃないからな」
一年生は大通りを歩いて学校まで行くが、
二年三年は駅から学校までのルートは、ちょっと抜け道っぽいところを行く。
便利だからだ。
ただあまり道幅は広くなく、歩道と車道の境い目もアイマイなので、けっこう近くまで車がくる。
中には速度を出している車もあって、油断はできない。少なくとも、ここはスマホを見ながら歩けるような道ではない。
「ちょっと、なんで私の後ろに回るわけ?」
「いや道がせまいから……」
「むー」
「スカートをおさえるなよ。そんなつもりないって」
と、その日はノアといっしょに登校した。
次の日は、あいつはいなかった。
せっかく待たせないようにと少し早めに家を出たのに。
(気まぐれなやつ)
でも、とぼくは思った。
現在の状況じゃ、パートナーの最有力候補は幼なじみのノアしかいない。
でも、とぼくは思った。
それで上手くいくぐらいなら、とっくに高校を出ているはず。
すなわち、ちゃんとほかの相手をさがすしかない。
それはわかっちゃいるんだが……。
モタモタしているうちに4月、5月が終わった。
(やば。体調が終わってる)
ポカポカ体が熱い。
風邪かな……。
ぼーっとして、授業にミが入らない。
(そ、早退するか……目立つからあんましたくなかったけど……)
休み時間に先生のところへ行き下校の許可をもらった。
せめて友だちがいれば、だましだましやれそうな気もしたが。
(ふーっ。予想に反して、ラクになってきたぞ)
風で汗がすーっと乾いて気持ちいい。
これから上り坂かと思っていたが、どうやら下り坂だったようだ。体が元気になりつつある。
そして、
ドラッグストアでゼリー飲料とスポドリを買い、
公園のベンチでしばらく休憩したら完全に復活してしまった。
(……)
また学校にもどるのもアレだし、
せっかくだからこの自由な時間を楽しむのもいいか。
思わぬ出会いがあるかもしれないしな―――ないと思うけど。
まず駅の地下街にある大きな書店に行った。
雑誌や、大人が読むような本をパラパラめくって時間をつぶした。
(あれ?)
左右にショップがならぶ通路を歩いていると、
(うちの学校の女子?)
たぶんそうだ。あの白い半袖のセーラー服とグレーのスカーフの組み合わせは。
どうしてこんな時間にここにいるんだろう。
雑貨屋の中にいる。
いかにも女の子向きな感じの店で、ぼくは中に入りづらい。
(髪、茶色っ……)
まあ多様性の時代とは思うが、なんとなく生まれつきじゃなくて染めてる感じがする。
こう、ヤンキーな雰囲気というのかな。
いるんだな、うちの高校にもああいう人。
目が合った。
ぼくは視線をはずした。
で、しばらくスマホをさわっていると、
「えっ」
「ちょっといいですか」
指で肩をちょんちょんとされる。
ふりかえれば、茶髪の子。髪型は、耳を出すタイプのショートカット。
声のボリュームを下げて、彼女はささやくような声で言った。
「あの……見ました?」
あごを引いて、どこか思いつめたような上目づかいでぼくに言う。身長はぼくより少し低いぐらい。
ネコのような目。
かすかに香水のにおいがした。
「え? えっと……」
「私のこと、見てましたよね?」
遠目にはヤンキーっぽかったが、表情や言葉遣いは意外とふつうっていうか、キツい感じがないというか。
「まあ、見てたけどさ」
「!」
両手で口元をおおう。
目もカッとひらいて、ショックを受けているようだ。
なんか、ぼんやりとわかりかけてきた。
このジッパーをフルにあけた肩掛けのスクールバッグと、
あのお店の中にいて、見た、と言われて動揺してるってことは――――
(まさか万引き!!!?)
うそだろ。
「もちろん秘密にしてくれますよね?」
「いや、それは、その、さすがによくない……んじゃないかな……」
「どうしてですか?」
「……」
「だまっててくれるだけで、いいんですよ?」
「……」
「これがバレたら、私、学校に行けなくなります」
「……」
「だから見なかったことにしてください」
頭がポカポカしてきた。熱がぶり返したのか。
それでも、考えて考えて、ようやくぼくは結論をだした。
「あっ。どこへ行くんです?」
「いっしょに行こう。ぼくもあやまるから。それが一番いいよ」
「……どうして?」
「良くないことだから」
「いえ、そっちじゃありません。『ぼくもあやまる』ってなんなんです? 私たち、赤の他人じゃないですか」
「そりゃ、そうだけどさ……」
「お人よし」
くすっ、と彼女は小さく笑った。
「え?」
「レシートだってありますよ」
その子がバッグから取り出したのは、
とあるアニメキャラのシャーペンだった。
ぼくを見て、ニヤニヤしてる。
「恥ずかしいので、できれば買ったことを秘密にしてもらおうと思ったんですけど」
「な……」
「万引きしたと思ってました?」
ふざけてる。
そっちが誤解させるようなことを言ったんだろ。
かんべんしてくれよ。
つまりぼくをからかってたのか―――と、いろんな言葉が心に浮かんだが、
「はあ……それじゃ……」
すっかり疲労してしまったので、ぼくはそれだけ言ってその場を立ち去った。
その、だいたい一週間後、
(なんだ……?)
食堂で昼食をとって、残り時間を一人ですごしていたところ、
かわいい、とつぶやく声がきこえた。男子の。
それで教室を見回すと、ほとんどのヤツが廊下の方に視線を向けていた。
(いったいだれが――――あっ!!)
あっ、とあっちも同じタイミングで思ったにちがいない。
目が合った。
あのときの茶髪の女子。
ためらいもなく、タタッと教室に入ってくる。
「こんにちは」
「……どうも」
「あれ? もしかして、まだ怒ってるんですか?」
「そうじゃないけど」
「さがしたんですよ? 休み時間にクラスをひとつずつ見て回って……」
「あっ、ちょっ」
たまらず、ぼくは教室を出た。
廊下を歩いていると、
「どうかしました?」
「注目がすごくて、さ」
「えっ?」
「あんなに見られてちゃムリだよ」
「そうかな……変わってますね」ひょいっ、と体をかがめてぼくを下からのぞきこむ。「先輩」
親しげにそう呼ばれた―――ということは、彼女は一年生ということか。
そのまま食堂前のテラスに移動する。
「で、ぼくになんの用?」
「『こんにちは』を言いたかっただけですよ」
「キミ、ほんとにマイペースだな。人見知りもしないし」
「そんなことありません。ほら」
ぱ、と彼女は右手をひらいた。
「え?」
「見えません? この手汗。私だって、緊張したんですからね」
そこで予鈴が鳴った。
休み時間はあと5分。
「せっかくだから連絡先交換しましょうよ」
「あの……その前に、キミの名前は?」
「みつけ。見学の見に、こざとへんに付属の付です」
見附。
変わった名字だ。ぼくも人のことはいえないが。
(これ……思いついたけど言わないほうがいいかな)
ハズしそうだが、笑ってくれたらラッキー。
トライしてみる価値はあるか。
ぼくは人差し指を彼女に向けた。
「あーっ、見附みーっけ、とか言って……」
「それ、小学生の時に百万回は言われました」
まるで予想していたかのような返答のはやさ。
さらに彼女は追い打ちをかける。
「高校生になって言われたのははじめてです。先輩って、けっこう幼稚なんですね」
「おたがいさまだろ。そっちだって、あんなシャーペン……」
「ああ、あれじつは妹に買ったものなんですよ。じゃあ失礼します」
急いだ感じで去っていった。
その場には、下級生から「幼稚」といわれた男と、ほの甘い香水の香りだけが残る。
(これはどうなんだろうな……)
帰り道で考えた。
茶髪ショートの一年生を相手に、どうしたらいいか。
ぼくには手帳のことがある。
押してみるのもアリな気がするが。
「おーい。いま帰り?」
ふりかえると、
「なんだノアか」
「ノアよ」
「部活は?」
「や・す・み」
横にならぶ。
髪をかきあげた瞬間、風がふいた。
むかしから知ってるシャンプーのにおい。
「ノアは香水とかってつけるのか?」
「えっ。えっ」と、自分の制服のソデのあたりをクンクンする。
「いや、くさいってことじゃなくてさ」
「……そう思うじゃない。まぎらわしーなぁ」
つける以前に持ってない、ということだった。
女子ってそういうもんなのか?
ふいにノアがむかしお母さんの口紅をつけて見せにきたことを思い出した。あれは小学生に上がる前かな。
「ああ、そんなこともあったねー」
「あれ、正直こわかったんだよな。血みたいにみえて」
「しょうがないじゃない。加減なんかわかんないんだから」
駅が近づいてきた。
―――と、こっちをじーっと見ているだれかがいる。
(あれは)
あの人ごみでも目立つ茶色い髪。
見附さんだ。
ぼくたちに気づいて手をあげる。
が、
なにかをにぎりかけた手の形のまま、それは空中でとまった。
「どうしたの?」
「いや……」
横をとおるとき、その手がすーっと下にさがったのが視界のスミでみえた。
(ぼくをまってた? じゃあ、わるいことしたな)
さすがの彼女も、女子と二人で歩いているところに入ってくるほどマイペースではないってことだ。
実際、となりにいるのはただの幼なじみなんだが。
その日の夜、
「彼女さん、いたんですね」
「かわいい人ですね」
「あいつは彼女じゃないよ」
「幼なじみ。家が同じマンションなんだ」
「でも……」
「先輩って、意外と冷たいんですね」
「冷たい? どうして?」
「おまけに鈍感」
「ぼくが?」
「おやすみなさい」
ベッドで寝る寸前、そんなやりとりをした。
なんとなく、彼女とはこれっきりかなという予感がした。
次に彼女と会ったときは秋だった。
提出物をだしに職員室にいくと、
「あ」
目が合った。
声を出したのはぼくだけで、向こうは無言で、顔を伏せるようにして行ってしまう。
(……)
大げさかもしれないが、ここが運命の選択のように思えた。
追うか追わないか。
考えこんでるヒマはない。
「見附さん」
「先輩。どうしたんですか」
すぐ異変に気づいた。
耳の、耳たぶのところにバンソーコーがはってある。
「それ、ケガ?」
「見ればわかりませんか?」
「いや……」
「そんな顔しないでください。ピアスですよ」
「ピアス?」
「このせいで職員室に呼ばれました。ピアスも没収です」
「……」
「ついでに言っちゃいますけど、私、先輩のことちょっといいなと思ってました」
「えっ」
「でもあんなにステキな幼なじみがいるんですもんね……」
彼女は顔を斜め下に向けた。
職員室前の廊下は、それなりに生徒が多い。
しかしぼくは気にならなかった。
「なんなんだよ」
びっくりした表情で、ぼくをみる。
「髪染めて香水つけてピアスするような子が、どうしてそういうとこだけ聞き分けがいいんだ」
「先輩」
「もっとワガママになって、いいんじゃないか?」
「あ……」
そこからのスピード感はすごかった。
ぼくと、一年下の見附さんとが急接近する。
いろいろなことを知った。
春花が茶髪にしたりピアスをあけたりする理由が、
父子家庭で父親とうまくいっていないことにあることや、
将来、演劇の道にすすみたいこととか、
好きな映画を何度も見てることとか、
彼氏はできたことないとか、
「また、ひっかかりましたね」
ぼくをからかうのが好きなことなどを。
それでも彼女の距離感は絶妙で、
「仲のいい後輩」と「彼女」っぽいラインを行ったり来たりしている。
三年になった。
ぼくと春花は海を見ている。
彼女の思いつきでサイクリングして、こんなところまで来てしまった。
「ムードありますね」
「まあね」
「いいんですよ? 告白とか……しても」
「いいよ。どうせまた、いつもみたいにスカされるんだから」
「一段飛ばしで、プロポーズでもいいですよ?」
にこっ、と彼女は笑った。
このころには、春花の髪は黒色にもどっていた。
少し髪も伸びて、一年のときのノアに似た髪型になっている。
「はいはい。じゃ結婚して」
「いや、です」
自分を抱くように体に腕をまわす。
「先輩みたいな人と結婚なんてゾッとします」
と、すがすがしい笑顔で言った。
「かりに……かりにですよ? なにかの気の迷いでそうしたって、私たちは離婚すると思いますよ」
「そうかな」
そしてとうとう卒業式の日がきた。
式のあと、ノアからスマホに連絡。
友だちの輪――春花が教室にやってきたのをきっかけに話すようになった、二年の時の友だちたち――を抜けて、
いそいで会いにいく。
「どうしてもあなたに言っておきたいの。じゃないと、がんばってこの高校に入った意味がないから……」
そばに桜の木。
この学校には、卒業式あたりと入学式あたりに咲く、2種類の桜があるらしい。
「私ね……あなたのことが好きだったの」
「え? ぼくを?」
「もっと……積極的になりたかったけど、あなたにはあの子がいたから」
春花のことだ。
ということは、もしかしたらノアとつきあう可能性もあったのか。
いや、それじゃダメだ。
ぼくには手帳のことがある。
この高校を、なんとしてでも出ていかないといけないんだ。それが最優先だ。
(ノア)
もう、引き継ぐべきことはそこに書いてある。
「嫌われてでもノア以外を」。
前回のぼくが書いていたことも、そっくりそのまま書き残しておいた。
(こんなことがなかったら、ぼくは…………)
「ごめん」
「あやまらないで」
「きっと、ぼくなんかよりいいヤツがみつかるから、さ」
「あなたよりも?」きっ、と心なしか目つきがするどくなった。「そんなの、この世界のどこにもいないよ」
「ノア」
しばらくその場から動けなかった。
背中が見えなくなったあとも、見えなくなった一点をずっと見つめつづける。
制服に何枚か、散った桜の花びらがくっついた。
(そう深刻になることはないか。ノアは幼なじみだし、引っ越したわけじゃないんだから)
今ので一生の別れでもない。
うん。
ぼくは、ぼくを助けるために、できることをやらなければ。
「先輩」
「ぼくと手をつないでくれ」
「なんです……いつになく真剣な顔ですね」
「たのむ」
わかりました、とあきれた様子で手をさしだす。
(この子と一生いっしょってことは――――)
ころころ変わるネコのような性格の春花。
つかずはなれず、っていうやつだろうか。
ぼくにベタぼれなわけでもなさそうだし、
つきあえたって、フラれるのがオチかな。
ぼくは乗り気じゃない春花の手をひっぱるようにして、学校を出た。
◆
高校初日の朝からツイてない。
寝癖はひどいし、家にスマホ忘れて定期券つかえなかったし、ほどけたスニーカーのひもをふみつけてコケるし。
「どーぞぉ!」
あ。
反射的に受け取ってしまった。
駅前の広場で、ポケットティッシュみたくくばっていたから、てっきりポケットティッシュだと思ったんだけど。
手帳だ。
しかもずっしりくる革製。黒い色の。
こんなのタダでもらっていいのか?
(……なんか、はさまってるな)
しおりみたいなのが。手帳の上の部分にちょっとだけ見えている。
(なんだこれ……はっ!!!???)
「親愛なる自分へ
まず、ページをさかのぼって『見附 春花』の名前をさがせ。
ただし望み薄。」
ぼくは首をかしげた。
なんだこの弱気な書き方は。
名前がないかもってことか? そもそも名前ってなんだ? と手帳の前のほうをめくる。
(火宮……このへんか。えーと……あったあった)
名前|見附 春花
交際日数|12780日
破局理由|円満離婚
一万……すごっ。
365で割ると、約35年。
熟年離婚っぽいな。
なんだろう。
高校を出るのには失敗したんだろうけど、わるい気がしない。
(35年もいっしょにすごした相手か……)
つい想像してしまう。
この〈見附〉っていうのはどういう人なんだろうって。
っていうか、今日一日そればっかり考えてた。
夕方の駅前。
改札の手前でなかなかスマホがとりだせなくて立ち止まっていると、
「そこ、邪魔ですよ」
ショートカットの中学生の女の子に注意される。
通り抜ける瞬間、ちょっと香水のにおいがした。
ほかにも、下校のタイミングだから、生徒の数はすごく多い。
(見附みーっけ、ってわけには―――)
いかないな、とぼくは肩を落とした。