ベランダでタバコを吸うのが習慣だったが
ある日、マンションの掲示板でこんなことが書かれていた。『タバコの匂いについての苦情が出ているのでベランダでの喫煙はご遠慮ください』
自分のことだとおもった。
なぜなら毎日のようにベランダに出てタバコを吸っていたから。
ああ、誰にも迷惑をかけてないからタバコを吸ったっていいじゃないかと健康診断のたびに言い訳していたがマンションの誰かに迷惑をかけているのならタバコはやめどきだということだろうか。
誰かに直接言われたわけではないのに自分に特大のダメージが入った。
禁煙しよう、まずは吸う本数を減らそう。
そう思ったのにできない。
会社で吸ったから家のベランでは吸わない、と思ったのにタバコを持ってベランダに出ていた。
禁煙しようと決めたのに!本数を減らそうとしたのに!!どうしてこうも意志薄弱なんだ!!!
タバコの箱を握りしめる。もういいや、吸おう。
タバコに火をつけようとした時だった。どこからかふわりと花のような香りがした。
どこからだ?と思ったら斜め上の人が洗濯物を取り込もうとしていた。あ、目があった。なんか気まずくなったので思わず引っ込んでしまった。
その日はベランダでタバコを吸えなかった。
それからもベランダでタバコを吸おうにも強い花のような香りであまりベランダに出ることがだんだん億劫になっていった。
最近では空気の入れ替えをするのに窓を開けるのも辛い。
どうしよう、どうすればいいんだ?更新したばかりだから引っ越すのも気が引けた。そんなある日、マンションの掲示板にこんなことが書かれていた。
『強い芳香剤の香りによる苦情が出ているので外に干すときにはご注意ください』
あの強い花の香りは芳香剤だったんだ!自分以外にも辛いと思っている人もいるんだ!
よかった、と何も解決していないがほっとした。
窓を開けると柔軟剤の強い花の香りがする。においは結構人に影響を与えるんだな。斜め上を見て思った。
人の振り見て我が振り直せ、なんて言葉が頭をよぎった。
窓を閉めた。とりあえず自分でできることをしようと、禁煙のためのガムを噛んだ。
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