折り紙バトラー最終回!羽ばたけ!『鶴オブザミリオンタワー』!
ついに、折田 創真と悪の秘密結社ダークシザースの総統との最終決戦が始まった!
総統の妨害にあい、伝説の折り紙用紙を買い占められ、今までの作品が作れなくなっている創真!
彼はダークシザースの野望を打ち砕くことができるのか!?
「大した紙も無いなか、よく逃げずに来たな、折田 創真!」
「それはこっちの台詞だ、大人げない総統さんよお! 俺は今日ここで、お前の野望をぶっ潰す!」
「ふん、口の減らんガキめ……ならば俺の作品の前に跪け! 来い! 『レッドカース・ブラックドラゴン』!」
手首に巻いた機械を掲げると、総統の背後の空間に裂け目が生じる。
そこから暗黒の気配とともに這い出るのは、複数枚の超巨大専用用紙で折られた芸術。赤き呪いの刻印をその身に纏わせた漆黒の龍、『レッドカース・ブラックドラゴン』――暴力の化身、深淵の神が今、バトルフィールドに降り立った。
「どうだ! これぞ芸術! これこそが至高! 素人には辿り着けぬ神の境地!! 紙もない、金もない、素人遊びを楽しむだけの貴様に、これほどの傑作が作れるとでも!?」
「ふっ、俺も最初は諦めかけてたさ。情けねぇ……。だが、『戦争は数!』――ミスター・ヤマオリのその言葉が、俺に大切なことを思い出させてくれた……」
「な、なにを……」
暗黒竜を前にしても創真は怯まない。腕を組んだまま不敵な笑みを浮かべ、
「これが俺のっ……俺達の答えだ! 来い!! 『鶴オブザミリオンタワー』!!!」
そして光を纏った手を高らかに掲げる!
彼の背後、開いた空間は虹色の輝きを零す。眩いばかりの光の波から仏の如く舞い降りるのは、眼前のドラゴンにすら負けぬほど巨大な折り鶴――皆が知るその形は、しかし後光を背負うかのように神々しい。
これが創真の『鶴オブザミリオンタワー』。無量無数の折り鶴が集い、一羽の巨大な鶴を作り上げている。
「ミリオン!? 百万の鶴か!?」
「ああ! この約百万羽の鶴が、お前の野望を叩きのめす!!」
「そ、そんな数どうやって……」
「俺一人の力じゃない! 皆が協力してくれた! 俺の仲間や、かつて戦ったライバル達! 谷折小学校の児童全員に、千代紙町内会の皆さん!」
「それだけか!? それだけでこんな、」
「それだけじゃない! 知らないのか? 折り紙は教え合うことで、皆で楽しめるんだってことを――」
「まさか!?」
「ああ、そのまさかだ! 皆が周りに折り紙を頼み、その誰かは更に知り合いに頼む! 誰かに教えて誰かに教わる、折り紙の輪はどこまでも広がっていった――その団結の結果がこいつだあ!!」
神々しく輝く『鶴オブザミリオンタワー』。泰然と鎮座する姿は、折り紙の歴史と伝統を体現するかのようだ。
しかし総統は吐き捨てる。その重厚さに圧倒されようとも、元は所詮、ただの市販の折り紙だ。
「くだらん! そんな素人の下手糞が集まって何ができる!? 何が協力、何が団結だ!! 雑魚がいくら集まろうと、雑魚は雑魚なのだ!」
「下手だ上手いだは関係ない! 皆の想いがこもったこの鶴で、俺はお前に勝つ!!」
創真の叫びに応えるように、『鶴オブザミリオンタワー』が巨大な羽を動かす。同時に、それを構成する折り鶴が、計約二百万の翼を羽ばたかせた。巻き起こる風が、対峙する二人に吹き付ける。
創真はほんの一瞬、心地良さげに目を閉じた。
――皆の羽が、生んだ風。
総統の言ったとおり、歪な羽もあるだろう。しかし、その羽一つ一つが、仲間たちの友情の証だ。創真に勝利を委ねた彼らの信頼の証だ。
耳を澄ませば風を通して、彼らの声援が聞こえてくるようだった。
最早創真が恐れるものは、何もない。
「――抑えつけられようが、馬鹿にされようが! 俺たちの想像の翼はどこまでも羽ばたく!! 止めようとしたって止められるもんじゃねぇってことなんだよおおお!!」
「くっ……二百万の翼がなんだ! 安物の紙きれ如きに! 素人の集まりに! この俺の芸術が負けるはずもない!!」
総統の芸術、『レッドカース・ブラックドラゴン』が吠えた。漆黒の翼が羽撃き、赤き呪いが稲妻のようにその巨体に走る。浮かび上がったドラゴンは、眼前の獲物に狙いを定める。
――これが最後の戦いだ!
「無限に羽ばたけ!! 『鶴オブザミリオンタワー』!!」
「食い破れ!! 『レッドカース・ブラックドラゴン』!!」
・【習作】描写力アップを目指そう企画「第八回 はばたけ、君のはね企画」に参加した短編です。
・ホビーアニメっぽい小説への挑戦。アニメAパートのイメージ。