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短編

騙すなら真実を混ぜろとはよく言われる話

作者: 猫宮蒼



 元々うっすらと、既視感はあった。

 そしてある日ふと、あぁ、ここってもしかして……と既視感の正体に気が付いたのは、この世界と似た作品の始まりが訪れた時だった。


 カチュア・マリーズは、無理矢理枠を当てはめるのであれば、きっと悪役令嬢だとか、そういった立場であるのだろう。言う程悪役かなぁ? と首を傾げたくもあるが。

 作中では一応才女として周囲から知られているような、それなりな頭脳派キャラだと思う。

 いやどうだろう。彼女の婚約者である男があまりにも愚かすぎて、本当はそこまで優秀ではなくても対比でより賢く見えていただけではないだろうか。


 ……ともあれ、カチュアが前世の記憶をふと思い出して、そしてこの世界の事を思い出した時には既に原作が始まっていたのである。


 カチュアは伯爵家の生まれだった。

 本来ならば、似たような家格の令息と婚約を結んでそれなりの生活を送るはずだったのだと思う。


 ところが王家主催のお茶会にて、カチュアはなんと王子に見初められてしまったようなのだ。

 幼い頃なので、別に恋の駆け引きだとかそういう高度な何かがあったわけでもない。

 王家主催と言えど、その茶会は王子の婚約者を決めるためのものというよりは、王子の友人――将来の側近を決めるようなものであったり、あとはまぁ、茶会に参加した者たちの交流を兼ねて、といった名目もあったとは思う。


 デビュタントの頃ならともかく、それよりも幼いうちだと顔を合わせる機会も中々ない。

 王子の婚約者を決めるつもりももしかしたらちょっとくらいはあったかもしれないが、どちらかと言えば参加した親たちが、各家の子供たちを見定めるというのもあったのかもしれない。


 大人の思惑など当時のカチュアにはさっぱりだったけれど。

 今にして思えばそういう感じだったのかなぁ……といったところである。



 ところがそんな幼い頃に、なんと王子はカチュアに一目惚れをしたらしい。

 あの子をお嫁さんにしたい、と茶会が終わった後で王子が盛大に駄々をこねたのだとか。

 お茶会をやっていた時に面と向かって言われなかったのは、どうやら王子も照れて素直にお喋りできなかったから……らしい。


 カチュアは一応当事者だけど、らしい、ばかりでわかっていなかった。


 王子の嫁に、となれば。

 もっと身分の釣り合うご令嬢は他にもいた。


 王子の顔立ちは幼いながらも整っていて、約束された勝利の顔面と言っても過言ではない。

 だから、他のご令嬢たちの中でも早熟な子たちはぽぅっとなって頬を赤らめていたし、もしそんな令嬢たちが王子に嫁にと望まれていたのなら、間違いなく話はまるく収まっていたはずなのだ。

 そうでなくとも侯爵家や公爵家のご令嬢もその茶会には参加していたのだから。

 カチュアの家の伯爵家は一応王家に嫁げないわけじゃない。

 ない、けれどしかし身分やら何やらを考えるとやや不足しているといったところだ。


 一体カチュアの何が気に入ったのかはわからない。

 わからないけれど、あまりにも激しい駄々こねに国王が王子の願いを叶えてしまったのだ。


 カチュアは本来、他の家に嫁ぐはずであったのに。


 実のところ第一王子は、側妃が産んだ子であった。

 王子を産んだ時に体調を崩し、そのまま儚くなられてしまったため第一王子は母の顔を肖像画でしか知らない。それを不憫に思ったのだろう。父である国王は、第一王子にとことん甘かった。


 正妃が産んだ子も勿論いるけれど、国王の愛情は明らかに第一王子に向いていたのだ。


 結果としてカチュアはそんな王子の我儘に巻き込まれてしまった。



 第一王子――ディランの容姿は幼い頃から整っていたために、カチュアが婚約者となった時、ディランに対して好意を持っていた令嬢はなんであの子が、となった。

 自分の家の方が身分だって高いし、王子様のお嫁さんになるのは問題ないはずなのに。

 幼いながらもそんな風に思った令嬢たちからのやっかみがそれはもう凄まじかった。


 だからこそ、カチュアが身を護るためには王子との婚約を無かったことにしてもらうか、もしくはそれだけの価値があると認めてもらうしかなかったのだ。

 カチュア的には婚約解消が良かったのだが、王子はそれを頑なに拒んでいた。

 だからこそ、カチュアは自分の身の安全のためだけに必死こいて幼い頃から猛勉強をする羽目になったのである。


 そして、原作の内容を思い出した時点で。


 あれ、これ私婚約破棄される悪役令嬢みたいな役目では……? となったのだ。



 元はと言えばカチュアが猛勉強に励む形となったのは、何もかもぜーんぶ王子が原因である。

 王子が余計な事を言い出さなければ、カチュアはそこそこの教育を受けてそれなりの相手と結婚するはずだったのだ。身の丈に合った暮らしをするのだけは間違いなかった。


 だが王家に嫁ぐとなれば、そこそこでは勿論よろしくない。

 故に、優秀さを知らしめなければならなかった。

 血のにじむような……どころか実際に血が出るくらいの勢いだった。



 だがしかし、この王子、そうしてカチュアが優秀になった途端カチュアに対して劣等感を持ち始めたのだ。

 誰の! せいだと!!

 と、カチュアが叫びたくなるのも無理はない。


 上が無能だとロクでもない事にしかならないのは言うまでもなく。

 ディランがとても優秀であるならまだしも、彼の成長過程で人一倍優れていると言えるのはあくまでも容姿だけで、能力的には平凡そのものだった。それもあって余計に将来妃になるカチュアが優秀でなければならなかったのだ。


 だがしかし、そうなったところで自分より優秀な婚約者に勝手に劣等感拗らせて、ディランのカチュアへの態度が徐々に変わっていった。

 勿論悪い方にである。

 気に食わないならいっそ婚約を解消してくれとカチュアとしてはとても言いたい。別にこっちは王子様のお嫁さんになりゅ~! なんて望んじゃいないのだ。


 だというのに、当てつけか何か知らんがディランは学園で知り合った子爵家のご令嬢と仲睦まじくなっていった。



 幼い頃はやっかみやら嫉妬だとかでカチュアに対してあたりの強かったご令嬢たちも、成長とともに幼かった頃にはわかっていなかったあれこれがわかるようになってくる。

 結果として王子に振り回された可哀そうな令嬢、というのが今のカチュアの立ち位置である。


 幼い頃はまだしも、成長しても王子は能力的には平凡で、ただただ見た目だけが際立っているのだ。

 傍から見るだけなら申し分ないが、あれを王として支えろとなればそりゃあ王妃の能力が並みやらそれなりに優秀、程度ではやってられない。


 その事実に気づいた挙句、カチュアが王子との結婚を今でも望んでいない事を知った令嬢たちは、割とカチュアに同情的であった。


 子爵家のご令嬢――ウェンディも、そういった意味では王子の被害者になるはずだったのかもしれない。


 だが、ウェンディは王子に良くしてもらっているという事に恐れ多いと思うどころか、カチュアに対してどこか優越感を持っている様子であった。

 カチュアとしてはちょっとムカッとしたけれど、だが別にそれだけだ。


 いっそ婚約解消でも破棄でもいいからあの王子から解放されたい。


 結婚したらあれを王として自分が支えるとかとても面倒だし、そのくせ自分より優秀な女とか生意気だからいやだい! と駄々をこねるような男なのだ。

 公私ともにどっちにしても面倒くさい相手だとしかカチュアは思っていなかった。


 カチュアより身分が上の令嬢たちも、幼い頃はさておきある程度成長してから改めて見た王子の駄目さ加減に、彼女たちは早々に婚約者を決めてしまった。下手に婚約者を決めないままでいると、カチュアとの婚約がなかった事になったあと、白羽の矢が立つのは自分かもしれないと気づいたのだ。

 まぁ令嬢よりも先に親が気付いていたので、彼女たちは既にそれぞれに相応しい相手がいる。なんて羨ましい、とカチュアは思わず本人を前にして口に出してしまったほどだ。


 そのせいで余計にカチュアに同情票が集まったのは言うまでもない。


 本来ならば弱みなど、出すものではない。

 ない、のだがカチュアの弱みの根源は大体王子である。

 王子が関わらなければ、カチュアは普通の伯爵令嬢として今頃もっと穏やかに学生生活を楽しんでいたに違いないのだ。


 もし、あの時王子に選ばれていたのが自分であったなら、と侯爵令嬢や公爵令嬢たちは想像した。


 ただでさえ大した能力を持ってるわけでもない王子が、自分より優れた婚約者を蔑ろにしているのを見れば、そこに相応しい身分がくっついた時点でそれもまた生意気だとか、お高くとまっているだとかの攻撃材料になりかねない。

 自分としては当たり前に存在しているだけでも、身分を鼻にかけている、とか言われるかもしれない。

 想像であるけれど、その想像があまりにもリアルにできてしまった事で。


 令嬢たちのほとんどはカチュアに対して同情からであっても大分友好的だったのである。


「このままだと私、そのうち王子から婚約破棄を突きつけられそうですね」


 なんて学園の放課後、サロンで令嬢たちとお茶を楽しんでいたカチュアが呟いた言葉は。


 正直誰も笑えなかった。

 ウェンディと出会ってからのディランの態度を見れば、サロンに集まっていた令嬢たち全員が「あぁ、ありそう」と秒で納得してしまったので。


「その場合、私この国を追放とかされたりするんでしょうか。こう、やってもいないウェンディ嬢への苛めとかでっちあげられたりなんかして」


「一応言っておきますけれど、わたくしたちの誰もあのご令嬢に手出しはしていませんからね!?」

「わかってますとも。そんな無駄な事に時間を費やしたりしないでしょうとも。淑女としての忠告はすれども、嫌がらせや苛めなんてするはずがないってわかってますよ」


 そりゃあ幼い頃はやっかみで嫌味っぽい事を言われたりもしたけれど。

 でも、それだけだったのだ。

 高貴な身分のご令嬢たちは、いずれもその気になれば邪魔な相手なんて存在諸共抹消が可能である。なのにわかりやすくみみっちぃ苛めなんてするはずがない。

 確かにちょっと、気が強そうとか、気に入らない相手を虐めてそうな雰囲気がある令嬢もいるけれど。

 だが皆、心根はとても優しい事をカチュアは知っている。


 こうしてサロンでお茶会をしているのだって、お疲れ気味のカチュアを気遣っての事だ。

 まぁ、ここでカチュアが何もかも放り投げて逃げ出したら王子の婚約者に、と王命で指名される可能性がある令嬢からすれば、打算も含まれているかもしれないけれど。


「思うんですけど。こうなったら第一王子には失脚してもらった方が良くないですか?」


 少なくとも婚約者の口から出ていい言葉ではない。

 だがしかし、令嬢たちは咎めなかった。

 ちなみにこの場には密かに王家がつけた影もいるのだが、その影が報告する先は王妃なので問題がない。

 これが王の方へ報告がいくのであればカチュアももう少し言動に気を付けたかもしれないが、それならそれで婚約者を陥れようとしている罪とかで婚約破棄どんと来いである。



 令嬢たちも思ってはいたのだ。

 何もわざわざディランを次期国王にしなくても良くないか? と。


 年が離れている第二王子は幼いながらも優秀である。あと数年、王妃様には頑張ってもらって――ここで国王に頑張ってもらうとか思わない時点でお察しである――それから第二王子を次の王にした方が良いのでは? と。


 ちなみに第二王子には既に婚約者がいる。幼いがそれでも既に決められている令嬢は、身分と家柄と血筋はカチュア以上に文句なしの、公爵家の少女だった。

 むしろあちらが将来の王妃になった方が良いのでは。

 ディランを王にしたらなんというか彼の仕出かしの尻拭いにカチュアのみならず側近たちまでもが奔走しそうではあるけれど、第二王子はきっとそんな事にはならない気がする。


 正直今の代の令嬢令息たちは第二王子が国王になるまで、各々でできる事をして国を盛り立てたり支えたりしていけばいいんじゃなかろうか。


 カチュアの言葉に、令嬢たちは困った事に否定できなかったのである。


「失脚させると言っても、策はおありで?」

「一応。今の私の状況も使って、あの子爵令嬢が王子から逃げ出すように仕向けます」

「そう簡単に逃げるかしら? 王子の寵愛をほしいままにしている、と思っているものアレは。貴方を追い落としたら自分が次の王妃になれると本気で信じてると思うの」

「そうね、王妃になったら毎日何もしなくてもちやほやされると思い込んでるような相手よ。そう簡単に逃げ出すはずがないわ」

「そうよ、それにあの子爵令嬢、もしかしたらちょっと頭がおかしいかもしれないのよ。そうすんなりいくかしら?」


「頭がおかしい? 常識が飛んでるとかではなくて?」


 眉を顰めていう令嬢に、カチュアは咄嗟に聞き返していた。


「え、えぇ……あの、前に、一応わたくしもあまりにも淑女としてはどうかと思う部分があったから、それとなく注意をした事がありますの。

 ところが彼女、私はヒロインだからいいのよ! なんて突然わけのわからない事を言い出して。

 確かに身分差のある相手との恋なんて、物語みたいで自分がそんな話の中の登場人物になったみたいな錯覚を覚えたとしても、あぁもハッキリと自分はヒロインだ、なんて言い切るのはどうかしらと」


「勝った!」

「え?」

「いいえ、それなら余計にやりようはあるし勝算が出てきたわ」

 思わずカチュアは拳をぐっと握りしめて、それを頭上へ掲げた。

 令嬢としてはどうかと思うリアクションではあるけれど。

 カチュアの脳内では確かにその瞬間勝利のゴングが鳴り響いたのだ!

 カンカンカン!!

 ついでにテープやら花吹雪までリングに降り注いだ気がした。リングなんてこの場にはないが。


「皆様には是非とも協力していただきたく。

 あ、大丈夫です簡単な噂ばら撒くだけなんで」


 噂、っていうか、大体事実なんですが。


 そう言ってにっこりと笑えば。


 令嬢たちは思わずといった様子でそれぞれが顔を見合せたのである。






 ――ウェンディ・ラーニャは転生者だ。

 前世で読んだ『漫画』の世界に転生していると気づいて、そして自分がヒロインであると知った時、思わず鏡の前でやった! と喜んだくらいだ。

 元は小説だったらしい話をコミカライズされたその作品は、ウェンディにとっては大好きな作品の一つだったのだ。

 そのヒロインに自分がなった、というのはとても心が躍った。

 王子と恋をして、あの胸ときめくシーンを自分がまさに体験できるのだから。


 ウェンディの身分は子爵令嬢なので、王子との身分差がある。

 だからこそ、すんなりと恋が実ったりはしないけれど。

 それでも、ラストを思えば多少の困難は乗り越えられる。


 精々身分が高いご令嬢から「身の程を弁えなさい!」とか言われたり、嫌味を言われたりするだけで、直接的な命の危険はなかった。

 まぁ多少の嫌がらせで足を引っかけられたりして転ぶことはあるかもしれないが、その程度の怪我で済むなら全然マシな方だろう。


 少女漫画の内容にもよるが、物によってはヒロインの命が常に危機的状況にあったりするような作品だってあるのだから。

 命がけで行動するような展開もないし、そういう意味でこの世界はウェンディにとってイージーモードだった。


 王子の婚約者は優秀さを鼻にかけた令嬢だ。

 家が伯爵家なので、そういう意味ではギリギリの釣り合い。

 だから、己の優秀さを鼻にかけているのだろう。

 自分が優秀だから、王子の婚約者に選ばれたのだ、と。


 実際は異なるのだが、ウェンディはカチュアの事情など知った事ではなかった。


 ウェンディが読んでいた漫画では、カチュアの幼い頃の事情だとかは描かれていなかったのだ。

 ストーリーは一応完結していて、番外編でカチュアが主人公の話がその後漫画になるらしかったけれど、悪役令嬢、それも王子に捨てられる相手が主役の話なんて見てもな、と前世のウェンディはそっちには一切ノータッチだったのである。


 目を通していれば、少なくとも王子と恋に落ちようとは思わなかっただろうに。



 とにかく自分はヒロインなのだから、その通りの行動をしていれば何も問題はない。

 そう思っていたのだけれど。


 漫画にはなかった展開があっても、ウェンディは特にそれをおかしいとは思わなかった。

 漫画だったら場面転換だとか、時間が一気にとんだりしていたがここではそんな事もない。

 だから、漫画に描かれることがなかった日常パートか何かだと思っていたし、それを重要視もしていなかった。


 実際王子はウェンディを見て恋に落ちたし、ウェンディもまた王子と恋に落ちた。

 漫画の展開どおりに事が進んでいたのもあって、それ以外のシーンがあってもそれがどれだけ重要な話になるか、なんて思いもしなかったのだ。


 ある日を境に、ウェンディを見る周囲の目が変わってきたな、とは思っていた。

 今までは婚約者のいる異性にみだりに近づくものではない、とかがみがみ口煩く言ってきた令嬢たちも、どこか気の毒そうな目を向けるだけで何も言ってこようとしない。

 うるさい連中が静かになったのはいい事だ、と思っていたからウェンディはそれを気にもしなかった。

 けれど、教室にウェンディがやってくると、今まであまり話をしなかったクラスメイトの令嬢に声をかけられたのである。


「ねぇラーニャ嬢、貴方本当に王子殿下と添い遂げるつもりなの……?」

 不躾だな、とは思ったけれどウェンディは特に気にしなかった。

 ウェンディにとって今声をかけてきた令嬢は、モブでしかないのだ。

 物語上重要なキャラでもない。だから、これは漫画の枠内に描かれなかった一幕なのだなと思って、えぇそうよ、と誇らしげに胸を張ってウェンディは答えた。

 だって私はヒロインだもの。王子様に見初められて、そうしてハッピーエンドを迎えるの!

 貴方のようなモブと違って、幸せが約束されているのよ!


 そんな気持ちで。


 ところが声をかけてきた令嬢は、そんなウェンディの態度に羨ましがるでもなく、むしろどこかホッとした様子だった。

「そ、そう。良かった……だからカチュア様、あんなに嬉しそうだったのね」


 カチュア、というのはウェンディからすれば悪役令嬢である。

 といっても、ウェンディに直接的に嫌がらせをしてきたりはしない。あくまでもその優秀さをひけらかしたいけ好かない女だ。

 ウェンディに嫌がらせをしてくるのは、恐らくカチュアの取り巻きの令嬢たちで、カチュア本人とはウェンディも直接対決をするような事はなかった。

 ただ、最後にウェンディに嫌がらせをしていた全ての黒幕であると明かされて、断罪される。


 直接的に嫌がらせをされたわけではないから、ウェンディの中では悪役令嬢という存在、という認識でしかない。それ以上でも以下でもなかった。


 だが、そんな悪役令嬢が喜んでいる……?

 悔しがっているの間違いではなくて?


「ねぇちょっと」


 それ一体どういう事? と聞こうとして。


「人は見かけによらないのね。貴方が被虐趣味を持ってるなんて、知らなかったわ」

 ふふ、と微笑ましそうに、けれどどこか嘲るような笑みを浮かべて、令嬢はウェンディにとってすぐに理解できない事を言い出した。


 被虐趣味。


 分かりやすく言うなれば、SかMのM――マゾヒスト。

 虐められて喜ぶ側。


 ウェンディはその手の特殊なヘキに詳しくはないので、もしかしたら微妙に間違っているかもしれないが、それでも彼女が把握している限り被虐趣味とはそういう意味合いであった。


「ちょっ」

「予鈴鳴ったから席につくように」


 ウェンディが何よそれ、と言おうとした矢先、教室に教師がやってくる。最悪のタイミングだった。

 ここで食い下がって令嬢にどういう事よと言うのは簡単だ。けれどその場合確実に教師に叱られる。


 だからこそ、まずは席について、授業を受ける必要があった。

 いくらヒロインだからとて、授業をボイコットするなどはできなかったのだ。

 漫画の中では授業なんて面倒なシーンほとんどスキップされていたが、現実では面倒でも授業を受けなければならない。勉強しないと成績が落ちる。漫画のヒロインは子爵令嬢としては優秀な成績だったけれど、何もしないままだとウェンディの成績が底辺になるのは学園に入学した直後によぅく理解したのだ。

 そこら辺もパパッとなんとかなればいいのに! と思ってもどうにもならなかったからこそ、彼女は日々ヒロインとしての振る舞いをするようになったのである。


 悶々とした気持ちで受けた授業は、当然ながら内容なんてこれっぽっちも入ってこなかった。最悪だ。


 授業が終わったらすぐに令嬢を問い詰めるつもりだったけれど、次の授業は別の教室を使って行われる、となったので。

 令嬢は他の友人と共にさっさと移動してしまっていた。


 次の授業も無駄口を叩く余裕なんてなくて。

 授業の内容がやっぱりほとんど入ってこないまま、気付けば昼休みである。


 だがしかし、そこでようやくウェンディは。


 今現在学園を中心に流れているとんでもない噂を知ることになったのだ。



 どこか不憫な眼差しをこちらへ向けている令嬢は、ウェンディも何度か話したことがある相手だった。

 無理矢理に愛想笑いを浮かべてウェンディは彼女と昼食をともにとる事を取り付けたのである。


「ねぇ、なんか私に対してとても不名誉な噂が聞こえてきたんだけど」


 被虐趣味だとかいう単語が下手に周囲に聞かれるような事になるのは避けたい。

 だからこそ自然と声を潜めて、ウェンディは向かいに座る令嬢――モブすぎて名前すら憶えていないので仮にレディ・アンとしよう――に話しかけた。

 こちらを見る眼差しにとても不憫なものが混じっているのだ、きっと彼女は知っている。

 そう思ったのは間違いではなかったらしい。


「どうしてそれをわざわざ確認するの? 事実ではないの?」

「一体何がどう事実なのかしら」

「……貴女と殿下の仲は偽りなのかしら?」

「まさか。私とディラン様はまさしく運命の恋、真実の愛よ」

「つまりこれから先も共に在るという事?」

「勿論」


 そう、邪魔な女を排除して、ゆくゆくは自分が王妃となるのだ。

 ウェンディはそう信じて疑ってすらいなかった。


「じゃあ、これからそういうプレイを……?」

「ちょっと待って、どうしてそこからいきなりそんな不穏な感じになるのよ!?」


 あまり大きな声を出すと周囲の注目を浴びてしまう。

 目立つのは嫌いではないが、それはあくまでも称賛される方向性で目立ちたいのであって、見世物になるつもりはないのだ。


「だって、こう言ってはなんだけど、殿下は加虐趣味の方でしょう? 直接暴力を、というわけではないけれど、精神的に追い詰めるのが大好きで、そのせいでカチュア様は今まで苦労をなさってきたのよ。

 けれど殿下の関心がカチュア様から貴女に移ったなら、それってつまり、次はカチュア様の代わりに貴女が殿下の欲望を満たす相手になった、という事よね?」

「なんでそうなるの!?」


 おかしい。

 何がどうおかしいかと言われれば何もかも全部、としか言いようがないくらいにおかしい。

 けれど周囲は当たり前のような反応をしている。

 これは自分の方がおかしいのではないか? と思わせるには充分すぎるくらいの雰囲気だった。


 どうして、と更に詳しく問い詰めてウェンディは今まで自分が知らない情報を得たのである。


 ディランとカチュアの婚約は決してカチュアが無理を通したわけではなく、王家からのものだったという事実。

 幼い頃はお互いにそれなりに歩み寄っていたけれど、そこからじわじわと王子の性癖が開花してカチュアを虐げるようになってきたという話。

 カチュア本人はこの婚約を解消したいとすら思っている、のは誰も口に出していないが暗黙の了解で公然の秘密であるという事。流石に堂々と大っぴらにしては王家に対する不敬となりかねない。


 実際ディランがカチュアに向ける態度や言葉は決して婚約者に向けるようなものではない。

 婚約者というよりは、憎い敵と言われた方がまだ納得できるものだ。


 大っぴらにされてはいないが、伯爵家からは何度も婚約の白紙を求めているという噂もあった。

 けれどそれを王子が拒んでいるのだとも。


 そうまでして手放したくない相手。

 それがカチュアである。



 嫌いな相手ならさっさと自分の目の届かないような場所に追いやれば済む話である。

 それこそ王子ともなれば、相手が余程国にとって重要な人物でない限りは可能なはずだ。

 カチュアは確かに優秀かもしれないが、今はまだ国にとってそこまで重要な立場ではない。

 適当な理由をつけて、それこそ辺境の地に追いやるくらいは可能なのだ。あまりにもあまりな理由であれば他の貴族たちから王家は反感を抱かれるが、それらしい理由など作ろうと思えばいくらでも作れるはずだ。低位貴族であればともかく、王家ともなればいかにも重要な命を下したのだという風に装うなど造作もないだろう。


 けれども最近、ようやくカチュアが解放されるのではないか、という兆しが見え始めてきたのだと言う。

 それが、ウェンディの存在だった。


 かつて、王子がカチュアを望んだ時のように王子は彼女と距離を縮めた。

 そうして今は絶賛甘やかしている期間だ。

 それこそ以前カチュアを婚約者にした直後のように、二人の仲は短期間で急速に接近していた。


 その少し前からカチュアへの態度は悪かったけれど、だがそれもいずれ終わるだろうと思われているのはウェンディがいて、彼女が次の相手になるのであれば、カチュアはもうお役御免になるからだ。


「今は優しいかもしれないけれど、カチュア様をお役御免にしたのならそこら辺からじわじわと殿下の態度が変わると思うのよね。カチュア様の時だって最初は優しかったのよ、殿下。

 そうしてある程度自分への想いを育ててから、殿下はじわじわとカチュア様を追い詰めていったの」


 単純にカチュアの事が嫌いになっただけで、次の相手である自分が同じ目に遭うとは思わない。

 思わないけれど、レディ・アンには何やら確信があるようだった。


「だって、カチュア様を捨てたとして、そうなると次は貴女でしょう?

 王妃となるのであれば、今の貴女にはとてもじゃないけれど務まらない。食事も睡眠時間も削って少しでも学ぶ時間を捻出しないと王妃として人前に出るなんてとてもじゃないけど無理よ。

 だからきっと、殿下はスパルタな学習をすることになる貴女の事、すぐに身につければこれくらい当然だと言って、できなければ扱き下ろすに決まってるわ。カチュア様の時だってそうだったもの。

 最初から王妃となるに相応しいだけの教育を幼い頃からやれる令嬢は他にそれなりにいたのに、あえてカチュア様を選んで、彼女に重圧がのしかかるようにして、そのくせ気に入らない事があればぼろくそに貶していたのよ」


 カチュア様だって最初から優秀ってわけじゃなかったのよ、と言われて。

 そんなまさか、と思ったけれど笑い飛ばせなかった。

 漫画の中なら最初からそういう存在だったと言い切れる。

 でも、ここでは。

 ウェンディだって最初から今の姿でポンと存在していたわけじゃない。この世界での母親から産まれたのだ。それはウェンディに限った話ではなく、この世界の人間は皆そう。

 だから、カチュアも最初から優秀な女というわけではなく、確かにおぎゃあとこの世に生を受けて、最初の内はきっとなんにもできなかったはずだ。


「それにカチュア様を捨てた後、次はないと思うのよ。そうなると貴女が王妃になるしかない。でも、王妃って見た目は華々しいけど実際はそうでもないもの。大変よね。

 殿下が優秀であればいいけれど、生憎と殿下はほら、学園での成績だって……言ってはなんだけど、パッとしないでしょう? そうなると、王妃になったらきっと間違いなく支えるのだっていっぱいよね。他の国の王妃様よりもきっと激務よ。

 それでできなかったら、できない貴女が悪いって言われるのよきっと。

 生まれが子爵家だっていうのも間違いなく言われるわ。これだから低位貴族の身分の娘は、マトモに教育を受けていたのか? とか。そんな相手を選んだ事を棚に上げて」

「そんな事……」


 ない、とは言い切れなかった。


 昔王子がカチュアを望んだから、彼女は婚約者になってしまった。

 伯爵家の娘が王子の婚約者に選ばれるなど、普通は滅多にない。

 公爵家や侯爵家に年齢が釣り合う娘がいるのであれば、まずはそちらから選ばれる。

 たまたま同年代の娘がいない時期だった、とか、他にもいくつかの事情があって、というのなら伯爵家から選ばれるのはおかしくはない。


 けれども他に丁度いい家柄の娘がいたのに王子がカチュアを選んだから。



 カチュアがディランから受けていた心無い言葉が、ふと脳裏によぎる。

 優秀であることを鼻にかけて婚約者を立てるという事をしないのか、だとか。

 あの時はウェンディも王子を押しのけてでしゃばるから、なんて思っていたけど。


 もし、自分がディランの婚約者になったなら、王妃となって彼を支えるのは自分だ。

 その時に支えられるような力がなければ、ただの飾りではないのだぞ、王妃というものは。なんて言う姿が簡単に想像できてしまった。

 けれど、ウェンディがとても努力して彼を支えられるだけの実力を身につけたとしても。

 そうしたら、今度はやはりカチュアのように男を立てることをしない可愛げのない女だ、とでも言われるのだろうか。


 最悪仕事を丸投げされるかもしれない。

 そうして仕事に追われて綺麗に着飾る暇もないような状況で、もしディランが他の女を愛人にするような事になれば。目の前で愛人を溺愛して、自分を扱き下ろす。

 そんなまさか、とは言い切れなかった。

 カチュアが婚約者に選ばれた経緯を聞かされた今、絶対にないなんて言えなかった。


 あえて身分が低い相手を選んだのだ。


 そして自分の身分だって……

 王妃になってからやっぱりいらない、と捨てられるような事になれば流石に問題と面倒が起きるのはわかる。だから、もし結婚して王妃になったならそう簡単に捨てられる事はない。

 けれど、それって逆に言えば、ずっと彼に縛り続けられるという事になってしまうのでは?

 そうして逃げ場なんてないのをいいことに、ディランが自分を扱き下ろしてボロクソに扱うとなれば。


 えっ、ヤダ。そんな未来のために私王子と恋をしたわけじゃないのに……と思ってしまったのである。


 ウェンディの前世は、取り立てて目立つような何かがあったわけでもない。波乱万丈な人生をテレビで扱われるような、そんなドラマティックな人生は送ってこなかった。

 けれど、恋愛関係に関しては他の人も体験してそうないざこざがあったりはしたのだ。


 リアルでの人間関係に疲れ果てて、その結果二次元に走ったのを思い出す。


 前世なら、お別れしましょう、で簡単に話はついた。拗れる事があっても弁護士や友人たちを味方につけて、最悪物理的に距離をとってしまえばどうにかなった。


 けれどこの世界では……?


 王家に嫁ぐとなれば気軽に離婚なんてできるはずもない。国にとっても恥となりそうな外聞の悪さだ。だからこそ、不仲になったとして簡単に解放されることはないだろう。

 となると、自分はお城のどこかに閉じ込められて仕事だけを押し付けられるのかもしれない。いや、生かされているならまだいい。

 病気という事にして毒でも盛られたら……? 殺されて、しまったら……?


 ディランの行動のあれこれを今更のように思い返すと、それくらいやりそうだなと思えてしまう。


 ディランに愛されているなら多少周囲の人間の態度が悪くても我慢できた。乗り越えられると思っている。だが、そのディランからも見放されてしまえば自分の周囲は味方もいない状況になるわけで。


 ゾッとした。


 今まで自分はなんて危ない状態にあったのだろう、と今更のように実感した。


 カチュア様はもし婚約破棄されても、マトモな結婚相手がいなくてもあれだけ優秀なのだ。

 最悪国から追い出されても他の国で女官として身を立てるだとか、働き口を探せばどうにかなりそうではある。ウェンディからするといけすかない女であったはずだけど、いざとなったら一人でも生きていけるだろう気がする。対する自分はどうだ。


 彼女ほど優秀でもないし、これから先優秀であることを望まれるとしても、周囲が認めるレベルに到達するまでに果たしてどれくらいかかる事か……

 彼女は仮に放り出されても一人で生きていけるかもしれないけれど、自分はどうだろうか。

 仮に身分を剥奪されて平民として生きていけ、と言われたら、まぁそれくらいならどうにかなるかもしれない。けれど、生きていくのでやっとだと思う。


 衣食住をきっちり自力でどうにかするまでには、相当な時間がかかるだろう。

 そうして身の回りを落ち着かせる頃には、きっともう若くもない。


「あ……」


 何を言うつもりで声を出したのか、ウェンディにもわからなかった。

 ただ、このまま王子と結ばれたとしても、次は自分がカチュアと同じような目に遭うのだとしか思えないし、しかも結婚してからなら間違いなく逃げ場もない。カチュアと違って自分は更に待ち受けている地獄の度合いが高いのだと思われる。


 今こうして学園にいる間だって、一部のご令嬢たちからのウェンディに対する扱いは良いとは言えない。でも、王子様が。

 ディランがいたから、それくらいの事は乗り越えられると思っていた。


 だがそのディランが自分に見向きもしなくなって、ただただ虐げて良い存在なのだと言わんばかりに玩具扱いをするようになったなら?

 その時一体誰がウェンディを助けてくれるのだろう。


 ……今まで淑女としてのアレコレを口煩く言ってきたご令嬢?

 いいや、きっと彼女たちはその頃には「それみたことか」となるだけに違いない。そうなる前にさっさと対処するべきだった、と言うのが目に見える。

 では、王子の側近たち?

 いいや、彼らもウェンディに憐れみをおぼえたとして、助けてまではくれないだろう。


 では、ウェンディの友人?


 いいや、彼女の友人など身分も高いわけではない。王子に――それこそ将来的に王になった時点で直接会えるような事はない。下手なことをすれば逆に自分のみならず一族郎党危ない目に遭うかもしれない、となれば。

 そうまでしてウェンディを助けてあげようなんて思う相手はいないに違いなかった。

 だって、自分がその立場だったら間違いなく助けないもの。

 何があっても絶対この人なら助けてくれる、そう思えるだけの人間はウェンディの身近にはいなかった。


 詰んでる!

 どう考えても詰んでるっ!!


 考えれば考える程未来に希望が持てない。



 すっかりと顔を青ざめさせてガタガタと震え始めたウェンディを、彼女が内心レディ・アンと呼んでいたご令嬢は「あらまぁ」なんて言いそうな顔で眺めていた。


 すっかり騙されちゃって。

 とは口に出さない。


 王子に加虐趣味があるなんていうのは嘘だ。

 いや、実際どうかはわからない、が正しい。


 けれどカチュアに関しては幼い頃王子が自ら結婚相手にと望んだのは事実だし、結果カチュアが優秀であれと求められたのも事実。

 そしてどうにか優秀さを認められるほどになったころ、王子が勝手に劣等感拗らせて彼女に冷たくするようになったのも事実。


 だが、それは決して彼女を甚振るのが楽しいから、というのではなく、純粋に自分より優れている事が気に入らないだけだろうと思われる。

 もしディランが本当に加虐体質で弱者を甚振るのが楽しくて仕方がない、というような人間であったなら、今頃被害者はもっといるはずなのだ。


 好きという気持ちは確かにあった。

 けれどそれがいつの間にか捻じれて、ああなってしまった。


 周囲からすればそうとしか言えない。

 いっそ、自分よりもカチュアの方が圧倒的に優秀であると素直に認めてしまえば楽になれるだろうはずなのに、けれど王子として生まれ育ったが故のプライドがそれを許さなかった。そういう意味では難儀な性質である。同情は、できないけれど。


 そうしてきっと、恐らくではあるけれど。

 王子はかつてのような純粋に好きという気持ちだけを向けることが許されていた時を懐かしんだのではないだろうか。しがらみなど何もなさそうな相手――ウェンディだ――と遭遇し、そしてかつてのカチュアを彼女の中に見たのではないだろうか。

 まぁ要するに今のウェンディは幼子みたいに出来がよろしくないという事なのだが――

 言い方をもう少し取り繕うならば愛玩動物扱いだろうか。


 けれどもウェンディは人間で、完全な愛玩動物足りえない。自我がある以上、それを抑制してまで王子の寵愛を得るべく動けるわけでもないし、どこかには自分の欲や願いが行動や言葉ににじみ出る。

 そうでなくとも、人語を解さない愛玩動物なら人間が勝手に動物側の気持ちを想像して都合よく解釈するけれど、人間はそうじゃない。下手に言葉を使えばそれが思いもよらぬ誤解を招いて泥沼になる事もある。


 ディランとカチュアの仲が拗れたのは王子のコンプレックスからだろう。

 そして、かつてのまだ仲睦まじかった頃のカチュアをウェンディの中に見たディランが、かつてのカチュアにしていたような愛情をウェンディに注いだ。


 だがそうやって、カチュアが排除された後、ウェンディが次のカチュアとなるのは言うまでもない。ウェンディもまたカチュアのように優秀になればやはりディランは不満を抱くだろう。

 けれど、優秀でなかったとして、その場合王となった自分に足りぬ王妃の分を補う事となり負担が増えれば――それもそれで不満を持つのはわかりきっている。


 そうでなくとも今までディランは父親に甘やかされてきたのだから。

 甘やかされる側で満足している相手が、自分の意思ならともかく周囲からそれとなく圧迫された状態で誰かを甘やかす側に回れば内心で不満を持つのは想像に容易い。


 噂としてそれとなくほのめかしたけれど、ウェンディはその言葉を全て、何もかもを信じてしまった。


 まぁ、可能性としては高そうだもの、とレディ・アンは思う。

 別に愛を囁いた相手を後々甚振るために今こうして外面の良さを発揮しているわけではないと思うが、既に前例としてカチュアの存在があるのだ。

 カチュアがもっと高位の身分であったなら、ウェンディもそこまで真に受けなかったかもしれない。

 けれどカチュアは伯爵令嬢で、ウェンディは子爵令嬢だ。

 何かの折に爵位が上がるような事になれば、ウェンディだって伯爵令嬢を名乗る事ができるわけで。

 勿論そんな簡単な話ではない。功績が必要だし、功績があっても必ずしも身分が上がるわけでもない。


 だが、子爵令嬢から見た侯爵令嬢や公爵令嬢は手の届かない相手かもしれないが、伯爵令嬢はそうでもない気がするので。


 今、周囲からも婚約者に蔑ろにされていると密かに嘲られているらしきカチュア。

 優秀さは本人が望んだわけでもなく、そうならなければならなかった、という周囲の状況。

 けれど必ずしも報われるわけではないという現状。


 そういったものが、自分にも降りかかるかもしれないとウェンディが考えるには充分だった。

 もっと、ウェンディとカチュアの立場がかけ離れたものであったなら、ウェンディもカチュアの現状を自分で重ねて想像などしなかった――できなかった――かもしれない。

 けれども微妙に重なる部分があったが故に。


 実際ディラン王子が加虐趣味でもないのに、カチュアの冷遇具合が信憑性を持たせてしまったのである。


(まぁ、自業自得よね、誰の、とは言わないけど)


 と内心で思う。

 カチュアの友人である令嬢の一人、ウェンディ曰くのレディ・アンは最早ディランがどうなろうとも知った事ではなかったし、ウェンディに関しても同じくだ。


 ディランがもっときちんとカチュアと向き合っていたならば。

 優秀さを持たねば彼の隣にいる事が難しかったというのもあった事を理解しただろう。

 カチュアだって最初の頃はきっと、王子の事は一方的に嫌っていたわけではなかったはずだ。

 ただ、あまりにも恐れ多いというのもあっただろうし、当時はまだディランの能力が平凡極まりないというのがわかる前だったから。

 周囲のやっかみもたっぷりあった。レディ・アンも一時期カチュアにやっかみを抱いていた一人だ。今はそうではないけれど。


 けれど、幼い頃は素直に好意を伝えていたディランに、カチュアだってそれじゃあ頑張ろう、と思う部分があったのは間違いない。たとえそれを本人が認めなくとも。

 人は嫌いな人間のために努力をしようとは思わないのだから。

 仮に努力をしても、心にやる気がなければ身につくものはそう多くない。


 ディランの隣に立つために、カチュアは必死に努力をして――結果、ディランがその努力を台無しにした。


 手のひらを返すような態度になったディランに、カチュアだっていつまでも情を持ち続けるはずもない。


 ウェンディという次の後釜になりそうな相手がいるのなら猶更だ。



 ウェンディもウェンディである。

 いくら見た目だけなら文句なしの王子に言い寄られたとはいえ、婚約者がいるのだ。

 目に見えて浮かれていちゃいちゃしなければ、いざという時助けてあげようと思う令嬢だっていたはずなのに。

 王子に見初められて将来は王妃様! なんて浮かれた結果、彼女は味方になってくれたかもしれない相手のことごとくをとり逃したのだ。

 今ウェンディのお友達だと言っている相手の大半は、彼女が王妃になったなら彼女の友人であるという事を利用しようと考えている者ばかりだ。

 もしウェンディに何かあったとして、そうなれば真っ先に見捨てるだろう。


 正直これだけでももう充分なのではないか? とレディ・アンは思ったけれど、カチュアがダメ押しにもしウェンディと話す機会があるなら言っておいて欲しいと言われたセリフをふと口に出す。


「大変よね、このままじゃ王宮で一生飼い殺しにされて、愛人の産んだ子を自分の子として発表されて。そうして最後はやってもいない罪をきせられて断罪されるんだから。

 悲劇のヒロインも楽じゃないわね。私はモブで良かったわ」


「え……あんた、もしかして」


「あぁ、原作についてそこまで詳しくないから聞かれても困るわ。大まかにしか憶えてないもの。

 ただ、逃げるタイミングはもうそろそろ決めないとなくすわよ」


「……ごめんなさい、用事を思い出したわ」


 真っ青な顔のまま、ウェンディは席を立つ。食事もまだ終わらせていないというのに、半分以上残ったままトレイを持ってそそくさと立ち去っていく。



 近くで様子を窺っていた他の令嬢たちに向けて、レディ・アンはわかりやすく肩をすくめてみせた。


「こんなにうまくいくとは思わなかったわ」

「まぁ、自分を物語のヒロインだと思い込むような事を言っていた方ですから」

「詳しくと食い下がられなくて良かったですね」

「そうね、カチュア様に言われた事はともかく、自分で適当な事を言うわけにもいかないもの。ぼろが出なくて良かったわ」



 前に忠告をした時に、自分はヒロインなのだから、なんて言っていたウェンディをカチュアはこう評した。


「あの人はね、きっと何か、自分が過去に読んだことのある物語の世界に迷い込んだと思い込んでいるの。まぁ確かに、身分の低い女と王子様が何かの拍子に出会って恋に落ちる、なんて市井の娯楽小説にもありますから、そう思い込んだとしても可笑しくはないわ。

 きっと彼女の頭の中は、このままいけば王子と結ばれてハッピーエンドだと疑っていない。自分が思い描くストーリーがそうだから。


 でも、もし他の。知ってるはずの作品に似た別のストーリーがこの世界なのだ、と思わせたなら。

 幸せになれるはずのヒロインである自分が、実はそうじゃなかった、となれば。

 どうなるかしら? このままだと不幸になる。そうなったら、話の流れに身をゆだねるかしら? 不幸になるのがわかっているのに? 不幸になった後でまた幸せになれる未来があるかもしれない。でも、不幸なままで終わる悲しい作品のヒロインとなっていた、と思わせたなら?


 そうなれば、彼女はきっと困難に立ち向かうよりも逃げ出すことを選ぶと思うの」


 カチュアの言葉は、最初令嬢たちにはさっぱりだったけれど。


 でも、もし彼女が自分を物語の中のヒロインだと思い込んでいるのだとすれば、今までの失礼な態度も納得できた。物語の中だと思い込んでいるから、自分が主役だから、そう簡単に罰するような事になるはずがない。そう思っているのだろう、と言われれば、今までいくら忠告しても受け流されていたのも納得である。


 そして、今まで忠告をしていた令嬢たちの存在を、自分より身分のある存在だと思わずストーリーに無縁なキャラだとするのなら、今までの言葉が聞き入れられなかったのも納得できてしまった。


 今まではなんて失礼な娘だろうと思っていた。貴族としているはずなのに、貴族の常識が通用しないウェンディに未知の生き物を見るような目を向けた令嬢たちもいたけれど。


 だがカチュアがかみ砕いて説明してくれたそれらを聞けば、なんだかすとんと腑に落ちたのである。


「もし、不幸な展開を変えようとしたのなら?」

 そう問いかけた令嬢に、カチュアは「ないわ」と即答した。

 本来ならば、不幸になるとわかっているのなら。そんな未来に抗おうとするはずだ。

 だがそれは、どういう風に不幸になるかをわかっているからこそである。


 ウェンディが知っている内容と異なる不幸が待ち受けていると知ったとして、彼女はその先の未来を知らないままだ。教えてくれる誰かがいない限り。

 そしてそれを知っているらしき相手が、今まで失礼な態度をとっていた令嬢である、となれば。

 そんな相手が今更ウェンディに優しくこれから先の未来の事を教えてくれるはずもない。

 むしろ間近で物語を堪能できるなんて、楽しみにしているわ。なんて言えば。それだけで令嬢が味方になってくれないと悟るだろう。



 知っている原作の通りに事を運ぼうとして、実際そうなれば確かにウェンディは幸せになれたのかもしれない。けれど、原作通りに動かなくたって、幸せになれる道は他にもあったはずだ。原作通りに動いた事で王子の寵愛を得る事はできるかもしれないが、それ以外を敵に回した時点でどうしようもない。


 いずれ王妃となるつもりなら、尚更他の人との交流は疎かにするべきではなかった。

 ウェンディが想像したように、カチュアのようにこれから先王妃としての地獄のレッスンが待っているとなったとして、ガワをどうにかできたとしても王妃として国の淑女たちを纏め上げるのは無理だろう。そうなれば待ち受けているのはただのお飾りという、惨めなポジションだ。



 王子が加虐趣味で、そしてその近くにいるウェンディは次なる王子の玩具である被虐体質の女、という噂が流れた事でもうウェンディが知る原作とは離れただろう。そして他の作品の可能性を実際は転生なんてしていないけれど、さも同じ転生者ですよとばかりの態度だった令嬢から告げられて。

 どうにか不幸を回避したい、と思ったのは間違いない。

 誰だってわざわざわかりきった不幸な人生を歩みたいとは思わないのだから。


 だが、どうすれば輝かしくもない未来を回避できるかがわからないのであれば。


 今までのウェンディの言動から、彼女は短絡的に結論を出すだろうとカチュアは判断したのだ。

 もし彼女にもうちょっと思慮深い面があったのなら、まずディランに事実確認をするべきだった。万が一を懸念したのもわかる。もし王子は愛する人を甚振る趣味がおありで? という質問にいい笑顔で「あぁ勿論!」と返されたらウェンディの逃げ場がなくなることもわかるのだ。


 けれど、真正面から馬鹿みたいに確認せずとも、探りをいれるくらいは可能なはずだった。

 それをしないで、周囲の噂に踊らされたからこそ。


 ウェンディが次にとる行動はカチュアからするととてもわかりやすいものだった。



 このまま自分の知らない原作展開に進むのであれば、いっそのこと原作の舞台から逃げ出せばいい。

 そうすれば、自分は最早ヒロインですらないただの娘だ。


 原作の強制力がどこまで働くかはわからないが、今まで学園で王子との恋愛をしていた以上、学園は確実に舞台の一つで。もしその先、王子と結婚した後が第二部なんて事になれば、次の舞台は城だろう。

 そう考えれば、国内にいるよりは国を出た方が安全だ――と、ウェンディはきっと思ったのだろう。



 用事を思い出した、なんて言って立ち去ったウェンディが午後の授業を全て欠席した事で、カチュアの予想は当たったのだと令嬢たちも確信した。早退したウェンディは、きっと急いで荷物を纏めてこの国を出るのだろう。

 貴族である身分を捨てて。


 生まれたときから貴族令嬢だった娘がいきなり平民になったとして、本来ならば生きてなどいけないだろうけれど。

 ウェンディには前世の記憶があるのだ。ならば案外異国の地でたくましく生きていけるのかもしれない。


 まぁ、悪い奴に騙されて今よりもっと不幸になる可能性もあるのだけれど。


 そこは、ウェンディの頑張り次第だとカチュアは思っている。



 ウェンディが失踪した後、カチュアは今までディランに蔑ろにされ続けていた証拠を携え両親に婚約の解消を訴えた。そもそも幼い頃に無理矢理王子が望んでおきながら、今のこの扱いはあまりにもあんまりだ。

 たとえ王家としても、このような事が許されるとカチュアの不遇を放置し続けるのであれば、他の貴族たちとていつ理不尽な目に遭うかもわからない。

 そんな疑心暗鬼に駆られるような事になれば、国内の結束は揺らぎ他国の見え透いた扇動に引っかかって内乱を起こしたり、戦争になった時に力を合わせて敵に立ち向かう事もなく負ける可能性すら出てくるのだ。


 たかが婚約者を冷遇しただけで、そうまで大ごとになるなどとは思わないかもしれないが、可能性はゼロではない。何より、このままディランと結婚など冗談ではないとカチュアは思っているし、そうなればカチュアこそが、敵国にこの国を滅ぼすためのきっかけを与えるかもしれないのだ。


 ウェンディが失踪したのだって、今までのカチュアに向けた態度と同じだから、きっとそのうち次は愛人を囲って貴女が今のカチュア様と同じようになるのかもしれないわ、なんていう噂が原因ではあるけれど。

 そんな噂をそもそも発生させるような事になったのは誰が原因なのか、とくれば王子である。


 カチュアだけならのみならず、ウェンディまでもが毒牙にかかり、いつかそのうち他の身分の低い令嬢や、果ては平民の何の力もない抵抗もできそうにない女が餌食になるかもしれないのだ。王という権力を用いて。

 そういった危機感を持たせるには充分なくらい、噂は広まってしまっていた。


 故に、今更ディランが自分にそんな趣味はない、と言ったところで。

 全面的に信用される事などなかった。

 何故って自分から無理矢理婚約者に望んだ相手を冷遇している事実が存在しているので。

 前例がなければただの噂として切り捨てる事ができた。

 だが、あえて身分が低めの令嬢を無理に婚約者の座に据えて、その上で冷遇しているという事実がある以上。しかもカチュアは婚約者であり続ける事など望んでいないので、カチュアが気に食わなくなったなら婚約を解消すれば済むだけの話なのに、婚約者に縛り付けたまま他の女と仲睦まじい姿を見せていたのだ。


 加虐趣味があろうとなかろうと、王子の人望やら人徳といったものは既に地を這うスレスレまで落ちているのである。



 結局のところ、ディランの態度があまりに不誠実であり、尚且つ広まった噂はまだ国外に流れていないとはいえ国内の貴族たちの王子への心証はとても悪い。

 これを次なる王にするとなれば、国内の不和は広まりその隙を他国に突かれる可能性も生じてくる。



 国王からすれば側妃は正妃以上に愛する存在だったからこそ、彼女の忘れ形見と言える王子を甘やかしに甘やかした結果と言ってしまえばそれまでだ。

 現状正妃が実権を握っているといっても過言ではない中で、それでもどうにか次の王は第一王子にと国王なりに画策していたけれど。


 甘やかしている息子とはいえ、結果として国を滅ぼすような事になるのは国王とて望んではいない。

 目の一切笑っていない王妃に微笑まれて、国王は苦渋の決断を下したのである。


 即ち――第一王子ディランの王位継承権の剥奪である。

 廃嫡まではいかなかった。まぁ大勢の前で婚約破棄だー! なんて茶番を繰り広げた挙句無実の罪でカチュアを国外追放だとか、処刑だとかしていたなら廃嫡もしくは幽閉からの毒杯コースもありえたかもしれないが、精々が浮気していただけなので。命まで奪うのは流石にやりすぎであるのは言うまでもない。


 第二王子が即位するとなれば、まだ数年時間はかかるが、国内の貴族たちの結束が弱まる事は回避できたので多少の困難はどうとでもなるだろう。


 結局ディランはというと、国内に留めておいてもどうしようもないとの事で、国からやや離れた、そこまで親しいわけでもない国に、今後の友好を願って、という形でもって婿に出されることが決まった。

 お相手はそちらの国で嫁入りを果たす事のないまま結婚適齢期を過ぎてしまった第二王女だ。既に臣籍降下するつもりで爵位を持ってはいるものの、やはり社交の場に出るには伴侶がいた方がいいという事もあって、親子ほど年の離れたディランを婿に迎える事をあっさりと引き受けてくれた。

 結婚よりも仕事が楽しいタイプらしく、また能力的には優秀な女性であるのでディランのコンプレックスが刺激されるかもしれないが、あちらの第二王女からすれば反抗期の息子みたいなものだろう。

 頭脳も明晰であるが女性ながらに武人としても中々に凄いらしいので、まぁ、可愛がってくれるんじゃなかろうか。



 ちなみに。


 その婿入りした先の国で。


 かつての恋人によく似た女性を見かけたような気がしたが、ディランにそれを確かめる術はなかった。


 貴族であることを捨て、どうにか生きていけそうな国へ逃げたウェンディもまた、ある日ディランに似た青年を見かけたのだけれど。

 それが本当に本人だったかどうかを確認しようとまでは思わなかった。

 それどころかむしろ他人の空似であれ……! と強く願う始末。


 似ているだけならまだいいが、もし本人だったならウェンディを虐げるためだけに追いかけてきたのかと思うかもしれないし、そうなると恐怖でご飯はおかわりできないし、怖すぎて夜しか眠れない。

 故郷を捨てて逃げたウェンディは既に名前も捨てて今は別の名を名乗っているので、ウェンディという名前に反応さえしなければきっと大丈夫……! と自らに言い聞かせ。


 ディランのそっくりさんとまたもや遭遇する可能性を考えて、改めて他の国へ旅立ったのだけれど。

 彼女が安息の地を見つけることができるかどうかは……それはまた別の話である。



 結局のところ、今回の件で無事幸せになれそうなのは、望まぬ婚約をなかった事にできてそこそこの自由を得ることができたカチュアくらいだろうか。

 一人勝ち、と言っていいかは微妙だが。


 ともあれとある日、自室でカチュアが快哉を叫んだのは――


 勝利の雄たけびとして一度だけならばと見逃されたのである。なおその後調子に乗ってベッドの上で飛び跳ねていた事に関しては侍従長からのお叱りを受けた。

 カチュアの淑女としての道のりは、きっと思っているよりも遠い。

 一番の被害者は王子に無理矢理婚約者にされたカチュアかなと思うんだけど次の被害者ってウェンディの両親だと思っている。突然失踪した娘。まぁ娘はきっと新天地で元気にやってる。とはいえそれは何の救いにもならない気がする。まぁ家の中でもウェンディが私はヒロインなのよおーっほっほっほ、とかバカみたいな事してたらいなくなってホッとされてそうだけど。


 ちなみにウェンディとディラン、お互い似た人を見かけて本人か!? という部分は本当にニアミスしてたのか、はたまたよく似た別人だったのかは特に決めていません。想像にまるなげ。


 次回短編予告

 活動報告 下に行くほど記憶にねぇ にある通り

 多分お前の人生は詰んでるけどまぁ頑張れ

 っていうタイトルの話が投稿されるよ。

 どんな話かって? タイトル通りの普通のお話だよ(´・ω・`)

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― 新着の感想 ―
[良い点] むしろ原作小説はどういう流れになったんだ
[良い点] なにげに次回予告がいつも楽しみだったりします
[良い点] ヒロイン、めっちゃ図太いwww しっかり食うしちゃんと寝てんじゃねえかwww カチュアもまあ勝鬨を上げても仕方無いわな。そこは見逃して上げてよ。 [一言] 普通の人間は人生詰んでると言い…
感想一覧
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