ステッキ
「まずはステッキが必要なんだけど、何でもいいから用意してもらえる?それっぽいの買ってもいいし、手作りでもステッキの形じゃなくてもいいし」
「何でも…」
「聖別するから次までに持ってきてね」
「聖別って?」
「ユーザー設定みたいなもの」
「物によって効果が変わったりする?」
「いい質問。もちろん素材とか形状ですごく変わるよ」
そう言われると悩むなぁ。
「ちなみにハル様は?」
「カッター」
「わぁ、ハル様っぽい!すてき!」
「ちなみに、他の人に触られると使えなくなるから気をつけてね」
「えっ!?」
「え?何?」
「あ、ううん、なんでもない。じゃあ鏡にしようかなあ」
ポーチから柄付きの小さい手鏡を取り出した。
コスメのノベルティでもらったやつ。色々反射できそうだし。
そのやりとりを見ていたエバさんが会話に入ってくる。
「アナタ、やっぱりりちゃちゃんよね?」
「あっ、そうです!」
「りちゃちゃん?」
あめるが疑問系で返す。
「小学生がお弁当作ってみた動画の子よ!」
あたしは小学生の頃から『りちゃ』って名前で動画をネットにあげている。
当時流行りにのって投稿を始めたら、意外と人気が出て今まで続いてる。
最初は筆箱の中身紹介とか百均メイクとか日常系の動画をupしてたけど、お弁当動画がバズってからはほぼお料理チャンネルと化している。
「なんか撮影慣れしてると思った〜!でも魔法少女の方がいいのね?」
「ハル様みたいな魔法少女になりたいんです」
最近はハル様に近付きたい一心だったけど、魔法少女っていう職業について調べてるうちに、自分の魔法で誰かを助けられたら素敵だなって思うようになった。
あたしがハル様に二度も助けてもらったように。
「あら〜、がんばってちょうだい」
「はいっ」