撮影
結論から言うと、ヤバい撮影ではなかった。
小道具のステッキを渡されて、別室の撮影スタジオでそれらしいポーズを撮って、やたら褒められて、画像チェックして終了。
ここまで魔法要素、全くナシ。
撮影が終わって事務所に戻ると、テーブルの上でビスケットを齧っているあめるをつかまえた。
「さっきの何」
あめるは円らな瞳をパチパチさせた。
「今日の撮影は雑誌に載せる広告だよ」
「そうじゃなくて!あたしモデルになったわけじゃないんだけど!」
「え?」
「求人には魔法少女って書いてあったよ!」
「魔法少女になりたいの?」
「なりたい!」
本当は魔法少女自体にはなりたいかと言われるとそこまででもない。だけどハル様にもっと近付くには魔法少女になるしかなかった。
「君多分、魔法すっっっごく弱い」
「えっ」
そんな力を込めて言われると少し傷付く。
「試しにあのカップを浮かせてみてよ」
あめるはビスケットのお供にしていたであろう、牛乳の入ったミニチュアのカップを指す。
「どうやって?」
「念じる」
「それで?」
「浮く」
「説明が雑!」
アニメや映画の魔法少女たちはみんな呪文を唱えてステッキをかざしていたから、多分そんな感じでやるのかな?とさっき撮影で使ったステッキをマグカップに向け呪文を唱えた。
「うぃんがーで「あ、そういう著作権に引っ掛かるのはちょっと」
「…………。浮け」
勿論マグカップはびくともしない。
「はいやってでできるわけないじゃん!」
ちょっと恥ずかしくなった私はあめるに八つ当たりする。
「ハルさんは初めての魔法で悪魔を召喚したよ」
さすがハル様、かっこいいすき。
「こういうのって才能とかいるの?」
「想いの強さがいる」
「想い?」
「死ぬ気になれば何でも出来るって言うでしょう?ならば自殺志願者こそが適性があるのではっていうのがうちの会社の考え方」
ああ、だから応募資格がアレなのか。
「じゃあ、ハル様は……」
ハル様の左手首の傷を思い出した。
「うーん、確かに魔法少女足りてないしなぁ…。モデル兼、って事なら…」
「ほんと?」
「メインはモデルだけど、それでもいいなら」
「いいよ!」
世の中ゴリ押しすれば何とかなるものだなあ。