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数日後の午前10時、またこの古いビルの前に立っていた。


煉瓦造りのビルは蔦で覆い隠され、社名のアの部分しか見えなかった。

ここにハル様がいるんだ。

求人には業務時間は23時頃〜って書いてあったけど、今日はやたら早い時間を指定されたから、会えないかもしれない。

だけど万が一のために手鏡でさっと前髪をチェックして、ドキドキしながらエレベーターのボタンを押した。


事前に渡されていたIDカードをかざすと、扉が開いた。

レトロな共用部とは裏腹に、室内はごく普通のオフィスだった。

パソコンの乗ったスチールのデスクが幾つかと、壁には行動予定のホワイトボード。

時間が早いからなのか、まだ誰もいない。


「おはようございまーす」

念のため挨拶してみると、

「おはよー」

と返事が返ってきた。

思ったより低い位置から返事が聞こえたのにびっくりして足元を見ると、小さい動物がこちらを見上げていた。

「ば……く?」

手のひらサイズの獏のような生き物で、首の右側に白いお花の模様が入っている。

動物が喋ってる!と驚きかけたけど、魔法少女の会社なんだから、喋るマスコットキャラ的な生き物くらいいるよね、と自己完結した。

「はい、マネージャーのあめるです」

桐城(きりしろ)リタです。よろしくお願いします」

思わず撫でたくなるのを我慢して、自己紹介をした。

「じゃあさっそく、この衣装に着替えてくれる?」

4本指の小さな手がハンガーラックにかかった、フリルがふんだんに入ったピンクのワンピースを指した。

「着替え…」

自分で着替えるの?

魔法少女ってもっと、呪文唱えながら魔法のステッキとか使ってキラキラエフェクトに包まれて変身するものだと思っていたんだけど。

まだ魔法使えないからかな、ともやもやした気分で更衣室の中、ワンピースに袖を通した。


着替えが終わってさっきの部屋に戻ると、白地にパステルピンクの花柄シャツを着た男せ……どちらの性別か曖昧な方が待ち構えていた。

「きゃ〜カワイイ!アナタが新人ちゃんね!サイズ大丈夫よね?」

こういう人、アンドロなんとかっていうんだっけ。

「あ、ハイ」

「私エバっていうの。よろしくね。じゃっ、さっそくお化粧しましょ!かわいく仕上げるわよー!」

エバさんはあたしの両肩に手を乗せると、メイクルームへ連行した。

なんか、あたし騙されてる?この後ヤバい撮影とか始まる?


だけどここで逃げ出すわけにはいかなかった。早くハル様に会わなきゃ。

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