1話 そうだ!! ゲームを始めよう
その場の勢いで書き始めました。
高校生の夏休みは大学生の夏休みと違い約2ヶ月もある。
普段できない長期の休暇にどこかへ旅に行く者。
長期の休みだからこそバイト三昧をして後を楽に過ごす者。
将来を見据えての勉強を行う者。
長い夏休みを特に何もせずにダラダラ自堕落生活を過ごす者
勿体無いと過密スケジュールを決めている者
などそれぞれの夏休みライフを計画している。
「暇だわ……」
大学のカフェテラスで1人空を眺めていた私こと姫里光俐。
毎年夏は母の仕事を手伝っていたが今年の夏は暇人スタートとなりました。というのも母からは「今年は良いからひーちゃんは夏を謳歌しなさい」と昨日の夜に突然電話してきたのだ。今年も手伝いがあると思っていたため仲の良い友人からの誘いも全て断ってしまった。
(前もっていってほしかったよ……)
「なに一人ボケーっとしているのよ。光俐」
声がする方に顔を向けると高校からの親友の森川朱実が立っていた。
「聞いてよ、朱実。母さんったら今年の夏は自由にして良いって昨日の夜にいってきたんだよ」
「珍しいね。光俐の母さんがそんなこと言うなんて」
朱実は私の母さんが何をしているから知っているので酷く驚いていた。
「突然、自由をもらったけど何をしようかと悩んでいたと……」
「予定を何一つ決めていないから……どうしようかなって」
初めは何か挑戦しようと考えていたよ。初バイトだったり旅に出たりって……
「母さんからバイトしなくても良いってお金を支給されるし何故か私のパスポートをもって海外にいってしまったんだよ。酷くない?」
「国内旅行は?」
「小さい頃から国内を行ったり来たりさせられたから見るものが……」
「自慢ですか? さすが光俐さまは違いますな〜」
「……ごめんごめん。朱実、助けてください」
「あぁ!!」
何かを閃いた朱実はスマホで調べ物を行なっていた。
「これやらない?」
朱実が私に見せたのはゲームのホームページだった。
「アスセーナ・コンタクト?」
「私が今やっているVRMMOのゲーム」
アスセーナ・コンタクトは去年の夏に正式サービスを開始したフルダイブ型のVRMMOのゲーム。まだ1年も満たないのにゲーム業界を席巻しているらしい。ゲーム方面の知識があまりない私に今日まで頻繁にCMで出ているなって位の認識だった。
「……ゲームか」
暇つぶしには丁度いいかもしれない。
最後にゲーム機を触ったのはいつでしかって位に私は『アスセーナ・コンタクト』ゲームを始めるのだった。
朱実とゲームショップでVR機器と『アスセーナ・コンタクト』を購入して自宅で簡単な設定を行う。朱実は今日は用事があると一緒にプレイは出来なかったが最初からお守りがいると面白くないと思ったので良かった。
朱実からは注意深くゲームを始める前にしておくことを教えてもらい実行してからVRゴーグルを装着しベットに横になる。
「真っ白な空間……不具合?」
早々、真っ白な空間を経験することもなく慌てていたが直ぐに私の前に半透明の画面が表示された。
それと同時に頭上から女性の声が聞こえる。合成で作られた女性の声の案内のもとキャラクター作成を行う。
「……名前か」
朱実からは絶対に本名は入力しないようにって言われた。考えた末に……
「リリー、と」
姫里光俐の里は『り』と読まれるし『姫』や『光』は他の誰かが使ってようだから選ばず俐と繋げただけの安直な名前。
その後も声の案内に従いキャラクター作成を続ける。
「まぁ、こんなものかな〜」
最後の職業を選択して完成した自分の相棒ともいえるキャラクターを見つめる。
現実と同じ体型にしてみた。顔は小さく碧眼の瞳、ほっそり痩せていて腕も足もモデル体型の薄い紫色が入った銀髪のロングヘアー。
なんだかんだで今までずっと一緒に生きていた体型だったので愛着があるから現実を同じ体型にするのにえらく時間がかかってしまった。髪色は黒髪じゃあ味気ないと思い1つ上にあった銀髪を選択しそこから少し変更して完了。巨乳はやりすぎたと思ったがどうにかなるでしょうと思いそのままにした。
不備がないことを確認して私は『リリー』として『アスセーナ・コンタクト』の世界を飛び込んだ。
リリー 女性
種族:人間
Lv:1
HP:10
MP:10
SP:10
STR:1
AGI:1
VIT:1
DEX:1
LUK:1
職業:【 】
装備
頭:
体:【初心者の服 女】
右手:
左手:
腰:【初心者のスカート 女】
足:【初心者の靴】
◇
そこは広大な室内。真っ赤な絨毯が敷かれている。絨毯の先には一際目立つ玉座が置かれていた。玉座に座っているのは黒髪ロングの女性。170cmと女性の中ではかなり高身長で全ての人間を魅了してしまう程の翠の眼、モデル顔負けのプロモーション。人間では到底、追いつけないであろう美貌を有していた。彼女の美しさには誰もが目を奪われても仕方がないと感じてしまう。
「退屈ね……」
黒髪ロングの女性——クレアは玉座から立ち、数段下へハイヒールを鳴らしながら降りていく。
彼女の前には10人ばかりの人間が瀕死の状態で倒れていた。
「……なんで勝てないんだよ」
こっちはユニークモンスターである『常闇のクレア』を討伐するために仲間たちと寝る間を惜しんでレベリングやスキル、装備を整えたのに……『クレア』は怯むどころか何かしましたかって位の顔で酷く退屈な表情をしていた。
『クレア』は前に手のひらを出す。
突如をして出現した禍々しい剣。赤黒い色の炎を宿している【冥王の赫】を地面に突き刺す。
『クレア』以外は火だるまになる。『アスセーナ・コンタクト』には痛覚システムはないが、自分が業火の中にいる現実を目の当たりして恐怖の叫びを上げた。
「うぁああああああ」
10人ばかりのプレイヤーは赤黒い炎に包まれながらポリゴン状に散り、消滅した。
全てのプレイヤーがいなくなった数秒に元の豪華絢爛の室内へ戻る。始めから戦闘はなかったと言わんばかりに……そして『クレア』は再び、玉座に座り頬杖しながらため息をする。
「……暇ね……」