戦いと悲しみと
~第六章~戦いと悲しみと
「デル。手を出さないでね。必殺!【4竜】(しりゅう)」
杖から赤、青、黄色、緑の竜が出てくる。ボクは自然の竜を4つ一気に召喚した。これは暴走時にしか出ない技だ。
「きれいな竜ですね。私も負けませんよ!《聖剣突》(せいけんづき)」
ナイトは剣を平行にして、四回ついた。一発づつ竜に当たったが、それぞれ二つに分かれただけだ。
「……。効果なしですか。」
ナイトに襲い掛かっている竜をよけながら言った。ボクは正気を失っているからナイトが詠唱をしていたのに気がつかなかった。
「ルイ!危ない!」
僕が我に帰ったとき、ナイトの剣から竜巻が出てきた。その竜巻は竜を倒し、ボクに向かってきた。
「さようなら。ルイ。」
ナイトが薄く笑った瞬間、ボクの力は完全に解放され、目の色は赤と緑になった。ボクはとっさにバリアーを張り、攻撃から身を守った。
「なに!まだ力があっただと!?」
ボクは、杖を弓に変形させ、
「ディの仇!【矢の雨】」
ボクは空高くジャンプし、下に向けて矢を放った。ナイトは剣でそれらを斬ろうとしたが、そう簡単には切れない。矢は魔力で作ったんだ。魔力で作ったものは魔力で作られたものしか切れない。が、
「何で切れるの!?」
ナイトは矢を全て斬ってしまった。ボクは着地し、弓を剣に変えて、ナイトに斬りかかった。
「この剣も魔力で作りました。ルイは剣も扱えるんですねぇ……。が、貴方の本業は魔法使い!私は 騎士!剣の扱いは誰にも負けませんよ!?」
ガキィン。剣の音が響く。ボクの本業は魔法使いだけど暴走すると剣も扱える。そのままボクらは切りあいをしていた。お互い小さな傷が増えてきたころナイトがジャンプをし、高いところから切りかかってきた。
「死ね!【人魚の一撃】!」
「嫌だね。」
ナイトは上から人魚のように落ちてきた。ボクはナイトの剣を頭の上で受け止めた。そのまま、
「【ツバメ返し】!」
ナイトに深い一撃を与えた。そのままナイトは倒れ込み、僕は剣を杖に戻して、
「これで最後だ!【虹の光】(にじのひかり)」
杖から七色の光線が出てきてナイトに直撃した。
パキン……
静かに石の壊れる音が聞こえた。
「バ…カな…。この…私…が負け…る…など…。だが…わた…くし…のうし…ろに……。」
そのままナイトは砂になり、朽ちていった。意味深な言葉を残して。ボクら動く人形は石を破壊されると砂になって、跡形も無く消え去ってしまう。
「ディ!ディは!?」
ボクはディとデルの元に駆け寄った。ボクがディを抱えると、ディが片目を開けて、
「ルイ…。お前…さ…今…憎……し…み…でここ…ろが…いっ…ぱい…だろ…?そのに…くしみ…を…け…せ…。じゃな…いと…俺は…安…心…して行け…ねぇ…。だ…から…憎し…み…でここ…ろを…いっぱい…にす…るな…。」
ボクは目に涙をためながら、
「嫌だ……。死んじゃぁいやだよぉ……。」
「ディ、死なないで…!」
ボク等は願った。でもその思いも虚しく、
「……。泣く…なよ…。みれ…んがで…きる…だ…ろ…?じゃあ…な…。生まれ…かえっ…た…ら…ま…た…いっ…緒に…たた…か…おう…な…?」
これがディの最後の言葉だった。ディの体は砂になり、ボクの手から離れていった……。
「いやだ!!逝くな!ボクを残さないで!ボクはどうしたらいいの?ねぇ?離れないでよ!ディ!」
「うっうっ。ディのばかぁ…。先逝くなよ。僕等だけじゃぁ、面白くないんだよぉ……。」
ボクは叫んだ。ディの名前を何度も呼びながら……。
それからというもの。ボクは抜け殻のようになり、デルは傍にずっといてくれた。
「なぁ、元気出せよ…。ディはあの世で心配しているよ?」
「そ…だね…。」
あれから欠片はデルが採ってきてくれて、四つになった。だけど、僕はそれを受け取る気持ちにならなかった。ディが死んでからディの石はボクが持っていて、自分の石はこれだといって受け取らなかった。
「なぁ、気持ちが沈んでいるところ悪いけど、何でおまえは石が壊れてもそのままでいるの?」
ボクはゆっくりとデルのほうを向いて、
「……。ボクの石とボクの体が特別だから……。」
「そうか。」
デルは静かに下を向いた。僕らはナイトの書いた台本ど通りになってしまった。ボクらはこれからどうなるんだろう……。このまま朽ちていくのか?それとも、台本から外れられるのか?どちらにしてもボクらはナイトの手によって悲しみと絶望のどん底に落とされた。