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旦那ちゃんと嫁ちゃん

旦那ちゃんと嫁ちゃんのカ・ン・ペ・キ

作者: 山本大介

 この世には完璧なことなどないのだ。


 これはほぼガチリアルなお話である。

 なので、今回はフィクションじゃないかも~(笑)。

 

 コロナ前のある日、旦那ちゃんと嫁ちゃんは旅行に出かけた。

 旦那ちゃんは仕事が終って、家に帰り、嫁ちゃんと共に夕刻過ぎに出発する。

 窓を開け、心地よい夕風を浴びながら、嫁ちゃんの軽を旦那ちゃんが運転し、沿岸道を快適に走る。

「風が俺を呼んでるぜっ!」

「ご機嫌ね~旦那ちゃん」

「おうよ」

 車は有明沿岸道路を降りて、佐賀嬉野方面へ。

 今回はホテル予約もしてない、アポなし突撃旅(笑)。

 道中で夕食をとりつつ、向かっていると21時を過ぎていた。


「小腹空いたなあ~」

「え、さっき食べたでしょ」

「デザートは別腹」

「さよけ」

「・・・デザートは・・・」

「しつこい」

 旦那ちゃんは、ちょうどいいデイリーヤマザキのコンビニを見つけた。

「じゃ、そこ停まるよ」

「どうぞ」

 旦那ちゃんは、食事のあとのデザートという見事な算段に、自ら酔いしれていた。

 この数秒後、恐ろしいことが起こることも知らずに・・・。

 彼は、コンビニに行くべく、左にハンドルを切った。満面の笑みを浮かべながら、

「カ・ン・ぺ・キ」

 そう言った瞬間、

 パーン!

 耳をつんざく破裂音。

 固まる旦那ちゃん嫁ちゃん。

「あ」

「あ」

 スロープを完璧に行ったつもり(笑)で、左のタイヤが縁石にのりあげパンクしたのだった。

「完璧じゃないっ!」

「御免」

 幸い、コンビニ周りには他のお客はいなかった。

「どうすんの?」

 と、嫁ちゃん。

「JAFに連絡だっ!」

 旦那ちゃんは、スマホを取り出しピポパ。

 事の仔細を伝え、ヘルプを求め、スマホを切る。

「どうだって?」

「到着まで1時間かかるって」

「え~」

 ソーバットブルーな旦那ちゃんに、呆れる嫁ちゃん。

 実に気まずい。

 まずは気を取り直しコンビニでスイーツを買う旦那ちゃん。

 ふたりで食べながらも、

「カ・ン・ぺ・キ」

 時折、名言を蒸し返す嫁ちゃん。

「言わないでっ!」

 と、返す旦那ちゃん。

 

 待つこと1時間、JAFが到着。

 素早い仕事で、スペアタイヤに取り換えてくれた。

「お代はいくらですか」

 旦那ちゃんが、恐る恐る尋ねる。

「ああ、JAF会員様ですね。無料でいいですよ」

「マジですか」

「ええ、ただしスペアのタイヤですから早い内に、新しいのと交換してください」

「わっかりました。ありがとうございます!」

「では」

 と、颯爽に去って行くJAF様に感謝する。


 翌日、ふたりは旅もそこそに、昼過ぎにカーショップに来ていた。

 昨日の今日だし・・・今回は早目に帰ろうということになったのだ。

 見積りをお願いする。

「タイヤ代だすよ」と旦那ちゃん。

「りょうかーい」と嫁ちゃん。

「タイヤ1本ン万円です。2本替えるとこのくらいですね」

(高いよ。高い。じゃ、1本に済ませよ・・・)

 旦那ちゃんは必死に1本だけ交換をアピールする。

「2本で」

 嫁ちゃん、堂々宣言。

(うえーん)

 旦那ちゃんは天をあおいだ。

(オデのおこづかいが・・・)

 ちゃん、ちゃん。



 珍しく・・・シモがありません。

 なんか、ごめんなさい(笑)。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 珍道中、お得意ですよね!! 私には同行してくれる人もいないので羨ましいです。 嬉野という名前がもう素敵で、由布院や指宿もそうですが、九州、いいですよね~ 台風のほう、何ともなかったですか…
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