新たな生活
「まぁ、そうなのね! とてもいいことだと思うわ」
そう微笑んでくれた女子生徒に微笑み返す。
イエスマンな地味子でいるよりもよほどいいとは、私もそう思う。
「ありがとうございます。では、案内していただけますか?」
「もちろんよ」
私は前世で培った、天気の話から政治まで、差し障りのない会話を彼女と楽しみながら、教室まで歩いた。
一年三組につくと、やはりというか、みんなに注目される。視線がざくざくとつきささるのを感じた。すると、ここまでを案内してくれた、スミィ・マーク伯爵令嬢が私を紹介してくれた。
「みなさま、ユメミール様よ」
「えっ?」
「嘘だろ」
「昨日までとは雰囲気が違いすぎるわ」
そうだろう、そうだろう。想定内すぎる反応に大して驚きもせず、にこやかに挨拶をする。
「みなさま、ごきげんよう」
ふっ、決まった!
我ながら完璧な笑みを浮かべられたと実感する。男子生徒のみならず、女子生徒までが、息を呑む音まで聞こえた。
これで、私の「ドキドキ☆生き残れるかな学園生活~ヤンデレを添えて~」も楽勝に楽しめるに違いない。
私は、心のなかでガッツポーズをしながら、優雅に空いている席に座った。まだ、座席は決まっていないらしい、とはスミィから聞いていた。
スミィもそれに続き、私のとなりに座った。
この感じは、先ほど繰り広げた私の会話術が問題なかったということだろう。……良かった。
ほっと息をはきつつ――ただ一組を目指すなら、彼女とはすぐにお別れかもしれないなんて、失礼なことを思っているうちに、三組の担任がやってきた。
「出席とるぞー」
三組なだけあって、適度に緩く、適度に厳しそうな教師だな。
ぼんやりとそんなことを思って他の生徒の名前を聞き流していると、最後の私の名前が呼ばれた。
「ユメコ・ユメミール」
「はい」
「……は?」
教師がそのような顔をするのはいかがとは思うが、気持ちはわかる。私がユメコ本人でなければ、そのような顔をしていただろう。
「はい、先生」
「あ、ああ。本当に、本人なのな」
私の色彩――紫髪に金の瞳をしているのは、この学園では私だけだ――ということに気づいたようだ。
大きく頷いてみせると、担任は咳払いをして、出席確認を終えた。
その後は、年間スケジュールやこのクラスはクラスといっても実力制度なので変わる可能性はいつでもあることなどを告げ、今日は解散となった。
つまりはもう放課後だ。放課後のアリバイ作りは誰に協力してもらおうか。部活にはいるのもいいかもしれない、と考えていると。
スミィに話しかけられた。
「あの、ユメミール様、もしよろしければ……」
「ユメコ!」
スパァン、と音がなるほど開けられた扉を見る。声で予想はついていたものの、一応視線を寄越した。
「アルフレッド様……」
薄情婚約者ランキングがあるとしたら栄えあるナンバーワンにかがやくであろう、アルフレッドが虚ろな瞳でたっていた。
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