好奇の視線
──学園に着いた。登校中の視線もそれなりに気になったが、学園ではその比ではない視線にさらされた。
「えっ、あんな方、この学園にいたかしら……?」
「……さぁ? 少なくとも私は、見たことがないわ」
「でも、あの色彩には見覚えが……」
などなど。様々な小鳥の囀りのような声が聞こえる。私はそれに気づかない振りをして、困ったように、眉を下げた。
「あら、どうしましょう……」
そして、うろうろと視線をさまよわせる。すると、囀ずっていたうちの一人が、話しかけてきた。
「どうなさったの?」
この空気の中、話しかけてきただけあって、親切そうな顔をしている。
「私は新入生なのですが、教室の場所がわからなくて……」
困ってしまいました、と言いつつ縋るような視線を向ける。
「わたしも新入生よ、なん組ですの?」
「1年3組です」
この学園は、1~5までクラスがわかれており、その入学生のクラス分けは、学力と魔力を考慮した実力順となっている。つまり、1組は学力と魔力ともに優れたエリートクラスというわけだ。
私のクラスはというと、そこそこクラス。
しかし本当は、私ことユメコは、1組相当の実力を持っている。
これもアルフレッドに「目立ちすぎると危ないよ。それに、大人しいユメコ、好きだな」などという趣味の押し付けに喜んで賛同した結果だった。
クラスは、三ヶ月に一度行われる魔法と勉強のテストでその都度変わる。最初に3組からスタートと出遅れてしまったが、次のテストでは、すぐに1組に上がれるように頑張ろう。
「奇遇ね、わたしも1年3組なの。一緒に行きましょう」
女子生徒に案内され、そのままに付き従う。これで、初日の目撃情報とアリバイは固まった。アメリアは1年1組なので、このまま接触せずに、教室に行けば、今日の登校ミッションは成功となる。
「ところで、あなた、お名前は?」
「申し遅れました、ユメコ・ユメミールです」
私が、名を名乗ると、その女子生徒はもちろん、周囲の生徒は固まった。
私はそれに気づかない振りをして、首をかしげる。
「どうされましたか?」
「え──。あなた、本当にユメミール様なの? ほら、以前と雰囲気がかなり異なるから……」
ああ! とようやく理由に思い至ったように大きくうなずいて微笑んだ。
「はい。以前の私はなんというか──大人しかったので、学園入学を機に、変わってみようと思いまして」
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