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思い出した、前世の記憶

 ずっと前から楽しみにしていた魔法学園の入学式で、私こと、ユメコ・ユメミールは気づいた。この世界は、乙女ゲームの世界であると。


 そして、最悪なことにユメコ・ユメミールは乙女ゲームの悪役である。


 校長先生が先ほどからすばらしいお話をなさっているが、残念なことに全く頭に入ってこない。

 私は、生前、数多くの乙女ゲームをこなしてきた。しかしなんで、よりにもよって、乙女ゲーム『君に僕を』の悪役に生まれ変わってしまったのかと、頭が痛くなる。


 『君に僕を』のストーリーは、とても平凡な乙女ゲームである。平民の身でありながら、魔力があることがわかった少女アメリアは、魔法学園に入学することとなる。そして、持ち前の明るさで数々の攻略対象キャラクターたちと、愛を育む……というストーリーである。



 しかし、ここで一つ問題がある。それは、攻略対象キャラクターたちが全員もれなくヤンデレというやつだということだ。ユメコ・ユメミールは、自分の婚約者をアメリアにとられたことが許せず――誰のルートに入ってもユメコの婚約者はアメリアに惚れるのだ――夢見る夢子という名前とは裏腹に結構陰湿ないじめを行う。その結果、攻略対象キャラクターたちから、殺される。火あぶり、斬首、水死、銃殺……ありとあらゆる方法で殺されるバージョンがある。――ちなみに私は、ユメコの殺されるレパートリーを埋めるのに、まる半年かかった。


 当然のことながら、私は、死にたくない。


 この学園に入学してしまったことは、一先ず仕方ないとして。

 とにかく、攻略対象キャラクターたちとは、関わらずに過ごすのだ。


 乙女ゲームの知識を使って、彼らを攻略しようなどとは思わない。彼らはヤンデレなだけあって、皆心に深い闇を抱えている。攻略は心優しいを通り越して、セラピストの域に達しているアメリアだから、できるのだ。


 私は、なるべく息をひそめて目立たないように生きよう。


 ◇◇◇


 ――だというのに。


「すぅ……」

 幸せそうな寝息を立てて目の前の人物は眠っている。

 人を図書室に呼び出しておいて、寝るとは何事か、と思わなくもないが、彼は元々こういう人物であるので、気にしてもしかたない。


「起きてください、アルフレッド様」

 何度か、体をゆすると、小さくのびをして男子生徒――アルフレッドは、目覚めた。


「おはよう、ユメコ」

「おはようございます、それでご用件と言うのは?」

 さっさと用件と言うものを済ませてもらい、この場から立ち去りたい。私がそう言うと、アルフレッドは、赤の目を瞬かせた。

「用事……? 特にないよ、ただユメコと話したかっただけ」


 ああ、この言葉に今までのようにキュンとできたらどれほどよかっただろう。しかし、アルフレッドは私の婚約者である。つまり、どんなときでもヒロインのアメリアに惚れる薄情者である。そのことを思い出した私は、もうアルフレッドの言うことに何でも従うイエスマンなユメコではない。


「では、入学手続き等もありますし、失礼いたしますね」

 そろそろ退散しないと、ヒロインとアルフレッドの出会いイベントが迫っている。そして、そのイベントでアルフレッドは、アメリアに惚れるのだ。


 アルフレッドの制止を振り切って、図書室を出ると、アメリアとすれ違った。


 これで、婚約破棄を言い渡されるのも時間の問題だろう。せいぜいそれまで、目立たぬように、けれどそれなりに学園生活を謳歌しよう。



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[一言] ヤンデレだいすきです♡ 続き楽しみに待ってます(*^^*)
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