美しい蛇女は体のうろこを消したがる
ここは異世界の美容クリニック。口コミでいろんな種族の患者様がいらっしゃいます。
「パーティーのメンバーなら足りているよ。それに君のその顔のうろこはなんだい?」
冒険者ギルドの入り口の前の噴水広場ではパーティーのメンバーが足りない者たちが、パーティーメンバー募集のためたむろしている。
私の顔は半分が蛇のうろこで覆われているため気味が悪いといってなかなか仲間ができなかった。体もフード付きの黒いローブで隠しているのでより不気味だと思われる。これはしっぽを隠しているせいだ。
「このままじゃ、パーティーに入るだけで疲れてしまう」
噴水の縁に座ってうなだれていると目の前を九尾の狐の女の子が通り過ぎていく。バスケットにはパンを入れているので買い物の帰りだろう。
海賊を一人で全滅させたという噂の九尾の狐だろうか?
「ねえ君。君はパーティーのメンバーを募集していないのかい」
「わっちはいまダンテの美容クリニックの助手だから冒険はちていない」
「そっかぁ。それは残念だ。強そうなのにね」
「わっちは強いぞ。この前もな。。。」
言いかけて九尾の女の子はあわてて口を手で塞いだ。
「どうしたの? ダンテに街が吹き飛ぶから戦うなと言われている」
「街が吹き飛ぶだって、君すごいね」
「チコだよ。お姉さんはどうして一人なの?」
「チコ。私はこの顔だろ。不気味だから誰もパーティーに入れてくれないのさ」
「ふーん。ダンテに言えばかっこよくちてくれるよ」
「そうなの? ダンテの所に連れていってくれないかな」
「いいよ。今から帰るところだから、一緒に行こう」
チコの後をついて歩いていく。私は半分人間で半分蛇のハーフに生まれた。そのため体や顔も半分蛇のうろこに覆われている。そのせいで刀などは硬い皮膚で跳ね返して傷が付きにくい。だが人間に嫌われる風貌のようだ。
しばらく歩くと小高い丘が見えてきてお城のような診療所が見えた。
「立派な建物だね」
「立派だ。立派だ」
チコが走って飛んで喜びを現している。褒めると体一杯で表現するみたいだ。子供らしくてかわいい。
「おかえり。チコ。お使いご苦労様。そちらの方は?」
「私は冒険者のネイクといいます。この顔ですから、なかなか冒険者のパーティーに入れず公園で途方に暮れていたのをチコに誘われてこちらに来ました」
「なるほど。今日は予約も入っていないので相談に乗れますよ」
ダンテという男は灰色の肌で白い髪から尖った耳が突き出ている。この風貌はダークエルフだ。魔法使いだろうか。
「診察室の中へどうぞ」
診察室に入ると黒いローブを脱いで椅子に座った。
「体半分を蛇のうろこで覆われているから不気味でしょう」
「いいえ。ネイク様はとても美しい顔と体をしておられますよ」
私のことを美しいいだなんて言う人は初めてだ。お世辞で言っている顔でもない。本気で私のことを美しいと思っているのか?
「本当ですか?」
「ええ。本当です。人間は心が狭いですから。慣れないのは苦手なんですよ」
「蛇のうろこをなくすことはできますか?」
「なくす必要はありませんよ。私に考えがあります。顔も体も美しいですからそのままで良いですよ」
「このままで?」
「奥の施術室へどうぞ」
施術台に仰向けに寝るとダンテは目の部分を紫の布で覆った。目線はどこを見ているか分からない。全身を人に見せることはないので恥ずかしい。
ダンテの手がオレンジに光って顔と体の上を通過する。うつぶせになって全身に光を当てた。体に触らなくても施術できるようだ。
「全身鏡をご覧ください」
私の鱗の部分はメタリックな鏡面仕上げになってモダンなアーマーを着ているようになった。尻尾はスリムになって先端が可愛らしい剣が付いている。
「私の体ってこんなに美しかったのね」
「そうですよ。鱗ではなく鎧だと分かれば人間だって違和感を持ちませんよ」
胸の形やおなかや肩や腰の形に沿って流線型の鎧が張り付いている。女性らしさも感じられて鏡面の鎧で見られたくない部分は隠されている。
「黒いローブを着なくてもこの方が美しいわ」
施術室をでると帽子をかぶった貴婦人に褒められた。
「ダンテ。おはよう」
貴婦人がダンテの首に手を回して抱きつくとキスをした。なっ。なんてことを。人前で恥ずかしげもなく。見てるこっちが恥ずかしいわ。
「あっ。クリスタ! 起ちるのが遅すぎる。もう昼だよ」
チコが不快な顔をして貴婦人を見た。
「ごめんね。低血圧なの。というか血は流れてないのだけど。とにかく、体温が低いのよ」
ここに住んでいるということは、ダンテの奥様だろうか? 西の国では挨拶にキスするというし、きっと夫婦なのだろう。
「奥さま。初めまして。ネイクと申します。旦那様にはこのように美しくしていただきまして感謝の言葉もありません」
「まあ。奥様だなんて。ダンテは腕がいいのよ」
「おーーい! 奥様じゃないでちょーー!」
チコが顔を真っ赤にして怒っているところを見ると奥様ではないのだろうか?
「危ない! みんなこの中に入って!」
ダンテが結界のドームを作って、貴婦人が私の手を握ってドームの中に入れた。手が異常に冷たい。
ドカーーーン!
爆音とともにチコの周りにあるものすべてが吹き飛ぶ。診療所は跡形もなくなっていた。
「ふえええええ」
この九尾の力は相当なものだ。
「何回診療所を吹き飛ばせば気が住むんだ。修理費用は給料から引いておくからな」
ダンテが魔法で診療所を再現していくと新しい診療所が建ちあがっていく。ダンテも一流の魔法使いなのだろう。
冒険者ギルドの噴水の前に行くと声をかけられた。
「お姉さん強そうだね。ぼくらのパティ―に入らないか?」
「ああ、私も仲間を探していたところだ」
前と人間たちの反応が全く違う。黒いローブで体や顔を隠す必要もない。私の硬い皮膚を露出の激しい鎧だと思っているようだ。
ダンジョンに入って戦闘になっても、このメタルの皮膚はモンスターの爪や刀を通さない。私は先頭になってどんどんダンジョンの奥へと進んだ。
「ネイク。ぼくらのレベルじゃこの先は無理だ。引き返そう」
ダンジョンの奥に入りすぎた。私のレベルと彼らのレベルが違いすぎる。
「ごめん。つい。調子に乗った」
「いいんだ。君が強すぎるんだ」
私はAランクの冒険者にレベルアップしていた。もうすぐSランクが見えていたが、Aランクの揃ったパーティーなどそうそう見つからない。Sランクの難易度のダンジョンでクエストクリアするにはレベルの高いパーティーに入らなければいけない。
「なにか良い方法はないかなあ」
ダンテの顔が頭に浮かぶ。彼だけが昔の私を見て美しいと言った。しばらくぶりにダンテに会いたくなっていた。彼に相談してみよう。
異世界美容クリニックの診療所に行くと受付にチコがいた。
「ネイク。どうした?」
「ダンテに相談があって来たの」
「ダンテは奥で調べものをしている」
チコが奥の部屋に行くとダンテがエントランスホールに出てきた。
「ネイク様お久しぶりです」
「様をつけずにネイクと呼んでください」
「分かりましたネイク。今日はどうされました」
私が事情を話すと、ダンテは笑顔になって調子が良さそうだと喜んでくれた。
「ネイクの名前がもっと有名になれば、レベルの高い冒険者からお呼びがかかりますよ」
「そんなものなの?」
「人間は情報に弱いんです」
「そうですね。Sランクのクエストをクリアしましょうか」
「でもどうやって」
「チコと私とクリスタが一緒に行きますよ。全員レベルなしですからEランクですが、チコは実質トリプルSランクです」
ダンテの魔法の腕もおそらくSランク以上だと思うし、この貴婦人はダンテの愛人だろうからダンテ同等の実力者だろう。
「是非お願いします」
「分かりました。ではすぐ行きましょう。サイクロプスのところへ」
ダンテが言い終わると診療所のそとに羽根の生えた馬が二頭出現した。私はチコを前に乗せて、ダンテはクリスタを前に乗せて飛び上がる。チコが不満そうな顔をしてグチグチと文句を言っていた。
「わっちはダンテの方が良かった」
「まあ、そういうな」
クリスタが必要以上にダンテにべったりと寄り添うのでチコがやきもちを焼いているのが分かった。この子はダンテが好きなのね。
サイクロプスは一つ目の巨人でマグマの池のそばにある岩の山に住んでいる。Sランクのパーティーでも全滅することがある強者だ。
「クリスタ。氷の魔法をお願い」
クリスタが口から吹雪を出すとサイクロプスの体に巻き突いて下半身が凍った。チコがサイクロプスの肩に乗って手を切り落とす。チコの手が刀に変身している。
この子は本当に強い。
「ネイク! とどめをさせ」
両手を失ったサイクロプスをしとめるのは簡単だった。頭上から刀で切りかかると頭から二つに割れていく。サイクロプスの背中から二本の太い腕が伸びてきて私を握りつぶそうとしてくる。油断した。潰される。
「あぶない! ネイク」
ダンテが右手をつきだすと光の弾が飛んできてサイクロプスの手と体を砕いた。ダンテも上級冒険者レベルなのは間違いない。軽くサイクロプスを倒してしまう。この人たちはEランクなどではない。
「ありがとう。ダンテ。死ぬところだった」
街に戻ると冒険者ギルドにランクアップの申請をした。サイクロプスを倒したことでSランクの冒険者になった。チコはSランクの申請をしたが、ダンテとクリスタは申請しなかった。
「クリスタは雪の精霊だから登録は出来ないけど、チコは折角だからレベルの申請をしておこうか」
クリスタはどうも人間の類ではないらしく。ランクをつける存在ではないようだ。
「ダンテ様。ごきげんはいかがですか?」
ダンテに冒険者ギルドの支配人が近寄ってきてお辞儀をする。ダンテはなにも言わないがSランクに登録するまでもない高レベルのようだ。
「ダンテ。ありがとう。おかげでSランクのパーティーに入れそうだ」
私はサイクロプスを倒したメタルネイクとして最強の剣士だと言う噂が広まっていた。Sランクだけでなくあらゆるランクの冒険者からパーティーへの誘いが来るようになった。
「それは良かった。人間は評判で人を見るからね」
ダンテとチコとクリスタは診療所に歩いていくと地面が盛り上がって巨大な船が三人を乗せて空へ飛んでいった。
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