猫になりたい女
ここは異世界の美容クリニック。口コミでいろんな種族の患者様がいらっしゃいます。
「猫の耳としっぽをつけてもらえませんか?」
ぬいぐるみの耳としっぽをつけるコスプレは見るが、人間の女性に猫耳としっぽをリアルにつけてよいものだろうか。
「コスプレのパーツでは我慢できないんですか?」
「はい。耳としっぽでなれたら次は手に肉球をつけていきたいのです」
彼女は本気で猫の獣人になりたいようだ。
「普段の生活に支障は出ませんか?」
「私、ダンサーをしているのでほとんど影響はないです。むしろお客さんが増えてくれるかと思います」
「分かりました。チコ。施術室へ案内してください」
「こちらへどーぞ。施術台でうつぶせになってくだしゃい」
「あら、あなたしっぽが九本もあるのね。珍しいわ」
「九尾の狐だぞ。めったにいない」
「猫の獣人になるのが楽しみだわ」
「先生は腕がいい。期待していい」
「それでは耳から始めますね」
頭にオレンジの光を当てていくと人間の耳が茶色い髪の中に隠れて、猫の耳が飛び出してきた。お尻の付近に手をかざして青色の光を当てる。
色を変える必要はないのだが演出だ。光も本当は出さなくても形状変更の魔法は出来るのだが、施術室の壁が反射してオレンジや青になるほうが患者様も気分が盛り上がる。
「しっぽの方も完成しました。全身鏡で確認ください」
「まぁ、嬉しいわ。これで私も猫の獣人の仲間入りね」
「今回は見た目だけで猫の俊敏さまではないので気を付けてくださいね」
「私、ダンサーなの。お客様が増えるかしら」
「可愛くなったので、増えますよ」
「またクリニックに来たら、成功したと思ってね」
患者様が嬉しそうな顔をして帰っていく。
この患者様は必ず他の部分もいじりに来るだろう。異世界美容クリニックはとにかくリピート率が高い。一度いじり始めるとたいていの場合やめられなくなる。
「ダンテ。猫の早さになることもできるのか?」
「できるよ。今回は見た目だけ変えたけど、筋肉の付き方を変えるんだ」
「ふーん。わっちはしっぽを九本にしただけで強くなったな」
「そうだね。こんなことは初めてだよ」
猫の耳としっぽをつけた患者さんはしばらくして、又いらっしゃいました。
「お待ちしておりました。ミー様。今回はどのようなご要望でしょうか?」
「猫のような素早い動きがしたいの。それと手と足に肉球を付けたいわ」
「分かりました。施術室へどうぞ」
再度来られたということはミー様が成功されているということだろう。今回の施術をするとかなりスピードが上がってダンスのキレも良くなるだろう。さらにお客さんは増えて人気が出るだろうな。
「全体の筋肉の付き方を変えますから、うつぶせに寝てください」
「見た目も変わりますか?」
「見た目は肉球しか変わりません」
「それなら思った通りだわ」
手と足にオレンジの光を当てた後で全身にグリーンの光を当てる。
「もう仕上がっていますが、ゆっくり歩いてください。慣れるまでかなり違和感があります。少し慣れたら外の庭で走って確認ください」
ミー様が、おそるおそる施術台から降りる。徐々に普通の早さで歩くとドアを開けて外に出た。診療所のある丘の周りを走って回ると木の枝に飛び乗った。
「すごく体が軽いわ。猫って快適なのね」
枝の上で顔を手でこするしぐさをして見せた。木の上から飛んで地面に降りると足を高く上げてダンスをして見せた。
「キレキレだ」
チコがダンスを見て喜んだ。
「そうだね。美しくてスピードがあるダンスだ。人間では無理だね」
「素晴らしい体だわ。いままでできなかったダンスも出来そう」
「もっと人気が出そうですね」
ミー様が嬉しそうに頷いて見せた。
それから三ヵ月も経たないうちにミー様がクリニックに来ました。
「胸を少し大きくしてくびれを作りたいの。それと十頭身にしてください」
一度体をいじり始めると止まらなくなってしまうものです。
「施術台のほうで仰向けになってください」
患者様が裸で仰向けになるとチコがあまり良い顔をしない。私は目線を隠すために紫の布で目を覆っているので視線の先きは分からないのだが、私が患者様の体を見ていると思って嫉妬しているのだ。
施術しているのだから見えてはいるんだけどね。
手を胸とくびれ部分にかざして黄色い光を当てる。
「あまり大きすぎるとダンスがしづらいでしょうから、ほどほどで止めますね」
「はい」
全身鏡の前に立ってみてください。
手足が長くなって十頭身になった猫の獣人が見える。強調された胸とくびれは究極の美しさをもっていた。
「ああ、綺麗。先生ありがとう」
そう言ってミー様は鏡の前でくるりと回転して見せた。
「お美しいですよ」
「そうだ。先生。私、バーレスクのダンサーになったの。一度いらしてね。招待しますよ」
「それは素晴らしい。バーレスクのダンサーだなんて超一流ですね」
「私のダンスのキレを見て移籍のオファーがあったの」
「チコもダンスみたいでしょう」
「大人に変身すればは入れるよ。一緒にいこう」
大人に変身して真っ赤なドレスを着たチコと一緒にショークラブのドアの前まで行くと用心棒の虎がドアの前に立っていた。
震えるチコに肘をつきだして腕につかまるように促すと、しがみついて寄り添って来た。用心棒の虎がぎろりと睨みを利かせる。
「大丈夫だよ。私は強い魔法使いなのだから」
「ダンテは顔に布がないほうがかっこいいぞ」
布をしていた方が視線が見られなくてよかったかと思った。ステージに近いテーブル席に案内されると支配人らしき男が来た。
「ダンテ様。いらっしゃいませ。今度うちの若い子も是非先生のクリニックでお世話になりたいのでよろしくお願いします」
ミー様のキレのあるダンスを見てあこがれたダンサーがいる様子だ。支配人もミー様を気に入っているのだな。
「ありがとうございます。是非いらしてください。私の異世界美容クリニックは仕上がりが美しいですよ」
照明が暗くなるとダンスのプログラムが始まる。大勢のダンサーが踊った後に歌手が歌う。ステージ脇には生のバンドが演奏している。
ステージの中央にポールが設置されるととスポットライトの中にミー様がいた。ポールダンスが始まる。人間ではできない拘束の回転と十頭身の美しい体がしなる。
「ミー様綺麗でしゅ」
「そうだね。すごく美しい」
ステージからミー様が私を見つけて投げキッスとウインクをしてくれた。観客は自分に向けられたものと思って、歓声と拍手が起こる。
ダンスのショーが終わるとテーブルに食事が運ばれてきた。ミー様がテーブルに挨拶に来てくれた。
「先生。来てくれてありがとう。ステージから見えました」
「素晴らしいダンスですね。こんなにきれいなダンスは初めて見ました」
客席の後ろが騒がしくなっている。サングラスをしたワニの獣人が二人中に入ってくるのを虎の獣人が止めようとするのを殴り倒して中に入ってくる。
ワニの獣人たちが用心棒を倒すとミー様を見つけて私達のテーブルに向かってくる。
「あんたが評判のダンサーだな。見に来たよ。おい。おまえら。テーブルが空いてないからこの席からどけ」
「困ります。お客様の迷惑になります」
支配人がやってきてワニの獣人に注意するとワニに殴られそうになった。ワニのパンチが支配人の顔に中る寸前にチコが平手で止める。
「狐ごときが俺様のじゃまをするんじゃねえ」
言い終わるとすぐに真っ赤なドレスを着たチコのパンチが顔の横にめり込んだ。一人のワニが倒れるともう一人がチコに殴りかかる。
「てめえ、ふざけあがって」
チコの回り蹴りがワニの顔面を捕らえる。脚の間から九尾がふわりと見えた。失神したワニが地面に這いつくばる。
「地面に這いつくばってるのがお似合いだよ」
ワニを倒したチコに会場から拍手が起こる。
「九尾の狐だ」
「強いな九尾」
「なんと強い狐の獣人でしょう。用心棒に欲しい」
支配人が目を輝かせてチコをスカウトしてくる。
「チコは異世界美容クリニックの助手なので無理でしゅ」
「それは残念ですな」
「チコちゃん強いのね。びっくりしたわ」
ミー様がチコに抱きついてキスしてくる。チコが真っ赤になって硬くなった。
「ミー様のダンスはとても綺麗でチコはミー様みたいに美しくなりたいと思いまちた」
「私はプロのダンサーだからね。この体もプロのダンサーのための商売道具なの。チコちゃんと先生のおかげで今の私があるのよ」
チコと診療所の丘まで歩いて帰る。チコが腕にしがについてすりすりしてくる。体は大人の姿だから少し変な気分だ。
たまにはこういうのも悪くない。時々は街に出て食事もいいものだと思った。
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