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裏前編

 ことの始まりは、一年前。貴族が通う学園で、それは起こっていた。





「ティファニア・ローレル! お前はここに居るリィンを虐げたことが判明している! そんなお前には、俺の婚約者という立場は相応しくない! お前とは婚約破棄だ!!」



 それは、やはり学園の卒業パーティ。その中でも、ダンスが始まる前のこと。

 ティファニア・ローレルは、ユミルとはまた別の公爵家のご令嬢であり、第二王子、ライグの婚約者だった。長い赤髪に赤い瞳の一見気が強そうに見える美女。幼い頃からライグの婚約者であったティファニアは、突然のその宣言に眉を顰めながらもしっかりライグと向き合う。



「どういうこと、でしょうか? そちらのお方とは本日、初めてお会いするはずですが?」



 ライグの隣に連れて来られたリィンは、そんなティファニアの問いかけにブンブンと首を縦に振って同意を示す。



「とぼけるなっ! お前がリィンを虐げたことは分かりきっている!!」



 ただし、ライグにはそんなリィンの様子は見えておらず、肩を抱き寄せられるリィンは、ブルブル震えながらも、ブンブンと今度は首を横に振ってライグの言葉を否定する。ここまで見て、リィンがライグに取り入ろうとしたと考える者は居ないだろう。



「では、証拠はあるのでしょうか?」


「証拠? そんなもの、リィンの様子を見れば一目瞭然じゃないかっ!!」



 その瞬間、リィンは首を全速力で横にブンブンブンブンと振り、同時に会場に居た貴族達は悟る。『あぁ、アホだ。アホが居る』と。



「とにかく、お前とは婚約を破棄する!!」



 リィンの証言すらなく、断罪を敢行するライグに頭が痛いとばかりに小さくため息を吐いたティファニアは、それでも律儀に口を開く。



「王家の婚約破棄がどういうものか、知っておられるはずですが、よろしいのですか?」


「ふん、精霊の試練とやらだろう? そんなもの、あるわけがないっ! いや、もしあったとしても、お前の方に課せられるに決まっているではないかっ!! 問題などないっ!!」



 精霊の試練とは、王家を監視する精霊が、王族が婚約破棄した場合、有責者に対して試練を課すものだとされている。

 ただ、現在は精霊の存在すらも信じない者が居る有様で、第二王子も同じく、信じてはいなかった。王家の歴史の中で、精霊の試練を受け、悲惨な末路を辿ったとされる数名の王族が確認されているにもかかわらず……。



「…………承知しました。では、婚約破棄を受け入れます」



 自信満々に胸を張るライグへ、そうティファニアが宣言した直後、会場は白い光で塗り潰される。



『ほう、久方ぶりに、愚か者が出たようじゃのぉ? しかも、特上の愚か者が』



 聞こえてきたのは、老婆のように嗄れた声。呆れ混じりのそれは、会場の誰もが聞こえているものの、光が満ちた会場で、目を開けられる者は誰一人として存在しない。

 パニックに陥りながらも、誰一人として、足が地面に縫い付けられたかのように、一歩も動くことはできなかった。



『ふむ、愚か者はその男のみのようじゃの。では、試練を与えようではないか』


「な、何だと!?」



 そうして、正体不明の声の主、この国の守護をしているとされる精霊様によって、ライグは、強力な呪いとも取れる試練を受けることとなった。

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