第5話 はじめの一歩
これからは12時か18時頃に投稿しようと思ってます。
今日は少し遅れましたが。
誰もが知っている『聖騎士物語』という本がある。
この本は今から数百年前の実話を基にした作品で、絵本、演劇、吟歌など、さまざまな形で人々に親しまれている。
『聖騎士物語』の内容は簡単にいうと、
「聖騎士アスタがクロノスから神託を受けて反逆者を討伐する。その後もあらゆる困難を乗り越えてクロノスに尽くした彼はやがて、クロノスの騎士として迎えられる」
と言った感じだ。
この反逆者はおそらく、クロノスの真実に気づいた者たちだと思う。聖騎士アスタがどんな人物かは分からないが、大々的にクロノスの悪行を広めようとしたら、世界中を敵に回してしまうかもしれない。
なら、どうするか。
俺が選んだのは、信頼のおける人だけを集めて対クロノスの組織を作ることだ。
アルテナは最後に神聖スキルを集めろと言っていた。
そもそも、俺が1人でクロノスを倒せるかと言われれば、不可能だろう。
ならば味方を集めるしかない。
それから数年かけて、各国を回り仲間を集めた。
その結果、今ではクロノスとも戦えると思えるだけの味方を集めることができたと思う。
ただ、誤算だったのは、俺に対して感謝どころか崇拝や恋心まで持つものが出たことだ。
味方を集めようと思った時、困っている人、助けを求めている人を救うことから始めた。
恩を売り、こちらのいうことに耳を貸しやすくするという打算でのことだ。
だから、俺に対して好意を持ってくれてる人たちには正直に話した。
「俺は恩を売るために困っていたお前たちに目をつけただけだ。世界を救うためなら、もし、お前たちが危機に陥っても見捨てる」と。
もちろん、半分は脅しも入っていたが、それくらいの覚悟でいることは伝わっただろう。
それでも、みんな俺の元に残って共にクロノスと戦う決意をしてくれた。
あの時は見捨てるかもしれないと言ったが、今となっては大切な仲間だ。
或いは世界を守ることと天秤にかけるくらいには。
ともかく、嬉しい誤算ではあったが、かなりの数の仲間ができた。
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「ルドラ様!勇者が我ら、アルテナを潰すと宣言されたそうです!」
魔王討伐から少し経ち、凱旋パーティーが行われている最中のことだった。
アルテナの諜報員であるグレイがルドラに報告に来た。
「詳しく頼む」
「はっ!まず、魔王様の人形の討伐を終えて帰ってきた勇者が城で国王との会談をしている時、我らアルテナが魔王の討伐を拒否したことが納得いかない様子を見せておりました。そして、そのあとの凱旋パーティーの最中の演説で勇者がアルテナを潰すと宣言しました」
報告を聞いてルドラは考え込み、周りの幹部たちは騒めきだす。
「私たちを潰すなんていい度胸ね。あんなやつ私がぶっ飛ばしてやるわよ!」
「まぁ落ち着け。そのうちこうなるのは分かっていたことだ」
ルドラが皆を安心させる。
そして、真剣な表情で命令を下す。
「グレイ、アルテナの組織員を全てアイテールに退避させろ」
「かしこまりましたっ!!」
グレイにとってもルドラは大恩ある相手だ。
直々に命令を受けただけで感極まっている。
だが、気を取り直してすぐに組織員の避難の準備に移った。
それを見てルドラたちも準備を始めたのだった。