グレヴィル
ここから2章です。
12話 グレヴィル
実力主義の魔国では、王家の血を引く者の中で最も力のある者が王位に就く。
グレヴィルは王家の血を引く名家の出身で、幼い頃から世代別の武闘大会では無敗を誇り、全世代が揃う総合大会では10歳にして予選を突破するなど実力を発揮し、家族から大いに期待を受けていた。
状況が変わったのはグレヴィルが12歳の時だった。
グレヴィルはその年の世代別の武闘大会で6度目の優勝を飾り、総合大会ではベスト32入りを果たした。
12歳でベスト32入りを果たすというのは当時の最年少記録を塗り替える偉業であったが、そのことが話題となることはなかった。
なぜなら、グレヴィルの記録を超える成績を出した者が現れたからだ。
後に魔王となるエルシアだった。
エルシアは8歳でこの大会に初出場し、圧倒的な力を見せて予選を突破すると、そのまま優勝してしまったのだ。
これ以降、総合大会で好成績をだしてもエルシアに上を行かれ、世代別で優勝してもエルシアがいないからだと囁かれ‥‥他にも色々あったが、グレヴィルのプライドを傷つけるには十分すぎる屈辱だった。
12歳に初めて覚えた劣等感は次第に恨みへと変わり、同時に魔王位への執着も増していった。
そして今、恨んでいたエルシアは亡くなり、魔王位は手の届くところにある。
何もせずとも次期魔王はグレヴィルで確定だろう。
だが、このまま魔王位を継承したならば、またエルシアがいなくなったからだと言われるかもしれない。
そうならないために実績が必要だ。
エルシアの敵討ちとして王国を滅ぼす。それこそが一番簡単で、そしてこれ以上ない実績になるだろう。
グレヴィルにとってエルシアの敵討ちなどどうでもいいが、扇動するのにもってこいだ。
障害になりうるのはシルヴィアだが、それくらいなんとかしてみせる。
長い時間をかけて煮詰められていた野望はもはや止めることはできないほどに膨れ上がっていた。
補足
グレヴィルが魔王位に執着した理由は、エルシアが居なかった過去の栄光の時期に魔王になることを周囲から期待されていたことに起因している。




