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頑張ったらご褒美があるのです

 ダニールの話が本当なら、候補者三名全てが僕たちと何らかの関わりのある人物だということになる。

 何か作為的なものを感じるけど、考えても仕方ないので残りの騎士達の相手でもしようかな。


 ハンスに声をかけて準備をする。残りは十三人か。これはちょっと本気をだそうかな。


 いつの間にか訓練場の周りには他の近衛騎士達が集まっており、僕たちを見ている。よく見ると、ユーリ以外の僕の専属騎士もいる。

 

 僕がじっと見ていることに気づいた二人がこちらに近づいてきた。


「どーも、皇子。何か面白いことやってますね。あなたが訓練場で騎士の相手をするって久しぶりじゃないですか」

「皇子。皇子は手加減が上手ではないのですから、ほどほどにしてくださいね。本気でやったらダメですからね」


 面白がってニヤニヤしているのがシラハ。相手の心配をしているようでナチュラルに煽っているのがリック。


 というかさ、止めないの?君たちの主がケガしてもいいの?一応僕皇子様なんだけど。


 僕がそう言うと、何言ってんのコイツって顔でみんなが見てくる。それやめてくれない?ダニールも。


「大丈夫ですよ。ケガをしても死なない限りは私の回復術で治せますから」

 そう言って模造短剣を渡してくるユーリ。


 さすがにここまで言われたら主として情けない姿は見せれないね。


「残り十三人。すべてを叩きのめしたら貸一つだからね、ハンス副騎士団長。ユーリ、シラハ、リック。あの中に君たちの後輩専属騎士が一人いるけど、やっちゃっていいよね」


 さぁ、この間読んだ冒険小説の主人公の技で叩きのめしてあげるよ。かかっておいで、カークス。





 さすがに十三人はキツイ。うっかり、学院時代に極めた話画集の主人公の技も使ってしまった。

 カークスには悪いと思ったけど、一番最後に沈めさせてもらった。僕のカッコイイところをいっぱい見てもらいたかったし。


「ハンス副騎士団長。この中から見た目がいいやつを何人か選んで。詳しい人数は後で言うけど、今度やる星詠み候補のお披露目の時に使いたいからさ。これで騎士の訓練に僕を使ったことなしにするから」


 これでヴィンガールの候補者一行のお披露目時の人数問題は解決だ。


「兄上、お披露目時に何のために騎士を使うのですか?警備体制は万全でしょう?」

 ダニールが訊いてきたけど、さすがにこの場でヴィンガール王国の件を言うわけにはいかないので、ナイショと言って頭を撫でて誤魔化した。


 気絶している騎士達を残して執務室に戻ると、イグニスから星詠み選考についての報告を受ける。


「先ほど、星殿から使いが来ました。キリル星詠み殿が星の動きを読んだ結果、これから半年以内には必ず次代の星詠みが決定するそうです。これは現在、各国の星詠み殿達にも確認をしていただいております」


 つまり次代の星詠み選考期間は半年後までってことか。


「じゃあ、星詠み選考は来月から始まるから、選考期間は実質五ヶ月ってところか。長いんだか、短いんだか分からないね」

「来週の三ヵ国の使者との話し合いにもよりますが、遅くても三週間後には必ず全ての候補者たちが帝国に来ますね。来月の頭にある皇太子殿下の誕生日パーティーで候補者たちのお披露目がされることになりました」

「何か物事が順調すぎるね。星詠みが交代することは前々から言っていたけど、時期は決まっていなかったはず。それが急に決まったし、候補者もすぐに決まった。誰かの手のひらにいるようで気持ち悪い」

「皇太子殿下の手のひらの上ではないのですか。あの方はいつも先を知っているかのように手を打たれていますし」


 兄上ならもっと根回ししているハズなんだけどね。


 ま、星詠みっていう世界の理を外れた場所にいる人物のことを考えたってしょうがないか。


「そういえば、ヴィンガール王国の候補者の方の絵姿が届いていますよ」

 

 どうぞ、と言って手渡された絵姿を見て僕は顔をしかめる。そのまま絵姿を部屋の隅に控えていたユーリに見せる。


「これって絵姿なんですかね」

「誰だか分からないものを絵姿とは呼べないよね」


 描かれていたのはベールを被って顔を隠し、手足を隠すような衣装を着た小柄な人物。かろうじて長く伸ばされた銀の髪だけが分かる。


「手足が不自由だとはお伺いしておりましたが、お顔も拝見できないとは。どうやって帝国にきた人物を本人と判断するのでしょうか?」

「さぁ、そこはヴィンガール側を信用するしかないね」


 姿が分からない候補者については一旦置いておいて、候補者お迎え計画をイグニスと一緒に考える。大まかなことを決めて、詳細は使者と会って決めることにした。





 使者との打ち合わせを明日に控えた夜にラグが僕の部屋を訪ねてきた。

 いつもの合図に返事をして音遮結界を張る。


「忙しいのにごめんね。どうしても伝えたいことがあって……」


 珍しく疲れた様子のラグはそのまま寝台の上に倒れてしまった。平気平気と手を振るラグが心配で横に一緒に寝転ぶ。


「長旅お疲れ様。もう帝国内に入っているんでしょ。明日会えるのに今伝えたいことって何?」


 しばらく黙って天井を見つめていたラグが口を開く。


「妹の絵姿見た?」

「見たけど……。ほとんどベールに包まれていたから良く分からなった。僕の護衛騎士は来るのは本当に第四王妹殿下なのか疑問に思っているよ」


 そう答えると、力なく笑うラグ。


「まあねえ、普通はそう思うよね。でも、安心して。顔を見れば私の妹だってことはすぐに分かるから。王妹殿下であることは絶対だよ。でさ……」

 シーツに顔を埋めながらもぞもぞして何か言いたそうなラグに目線で続きを促す。


「明日、アレクと打ち合わせをする前に皇太子殿下に挨拶をすることになったの。その時に妹の顔を見せるんだけど……」

 なおも、言い淀むラグの顔を覗き込んだ。


「それってすごく重要なこと?そうじゃないなら言わなくてもいいよ。顔を見せた後、妹殿下はベールを被るんでしょ」

 女性の顔とか繊細な問題だし、突っ込んではいけないと思うんだ。


 僕が気を遣って話さなくてもいいと言っているのに、ラグは口を開けたり閉じたりしている。


「いや、そうじゃなくて……。あー、妹ね。手足が不自由って言ったでしょ。その代わりなのか星詠みだけが使う星魔力が膨大にあるの。その影響であの子の成長は七歳のころから止まっているの」


 成長が止まっている?


 ラグが小さい声で言う。

「つまり見た目がね幼いのよ。子供のままなの」


 ……つまり?


「幼女か!幼女なんだな!合法的な幼女なんだなっ!!」

 大声で叫んで立ち上がり。片腕を天井に向けて突き出す。


「ああ~。だから言いたくなかったんだよ……」

 涙目で丸くなるラグをゆさゆさ揺らしながら詳しく話を聞かせろと強請る。


「年は年は?あ、見た目のね。七つって言ってもわかんないし。あと可愛いの?ラグに似てるんだよね?じゃあ可愛いよね。明日の兄上の顔見せに僕も同席してもいい?ねぇねぇねぇ、ラグってばー」

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