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友人と話し合いをしました

 音遮結界の範囲はそんなに広くしていない。部屋全体にかけると扉の外にいる護衛や隣の部屋に待機している侍女たちに不自然な静寂を感じ取られてしまう。


 なので、広い寝台の上に二人で座る。途端に僕が読んでいた小説を見つけたラグが目を輝かせる。


「これって、今帝国で人気がでてきたヤツでしょ。いいなー、ウチの国ではまだ発売されていないんだよね。あっ、この話画集読んだんだ。面白いよねこれ。ここが特によくってさ~」

「そうそう、ここがね。でもさ、ここも面白いよね~」


 ひとしきり共通の趣味の話題で盛り上がった後に、用件を尋ねる。


「で、ヴィンガール王国ラグランジュ第二王妹殿下が今ここに来るってことは、今回の星詠み選考について何か話があるってことでいいの?」

「そうそう、急に決まったことだったから情報収集が追い付いかなくて。ちょっとどうかと思ったけど、直接聞きにきたの。ウチの担当の皇子は誰?」


「僕」

「……マジか~」


 素直に教えたらラグは両手を顔に当てて下を向いて悩みだした。いくら僕が頼りないからって目の前で悩まれると悲しくなるんだけど。


「そっちからは候補者以外には誰が付いてくるの?ラグは来るの?」

 僕が訊くと、悩んでいたラグは顔を上げて何かを決意したかのような表情をした。


「こちらからはほとんど人は行かない。候補者である妹とその侍女二名。あとは私だけ」


 何その編成。おかしくない?


 思ったことが顔に出ていたのか、ラグが僕を見て苦笑いをしている。


「詳しくは言えないんだけど、今回の星詠み選考に兄王は興味がないのよ。だから予算も人員も割かないんだって。まぁ、護衛は私がいれば足りるし、お世話係は二名いれば十分だしね」


 詳しくは言えないとか言って、結構核心的なこと言ってない?

 帝国付きの星詠みに自国の候補者を送って繋がりを持ちたくないって、ウチにケンカ売ってんの?


「だから連れてこないって言ってもさ、帝国の星詠み選考だよ。それなりの人員をそろえてこなきゃ、帝国のこと舐めてんのってなるよ」

 僕がそう言うとラグはそうだよね~、とうなだれた。


 うなだれている姿がかわいそうだったので、よしよしと頭をなでる。ラグの髪ってモフモフでスベスベしてて触り心地がいいんだよね。


 しばらくなでられるがままだったラグに、いい加減ヤメロと言われたので手を引っ込める。


「アレクから皇太子殿下に話をしてもらってさ、何とかできない?」


 何とかって何さ。そんな上目遣いでお願いされても無理だよ。


 そう言うと、ラグは背負っていたカバンの中をゴソゴソ漁って、僕に何かを差し出してきた。


「これで、ひとつよろしく頼みます」


 こ、これはっ……。


 僕が帝国第四皇子としてのあらゆるツテを使っても手に入れることができなかった、期間限定数量限定で受注生産されたというルンちゃんのヒトガタ像ではないかっ。


「そう。しかも、これはここに電石をはめるとルンちゃんがお話してくれるんだ」


 僕の手をつかんでルンちゃんのヒトガタ像をそっと手渡しながらラグが真剣な顔で言った。




「……僕から兄上に話をするにしても、それなりの理由がなきゃダメだよ。どうする?」


ラグからもらったルンちゃんのヒトガタ像をコレクション棚にしまって、再度寝台の上で向かい合う僕達。


「皇太子殿下に妹のことはどこまで伝わっているかによる。アレクはどこまで聞いてる?」


 僕が聞いていることは、つい最近までヴィンガール王国でも公にされていなかった病弱な姫ってことくらいかな。あと、年齢が二十一歳ってこと。


 僕がそう答えると、ラグは容姿等についてとか、他のことは伝わっていないのかと確認してくる。


 そういえば、絵姿すら見ていない。


「僕は絵姿とかは見てないなぁ。兄上はどうか分からないけど」

「あ~、うん。じゃあ、まだ見てないのかもね。もし見ていたらアレクを担当にするはずがないし。いや、弟に甘いあの人なら逆に……」


 逆にって何?あと、兄上は別に甘くないよ。僕のことをちゃんと見て、認めてくれてるけど。


 兄上のことを思い出してにやけていると、ブラコンめっとラグに言われた。

 君に言われたくないよ。シスコンめ。


「どうせ今度顔合わせをするんだし、アレクはそこで容姿の確認をすればいいよ。それより重大な情報が欠けているわ。なぜこれがそっちに伝わっていないのか分からないけど……」


 重大な情報?


 まじめな雰囲気に気を引き締めて。言いにくそうにしているラグに続きを促す。


「妹は手足が動かず口もきけないの」



 ……それは隠されるわけだ。今回の星詠み候補に選ばれなければきっと永遠に存在を公にされることはなかっただろうな。


「あっ、でもね、口がきけなくても思念石で会話はできるし、手足が動かなくても移動は私や侍女が抱っこして運ぶし。もし、次の星詠みに選ばれても、星を詠んだり、そのほかの色々な星詠みの仕事に影響はないと思うわよ」


 僕が黙っていると、焦った様子でラグが話してくる。

 僕は自分ができた人間ではないことを知っているから、別にどうとも思わないのだが、これは人によっては受け入れられないだろうな。特に高位の者にとっては。


「言いにくいことを言わせてごめん。うん、これは早急に兄上に確認させてもらうね」


 ヴィンガール王が今回の星詠み選考に乗り気でない訳が分かった。そりゃあ、ずっと隠してきた存在を公にした帝国に対して良い感情は持っていないか。

 候補者一行の人数が少ない本当の理由はこれかな。


「ねぇ、一応確認するけど、ラグは妹殿下のことどう思っているの?疎ましい?」


 僕がそう訊くと、ラグは目を細めて不快感を表した。心なしか殺気がもれている。


「ごめん、ごめん。その殺気抑えて、外の護衛に気づかれるよ~」


 ほら、ラグもシスコンじゃないか。僕のこと言えないよ。


「じゃあ、さっきの話だけどさ。ヴィンガール王国一行の人数が少ない問題は僕に任せて。兄上に確認した後に何とかする。こっちにも非がありそうだしさ」


 僕がそう言うと、ラグは安心したみたいで、ありがとうと言って寝台の上に仰向けに倒れた。


 寝台が跳ねるのに合わせて、ラグの重そうな胸も跳ねている。それをじっと見つめつつ、僕も一応男なんだけどな~、と思う。


 安心しきったラグは体勢を変えて、寝台の上に散らばってしまっていた小説を物色している。


 ああっ、それはダメ。僕がまだ読んでないヤツはダメ。










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