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道が示す行き先。

作者: まるたけ

僕には友達が誰もいなかった。

ある日、母親にお使いを頼まれ、買い物袋を持って外に出た。

買い物に行くのが面倒くさいなと思った僕は、お使いをさぼることにした。

どこかに遊びに行こうと思い、森の道を通った先にある公園に向かった。

初めて行く公園だったのでどんな遊具があるのか楽しみだった。

深い緑が広がる森の道を歩いていると、人の声が聞こえた。

近づいてみると、小学生くらいの女の子が地面にしゃがんでしくしく泣いていた。

僕は早く公園で遊びたかったので、無視して先に進むことにした。

道が2つに分かれていたので、左の道を選んだ。

公園でサッカーをして遊ぼうと考えながら進んでいると、荷物を持ったおばあちゃんが歩いていた。僕はまた無視して先に進んだ。道が3つに分かれていたので、真ん中の道を行くことにした。

進んでも進んでも公園にたどり着かないので、僕はだんだんイライラしてきた。

前を見るとまた誰かがいた。

道の真ん中で少年が、椅子に座って机の上で何かしていた。

通り過ぎるときにチラッと様子をみると絵を描いていた。

その絵はとても怖い顔をしていた。

少年は僕の顔を見て、「きみはいつもこんな顔をしているんだよ」と言った。

僕は、「そんな訳ないだろ」と言い、腹が立って絵をビリビリに破いた。

僕は小走りで道を進んだ。

道が4つに分かれていたので、右から2番目の道を選んだ。

僕はさっきの似顔絵が頭の片隅に残っていた。

道の先にまた誰かがいた。今度は赤ん坊を抱いた女性が困った顔をしていた。

僕は早く公園でイライラを発散したいと思い、無視して通り過ぎた。

通り際に一瞬、赤ん坊と目が合った。

赤ん坊は突然、激しく泣き出した。

僕は驚いて急いでその場を走り去った。

道が5つに分かれていたので、一番右の道を選んだ。

走りながら僕は、「そんなに俺の顔が怖いかよ」とつぶやいた。

イライラしながら進んでいくと目を瞑った坊主頭の男性がこっちに向かって歩いてきた。

僕の前に来ると男性は止まり、「あの~すみません、実は私お腹が空いていて、もしよろしければ、何か食べ物を恵んでいただけないでしょうか」と頭を下げてお願いしてきた。

僕は家を出る前に、ポケットにお菓子を入れてきたのを思い出した。

お腹が空いてなかったので、男性にお菓子をあげることにした。

坊主頭の男性はお菓子を貰うと、すぐに平らげた。

男性は笑顔で、「ありがとうございます。本当に助かりました。

あなたは親切でとてもいい人ですね」と言った。

僕は顔が少しだけ赤くなった。

「お礼になにかさせてください」と男性が言うと、僕は「この先の公園に行くにはどうすればいいんだ?」と訪ねた。

男性は「4つに分かれた道の一番左の道を進んでください」と言った。

僕は走って、言われた通りの道を選んだ。

後ろから男性が「本当にありがとうございました!」と叫んでいた。

疲れていた僕の足が少しだけ軽くなった気がした。

僕はやっと公園に行けると思い、走っていると道の先にまた誰かがいた。

さっき無視して通り過ぎた荷物を持ったおばあちゃんだ。

僕はまた無視して通り過ぎようと思ったけど、なぜか気になっておばあちゃんに声をかけた。

「その荷物重くないの?」と僕が言うと、「平気だよ」とおばあちゃんは言った。

僕はおばあちゃんは嘘をついていると思った。

「俺が荷物持ってあげるよ」と言って、荷物を持った。

おばあちゃんは、「ありがとうね。あなたのような優しい子がいておばあちゃん助かるわ」と笑顔で言った。

僕はまた顔が赤くなった。

おばあちゃんと一緒に3つに分かれた道の真ん中道を選んで歩いた。

進んだ先におばあちゃんの家があり、家まで送った。

おばあちゃんは「ありがとうね」と何度もお礼を言っていた。

歩きながら僕はイライラしていた気持ちがいつの間にか消えているのに気づいた。

進んだ先に最初に見たしくしく泣いている女の子がいた。

僕は放っておこうと思ったけど、気になってどうして泣いているのかだけでも聞いておこうと思った。僕は「どうしいて泣いているんだ?」と訪ねた。

女の子は「友達から貰ったキラキラのカードをなくしちゃったの」と泣きながら言った。

僕は早く公園で遊びたかったけど、女の子の泣いている顔を見ると、何とかしてあげたいと思った。僕は女の子に「一緒に捜してあげるよ」と言って、キラキラのカードを探し始めた。

すぐに見つかるだろうと思ったけど、探しても探してもカードが見つからなかった。

あきらめていた時、道に生えている雑草の中に何かが光っていた。

よく見ると、キラキラのカードがあった。

「やった、みつけたぞ!」と言って、二人で大喜びした。

女の子は笑顔で「お兄さん、ずっと一緒に捜してくれてありがとう」と言った。

僕は自然と笑みがこぼれた。

女の子は「見つけてくれたお礼をさせてよ」と言った。

僕は「じゃあこの2つに分かれた道のどっちが公園に続く道なの?」と聞いた。

女の子は「右側の道だよ」と言った。

右の道を進んでいると、さっき会った赤ん坊を抱いて困った顔をした女性がいた。

僕は自然と「どうしたんですか?」と訪ねた。

女性は「この子が全然笑わなくて困ってるの」と言った。

僕はとても悩んだ。

僕はまた目が合ったら赤ん坊を泣かせてしまうと思い、去ろうと思ったけど、なんとかしたいと思う気持ちの方が強かった。

僕は勇気を出して赤ん坊の顔をみた。

すると赤ん坊は僕を見ても泣かなかった。

心の中で「よしっ」と言った。

僕は両手で頬を押して変な顔をした。

すると赤ん坊は手を叩きながら笑った。

女性は「あなたはすごいわ。あなたのおかげだわ」と喜んでいた。

僕はお礼を言われると嬉しい気持ちになることを知った。

僕は走って公園に向かった。目の前に2つの道があった。

片方の道の先には公園が見える。

もう片方の道の先には商店街が見えた。

僕は進もうとしたとき、後ろからトントンと背中を叩かれた。

振り向くとここに来る途中に出会った絵を描いていた少年がいた。

少年は「やっと絵が完成したんだ」と言って、絵を見せてきた。

その絵には、僕がこれまでに手助けしてきた人達の笑顔と僕の笑顔が描かれていた。

少年は「君と友達になりたいな」と言った。

僕は笑顔で「いいよ」と頷いた。

僕は「じゃあ明日、この公園で遊ぼうよ」と言うと、少年は頷いた。

僕は初めて友達ができたと心の中で喜んだ。

少年と別れた僕は、買い物袋を握りしめて、進むべき道に走って行った。

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