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エピソード1「え?女の世界?嫌ダ元ニ戻シテ!」

読者がついてくれるかの心配もですが、何より作品としての不安が残る問題作の一話始まります。


 

 十人ばかりの女性の中に全裸で放り込まれた立花鏡夜(キョウヤ)

 全裸の男がいきなり部屋の中から出てきたのを目撃した女性陣。


 お互い絶叫を上げるに十分な理由があり、半ばパニックになりながら絶叫を上げ続ける。

 元々声色の可変域が広い鏡夜は女性の絶叫に音を合わせ、見事なハーモニーを形成しだしたあたりで気づいた。


 なんで叫んでいるんだろうか。

 鏡夜が指揮の終わりの様に手を振るうと皆ぴたっと止まった。

 叫んでいるのに疑問を覚えたのは鏡夜だけでは無かったようだ。

 女性達は鏡夜の股間に凝視しながらも、男性用の服を用意し、渡してきた。


 周囲を見渡す鏡夜。そこは会議室のようだった。女性達もビジネススーツを身にしている為、その推測は会っていると想定した。


 渡された衣装はジーンズに長袖のシャツと、無難な物だった。着込みはするが、最近は女装ばかりだったので鏡夜は違和感と妙な羞恥を覚えた。

 そのまま鏡夜は別室に案内された。社長室のような場所で奥にデスクとパソコンが設置してあり、手前にソファが二つテーブルを挟むように置いてあった。


 言われるままにソファに座りる鏡夜。その後、向かいのソファに女性が一人座った。美人ぞろいの中で一際美人で、気の強そうな女性だった。

 その人の指示で、言われるままに他の女性は部屋を退出していった。


「さて。お互い様だと思うけど正直混乱しているわ。何から話しましょうか」

 対面の女性は難しい顔をしながら鏡夜に尋ねてきた。

「とりあえず、自己紹介からしませんか?如何せん情報が足りなさ過ぎて」

「そうね。とりあえず自己紹介をしましょうか。私の名前は佐久間武美。一応だけど、ここの責任者よ」

 そう、佐久間と名乗る女性は鏡夜に挨拶をする。ビジネススーツに身を包んだ、いかにも仕事の出来る人オーラを出している彼女がこのビルで一番偉い人らしい。

 二十代前半にしか見えないが、若くして会社を設立したと言っても納得出来る見た目ではあった。


「ありがとうございます。俺の名前は立花鏡夜。夜のバーで仕事をしていました」

 そう挨拶をする鏡夜を信じられない物を見る目で返す佐久間。何か変なことを言ってしまったらしい。

「ありがとう。立花君。それと、ちょっとごめんね」

 君付けに違和感を覚えたが、スルーしてただ頷く鏡夜。

 佐久間は部屋の後ろにあるデスクトップパソコンの所に行き操作を始めた。

 カタカタとタイピングの音が鳴り、しばらくしたら小さな声で佐久間はやっぱりと呟いた。


 佐久間は鏡夜の正面のソファに座り、申し訳無さそうな顔をした。

「コールドスリープ。ワープ技術。後は、神隠しとかかな。何か心当たり無いかした?」

 まったく言いたいことがわからない鏡夜。とりあえず首を横に振った。

「りょーかい。とても言いにくいことなんだけどね。あなたは間違いなくこの世界の人間では無いわ」

 よくわからないが、佐久間は確信を持って言っている様に見えた。


 佐久間に電話を借りた。知っている番号に片っ端からかけてみつが、繋がらないか別の場所に繋がった。

 また、理由はわからないが、電話に出た相手は必ず驚いた様子だった。

 地図を借りたが、知っている場所所か住んでいる町が無かった。

「ね?知ってる常識と違うでしょ?」

「そうですね。ですが、別世界から来たとかはとても信じられませんよ」

 鏡夜は正直な感想を告げた。中世の様な世界感でもなければ未来感も無い。ちょっとだけ知っている場所よりも都会なだけなのに異世界とは信じられなかった。


 佐久間も、鏡夜の言葉に頷きながら、そっとテレビを付けてチャンネルを変え、鏡夜に見せた。

「今国会中継やってるけど、たぶんこれで納得するわ」

 鏡夜がそのテレビを見る。騒ぎながら答弁をする議員達。やっていることはこっちの世界と変わりなかった。

 でも、それは明らかに異質ではあった。間違いなく、鏡夜の常識では有りえない。


 議員として映っている人物は女性しかいなかったのだ。


 その上、議員達が今何の答弁をしているかテロップが流れる。

『男性保護法の撤廃か継続』


「この世界に、まともな、いえ。男性と認められる人はいないわ。それが、あなたが別世界から来たという証拠よ」

 その言葉に、鏡夜の心は絶望に堕ちた。


 別世界だろうと薄々感づいてはいた。シャワー室のドアが無くなるという錯覚では有りえないことが起きたのだから。そして、それは鏡夜にとって大した問題では無い。

 家族に会えない。それも心配無い。自分がいなくなっても心配無いようになっている。自分が死ぬとは家族も思っていないだろう。縁はあるが、お互いの自由を尊重した結果だ。

 仕事先だけは、心配かけてしまうから不安ではあるが、新人も育ってるしそろそろ後続の為に仕事を止めるか悩んでいたからちょうど良くはある。


 だが、この世界だけは鏡夜は受け入れられなかった。

 男性がいないと言い切った。おそらく数が少ないという意味だろうが、それでも絶望するには十分だ。

 鏡夜はずっと考えていたのだ。恋人を作ろう計画を。

 なんてことだ……。恋人どころか友達(意味深)すら作れそうにない……。


 だが、鏡夜はその感情を顔に出すことは無い。たとえ絶望していても、相手の立ち居地がわかるまではネコをかぶろうと決めていた。ネコだけに。

「詳しく教えていただけないですか?」

 鏡夜の問いかけに、同情を向けながら佐久間は頷いた。


 最初に佐久間は鏡夜の世界のことを尋ねた。その上で、大きな差異となる部分を話し始めた。


 大まかには歴史は変わらない。人の名前位でおきている事件も大体同じだ。

 ただし、一点だけ絶対的に違う部分があった。


 この世界では突然、原因不明で未知のウィルスが発生した。

 そのウィルスは感染力が高く、発症した場合は致死率七割を超えるという最悪の殺人ウィルスだった。

 戦争中だった国家も全て休戦し、全人類で協力してウィルスに対策を試みた。

 そして、ワクチンを作り上げることに成功した。

 全世界で協力し、全世界中にそのワクチンが配られ、人類はウィルスに勝利したのだ。

 人口が二十億にまで下がったが、それでもまたこの時までは未来があった。


 だが、問題はここからだった。人類の愚かさを煮詰めた様な事件が発生した。

 ウィルスの恐怖が無くなった瞬間戦争が再開された。人口の減少を取り戻す様に戦争は広がり、全世界中が戦争に飲まれた。


 そのせいで、気づくのが遅れたのだ。ワクチンには重大な欠陥があるということに。


 最初は女性の数が多くなった。その程度だった。これは女性が優秀で男性は愚かだから女性の数が増えたと、女性団体が謎の主張を始めた。

 だが、女性の方が多いという事実から、多くの女性もまたそれを信じてしまった。

 世界がゴタゴタになり、女性の権利の増加。男性の権利の減少。女尊男卑の風習が広まった。


 男性の出生率が女性に比べて三割程度というどうしようも無い事実が世間に周知されるまで、ゴタゴタは続いた。


 ワクチンを接種したら極端に男性が生まれにくくなるという事実に気づいた時には、あらゆる意味で手遅れだった。

 男女比は開く一方。何とか男性の保護を試したが、結果はマイナス方面にしか進まず。

 今や男女比は1:1000という最悪の状態になっていた。


 総人口十億。しかし男性の人数で考えたら滅ぶのが決まった世界。それがこの異世界の招待だった。


 鏡夜は内心で怒鳴り上げた。

 どうして!男女比逆にしなかったのだ神よ!

 ただそれだけが、鏡夜の許せないところだった。そうしたら自分にも恋人が出来たかもしれないのに。鏡夜は今まで恋人が出来たことが無く、僻み精神と妬み精神で溢れていた。

 普段はおかんの様に人の世話をするような人格者だが、パートナー関係の時だけは性格がゆがみきっていた。


「事情はわかりましたが、一つ気になることが。男女比が悲惨なのはわかりましたが、はっきり男性がいないとも言っていました。それは一体どういうことでしょう?」

 鏡夜のその質問に、佐久間は痛いところを突かれたとばかりに困った表情を浮かべる。何かまだ言っていない闇が転がっているそうだ。


「そうね。言わないといけないわよね。とりあえず、言い訳みたいだけどこれを見て頂戴」

 佐久間は鏡夜にグラスの書かれた紙を渡した。そこに書かれていたのは男女の平均寿命だった。

 ここ数年で平均は四十年。女性は百年と書かれていた。異様としか言えない数値だろう。

「随分短いですね」

「そうね。短いわね。でも、これでもマシになったのよ。二十年前は平均三十下回ってたからね」

 佐久間のそれは冗談でも何でも無かった。


 人口比から男性の負担が大きくなった。遺伝子提供や、危険な仕事の禁止。また、無理な結婚の強制。希望が潰れ自死を選ぶ若者が後を絶たなかった。

 そのため、男性の精神状況を月一で調べる法案が作られ、世界中で施行された、


 結果は全滅。全員が精神疾患あり。自死の危険性ありと判断された。

 そう判断された男性は、複数の女性に介護されることが義務付けられた。そして、そうなった場合男性の人権は消滅し、回復するまで女性の権利の一部となる。


「なるほど。そうやって活かさず殺さずにする法案ですね」

 鏡夜の一言に佐久間は否定も肯定もしなかった。

 どうも思った以上に末期の世界らしい。


「ただね。この世界にもたった一人だけ男性の人権が認められた人がいます」

 たった一人の男性。これは何としてもお知り合いになりたい。そう心に誓った鏡夜は佐久間に尋ねる。

「それは会ってみたいですね。どこにいるのですか?」

 佐久間は鏡夜を指で差した。

「この世界で、突然監視カメラの前に出現し、自動でチェックする精神判断機で問題無しと認められた男性があなたです。監視カメラの映像は既に世界中に公開され、あなたの人権は即座に認められました。今国籍から住民票まで作られています」

 お知り合いになるという夢は早くも崩れ去った。


 そして、鏡夜は自分の額に汗が浮かんでいるのに気づいた。冷や汗だ。

 佐久間の発言から察するに、自分は既に逃げ場の無い場所に立たされているらしい。

「もし、監視カメラの無い場所に私が現れたらどうしていました?」

 佐久間はにっこりと良い笑顔を浮かべる。

「どんな手段を使ってでもあなたに気に入られて私を結婚相手に選んでもらうわ」

 この世界では事実上結婚という制度は消滅していた。その為、結婚という行事は女性の最高の憧れで、名誉になっていた。


「とりあえずあなたは記憶喪失の男性ということにしておくわ。しばらくは義務も何も無い。普通に過ごせるようにするから、その後身の振り方を考えて頂戴。もちろん。私に頼ってくれても構わないわ。私にも下心があるけどね」

 魅力的な笑顔を浮かべる佐久間。

 いかん。もし男だったら惚れていたぞ。ぐらっときた事実を消す為に、鏡夜は我に返る為に頭の中を男性一色に戻す。


 鏡夜はその後ビルの一室に案内された。

 布団と複数の情報雑誌。テレビとラジオとパソコンが置かれた部屋。住むには十分な部屋だった。


 ここで情報を仕入れながら身の振り方を考えて欲しいということだろう。露骨に部屋が良いのはこのまま住まわせる計画でもあるのかと邪推する鏡夜。

 鏡夜は部屋で一人、身の振り方について考えてみる。


 全ての女性が男性を求める世界で、一人取り残された自分。

 だが、鏡夜の心は折れていなかった。千分の一を求めて、鏡夜はこの異世界で戦い抜く決意をした。

 全ては恋人獲得の為に……。



ありがとうございました。消されないことを祈って続けていきます。

そんなに長くなる予定は無いですが。

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