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第9話 駄神の証明?

「天目一箇、もしかして山にトンネルでも掘るつもりなのか?」


「それも考えたが、長いトンネルだと酸欠の恐れが有る。もっと簡単な方法があるからそれをやるつもりだ」


「簡単な方法って何が有るんだ?」


「それを先に言ってしまっては面白みが無いではないか、あとを楽しみに待つが良い」


天目一箇の方法が山脈の形まで変える代物だとは、この時の護はまだ知らなかった。数日掛けてフェスの村まで戻ってきた護達は宿で疲れを癒していた。翌朝、マルトと共に山脈へ向かおうとする護をアマテラスが何故か止めた。


「数日の間は非常に危ないので、山脈には向かわずこのまま村に居てください」


「アマテラス、もしかして山脈で何かしているのか?」


「・・・・・」


急に黙り込むアマテラス、言い様の無い不安に襲われた護だったが突如地面が揺れだしてその不安が的中した。


ドッカァアアアアン!! いきなり山脈の山頂の付近が大爆発を起こし白煙を上げる。


「何だ何だ!?アマテラス、まさか山を噴火させたのか?」


「違います、あれは水蒸気爆発です」


「水蒸気爆発?」


「はい、山脈地下の岩盤の底で貯まっている地底湖の水をまず火雷大神が雷の力を使い水を水素と酸素に分解します。その後、迦具土神が炎を起こし引火。その際に発生する大量の熱で残った水を水蒸気に変えてその圧力で岩盤を砕いて山を崩したのです」


そう言うと、アマテラスから火雷スライムと迦具土スライムが分かれてまた山脈へ向かいだした。更に今度は綿津見スライムまで出て山脈に向かおうとしていた。


「何で綿津見まで山脈に向かわせるんだ?」


「地下水の無い場所は綿津見の神の力で海水を地下に貯めさせます。岩盤の中に潜り込む為の隙間を作るのは大山咋神が協力してくれています」


「大山咋神?」


説明をしているアマテラスからまた新しいスライムが姿を現す。





エントリーナンバー8番


大山咋スライム(山の地主神)


大山に杭を打つ神、すなわち大きな山の所有者の神を意味し山の地主神である大山咋神が宿ったスライム。その力で打ち込まれる杭は固い岩盤すら貫ける。





呆気に取られて見ていると白煙を上げている場所と少し違う場所で雲が発生し雨が降っている様だ。


「あの雨雲はさっきの水蒸気爆発の影響か?」


「いえ、あれは効率良く地下水を貯める為に罔象女神が雨を降らせているのです」


「罔象女神?」




エントリーナンバー9番


罔象女スライム(水を司る神・雨乞いの神)


代表的な水の女神、伊邪那美命が亡くなる時にその尿から生まれた神とされている罔象女神が宿ったスライム。大量の水を発生させたり広い範囲に雨を降らせる事が出来る。




アマテラス達は山脈を越える事が出来ないのなら、越えられる高さまで山を崩す事を選択していた。普通の人間では思いつかない・・・っていうか、やろうとは思わない。


「護よ、数日もこの作業をすれば山脈も易々と越えられる様になる。我らの力であればこれ位の事は朝飯前よ!」


「馬鹿、静かにしろ!俺達の仕業だとバレるじゃないか!?」


この会話を聞いていた村人の口から『バレるじゃないか』の言葉が伝言されていく内に徐々に短くなり、山脈を越えられる高さにまで山を崩してしまった護達への畏怖を込めて村の名前がフェスからバレルジ、そしてバレッジに変わる事になる。


そして綿津見と罔象女が作り出して蒸発しきれなかった大量の水は、その後山の麓から流れ出して川を生み出しバレッジの村とウカイの街の近くを流れる様になった。これも余談では有るがウカイの街も自爆するスライムによって起きた騒ぎを語り継ぐ間に町の名もウカイからスラーム、ラームの順に変わっていった。




3日後、山脈は元の半分近い高さまで下がっていた。新たな山頂付近には岩盤の痕跡が残り質の良い石材が剥き出しの状態で出ていたがそこまで取りに行く者は居なかった。


「お前らの世界では山を平気で崩す奴が神として崇拝されているのか?」


「俺も八百万の神がここまで非常識極まりない連中とは知りたくなかった・・・」




以後護はアマテラス達を紹介する際は、ほぼ毎回【八百万の駄神】と呼ぶ様になった。またこの頃から、共のスライムを自爆させて物事を解決する人間の男の存在が少しずつ世に広まり始める。ボマー(爆弾魔)の異名で呼ばれる様になるのは、もう少し後の出来事である。


護とマルトはようやく山へ行ける様になり、新しい山頂付近の鉱脈の在る場所までやってくるとそこには大量の鋼と良質の鉄鉱石の山が用意されていた。


「おう、マルト一足先に来てみたが鉱脈は少し掘らないといけない様だ。鉱脈を掘り当てるまでの間、これを使ってくれ。お前の腕を鈍らせずに済む筈だ」


天目一箇はマルトの腕を惜しみ、少しでも鈍らない様にしたつもりだったが製鋼法が確立されていない世界で突然良質の鋼を渡されたマルトが驚きのあまり気を失う事になろうとは思わなかったみたいだ。


「お前らはよく考えている様で、実際は全く考えていないだろ?」


マルトとの1件でアマテラス達は案外ポンコツな神、駄神だという事を護の前で改めて証明した・・・。

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