十一月 ポッキーゲーム
オリジナル短編シリーズ
『山田さんは告らせたい!』の第八話です!
毎月1日に短時間でサクッと読めるお話をアップしていきます!
山田さんや山崎くんたちのどこにでもありそうなささやかな青春物語をお楽しみください!
「ねぇ、山崎?」
「うん……」
「山崎ってば、授業終わったよ?」
「あぁ、うん……」
「カナもタケル君も帰っちゃったよ?」
「うん。そうだね……」
今日は一日ずっとこんな感じ。
私やタケル君たちがどれだけ話し掛けてもずっと上の空で目的の定まらない目線は何もない空間をさっきからずっと泳ぎ続けている。
「逆に良かったじゃん。本番じゃなくて! 模試ならまだ取り返すチャンスは残されてるわけだしさ!」
「だめだよ。こないだの中間の順位だって結局半分以下だったし、志望校も一人暮らしも親から反対されてるから結果を残せなかった以上説得も見込めない」
はぁぁー。といつも以上に深い溜息を漏らす山崎に普段のおちゃらけた雰囲気はない。完全に落ちるところまで落ちてしまっている。
カナやタケル君たちも帰ってしまって、教室には私たちしか残されていない。
こんな状態で山崎一人を残して帰るなんて絶対にできないし……。
「来月の期末で挽回できればまだ可能性は――」
「もう放っといてよ! 俺と山田さんじゃ元々の出来が違い過ぎるんだよ。そりゃ山田さんはいつも上位にいるし、先生やみんなからもちやほやされるし、人望も学力も見た目だって全然違い過ぎるんだよ。俺なんかが今さら頑張ったところで何も変わらないんだ! 今まで自分の将来なんて考えずにそのときそのときが楽しければいいって考えてたツケが回ってきたんだ」
正直、驚いた。
三年間同じクラスで、ずっと前と後ろの席で、ずっと見てきた山崎がこんなに声を荒げるなんて。今まで落ち込むところは何度も見てきたけれど、こんなに怒ったり、自暴自棄になったりするところは見たことがなかったから。
けどさ。それは違うよ山崎。
「私も努力してるよ。私、家があんまり裕福じゃないしさ。下にまだ妹もいるから私ばっかりがわがまま言って両親を困らせるわけにはいかないからさ。勉強もアルバイトも山崎やカナちゃんたちと過ごす時間も全部全力でこなしたいって思うからさ。それに――」
ちらり、と視線を向けると自然と目が合う。
「ずっと一緒にいたいって思う人がいるから。私が立ち止ってるわけにはいかないもんね!」
現状できる限りの笑顔を向ける。
それが今山崎にしてあげられる私の精一杯だ。
「山田さん……ごめん。俺ひどいこと言ったよね……」
どこまで届いたかなんてわからない。けど、
「ねぇ、山崎」
私はいつもの明るくてどこか抜けてる山崎が好きだから。
「今日何の日か知ってる?」
「え? 今日……?」
突然の質問にきょとん、としてしまう山崎。
私は答えを待つ代わりに、脇に置いてあった鞄に手を伸ばす。
「そう。今日、十一月十一日!」
それは山崎が挫折した日なんかじゃなくて――
「ね、山崎。ポッキ―ゲーム、しようよ!」
私たちが一緒に踏み出そうと前を向いた日なんだ。
( 十一月 終 )