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ある日の出来事(三)

作者: shichuan

トランスフォーマー5ネタばれ注意!

 妻と子どもと映画を見に行った。帰り道、妻が、真面目な話をするときのくせで、鼻をスンと鳴らして、こう言った。

「もし、本当に宇宙人が地球を侵略してきたら、私たち、ひとたまりもなく死んでしまうわね」

 妻は気がついてしまった。ひとつ、宇宙の真理に。簡単に地球に来ることができるだけの文明を持った宇宙人なら、地球を征服することもたやすかろう。地球人が実際にできる抵抗など、たかが知れている。人間は簡単に死んでしまうのだ。妻は、荒唐無稽なハリウッド的ご都合主義物語のなかで、真面目にそのことに気がついた。

 ふと、ぼくは、妻の言葉を反芻した。妻は確かに、「私たち」と言った。ああ、ここが、妻が偉大で敵わないところだ。ぼくは頭でっかちで、すぐに絶望する。うじうじぐずぐず「人の命など儚いものと知るべきだ」などとクソの役にも立たないことを考えて絶望する。

 妻が厨房で鼻歌をうたいながら、鍋を振るっている。

 「私たち」と言った妻の言葉に、「人類」という意味はない。でも、夫である僕や子どもは含まれているだろう。妻の世界はこの家なのだ。ぼくの薄っぺらい脳みそ世界に集約される宇宙のコトワリなど、妻の、手と手を握ることのできる確かな今に比べれば、いや、これは比べることもできない違いだ。

 そうして、妻が作ってたラーメンをすすりながら、今日もまた、妻の偉大さにこうべを垂れるのだった。

日常生活のなかで、何かの拍子に、心が風鈴のように、チリンと鳴ることがある。メモ代わりに書き留める。でも、言葉に起こしてみると、どうということもないことが多い。

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