ファランクスについて
かの有名なマケドニアの王様であるアレクサンダー大王も使ったファランクス。
それは数多のなろう作品でも言及されており、その歴史が示す強さからも比較的戦記物に使いやすい陣形なのです。
ただ、一方で今一理解できていないまま使われてしまっていることもあるので、一体このファランクスってのはなんなのかについて簡単に書いてみようかと思い立った訳です。
戦争や陣形がどんなものか想像するのは日本人だと殊更難しいと思いますが、戦記物を書くに当たってファランクスのみが最強と勘違いせずに用法用量を守って正しくお使いください。
※この作品は基本的に紀元前ギリシャ、アレクサンダー大王が使ったファランクスを中心に述べています。銃火器なんかは出てこないのであしからず。
※また、作者は学者や評論家なんかでもないので殊更ファランクスに詳しい訳ではありません。これはおかしいなって物を是正するためのもの位なので過度な期待はしないでください。
◆そもそもファランクスとは
密集陣形等とも呼ばれ昔のメソポタミア(紀元前2500年頃)から既に歴史に表れていたみたいです。詳しくはwikipediaを参照されたし。
盾と槍を持った兵士(歩兵)が密集して出来上がった集団で、一方向にその槍を向けて槍衾を作り上げることで完成します。
最前列の兵士は真っ直ぐ槍を突きだし、後続に行くほど槍が持ち上げられて針ネズミのような外観となることでそのまま突撃するのです。
これと正面からぶつかる敵はまるで棘のような数多の槍に刺し貫かれ、投げ槍や弓矢なんかは持ち上げられた槍を振って防がれます。
アジア(メソポタミア)で作られたはずの陣形でアジアが滅ぼされることとなったのは余程アレクサンダー大王が有能だったのでしょう。
◆ファランクスは最強?
戦場最強は歩兵によるファランクス……ではありません。
何でもかんでもファランクスで勝てると思ったら間違いです。
そもそも、ファランクスは戦場で利用された一つの方法でしかなく、他の物も組み合わせないと戦争に勝つには不十分だったでしょう。
以下ではその弱点を述べてみようと思います。
○弱点1……象
そもそも、槍がちゃんと効かないとどうしようもありません。
象の大群に人間が槍持って突っ込むと言うのは流石にファランクスでも負けます。
ファランクス最強と勘違いして、ファランクスに象へ突っ込め等と命令を下すのは絶対にやめましょう。と言うか、普通兵士が拒否します。加えて指揮官の能力も疑います。
○弱点2……側面、後ろ
ファランクスはそもそも正面にしか槍を向けてないので横や後ろは弱点です。方向転換しようにも皆で一斉に旋回しないと隣の人や槍とぶつかって上手く行きません。
なので、ファランクスに限りませんが包囲や挟み撃ちにはてんで弱いのです。
ファランクス最強と勘違いして、兵士をファランクスだけで構成するのは絶対にやめましょう。後ろを取られないようにしつつ(戦場の基本!)、側面は騎兵や歩兵等を置いて守ってあげてください。
○弱点3……機動力の無さ
後年のファランクスは槍が長くなり、機動力が衰えます。
すると上に述べたように旋回等は一層難しくなるので騎兵に対して手の打ちようがなくなります。
簡単に言うと側面や後ろを簡単に取られたり、そもそもファランクスなんて無視して総大将の所まで突撃されるなんてことが起こるのです。
ファランクス最強と勘違いして、騎士団にファランクスをぶつけるのはやめましょう。せめて、騎兵が相手の場合正面衝突するように上手く陣を敷くか上に述べたように側面を何かしらで守ってあげましょう。
○弱点4……リーチ
さて、後年のファランクスは槍が長くなると述べましたが、戦場の武器は基本的にリーチが長ければ長いほど強いのです。
そこで、ファランクスよりも遥かに優位に立てるものがあるかと思います。はい、弓ですね。
弓は基本的にどの武器よりも強いです。無限に矢があって、常に敵と距離を取れる位の機動力があればファランクスに限らず歩兵に対して最強なのです。
ファランクス最強と勘違いして、弓兵への対策を怠るのはやめましょう。騎兵などの機動力確保も重要です。
○弱点5……地形 ※追記
ファランクスの弱点の1つとして更に上げるならば、地形となるでしょうか。
実際は“密集陣形を形成できない状況”こそが弱点で、例えば平地以外の凸凹とした地形では槍衾は形成できず、ファランクスはただの長槍を携えた個々の兵士と成り下がることとなります。
よって、これを利用してマケドニア軍を破ったのがローマです。(キュノスケファライの戦い)
◆ファンタジーで使うなら?
魔法がある時点でそもそもファランクスをどう扱うべきか迷いますが、敵のファランクスに対して魔法や調教した巨大魔物群を使って打ち倒すなんて使い方なら出来るかもしれませんね!
そこら辺は数多のなろう作家さんに期待する所です!
◆終わりに
そんな感じでファランクスについてざっと述べましたが、正面衝突では強いのでやっぱり使いやすくもあります。
因みにアレクサンダー大王亡き後のギリシャはいくらファランクスがあろうとローマに負けて吸収されます。
そのローマではファランクスを主力に使っていません。ローマの主力は剣と投げ槍の重装歩兵なのです。
また、結局のところ騎兵の動かしかた等でファランクスは廃れて行きました。
ファランクスは何時までも通じる手と言う訳ではなく対処のしようがいくらでもあるものなので注意しましょう。