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4 要点三、「理想的な文字表現」

 三つ目は、「理想的な文字表現」について。



 理想的な文字表現とは何か。というか、「理想的」って何だろうか。「完全」とは、また違ったものだとは思う。「欠けた所が無い」というよりも、「それを考える者が欠けている所を埋めようとして、結果的に不足していないように見える」、これに近い。結局のところ、完全にしろ理想的にしろ、想像の中の産物であり、存在としては観測できないのかもしれない。しかし、それでも理想的な文字表現の言語化を試みるならば、私の場合は、「意識的に、あるいは無意識的に必要だと思った事物を、最大限取り入れたもの」と述べることができる。



 注意してほしいが、あくまで「表現者」である「私の場合は」、だ。ここに「観測者」のあなた方が考える、理想的な文字表現まで盛り込もうとすれば、軸がぶれにぶれて、よく分からない物になって終わると思うので、排除しておく。私の好きな作家である、西尾維新さんの対談集『本題』において、小林賢太郎さんとの対談で小林さんが『でも、やっぱりそういう「枷」はあったほうがいいでしょう?』(『本題』p27 3行目)と述べている。同ページの5行目で『それこそ「枷」なのかルールなのかというのに近い「いいお題」』とも述べているが、私はこれが「理想的な文字表現」に必要なもの、あるいはその根底にあるものだと考える。枷が理想的な文字表現の基礎なのだ。それなくして到達できないものだとさえ思う。



 学校の授業を思い出してほしい。授業はそれぞれ国語なら国語の、算数なら算数のカリキュラムが組まれている。教える内容を精査し、それが掛け算の授業なら、「一から九の段までをすべて覚えて計算問題の中で間違えずに扱うことが出来る」という具体的な到達点を設定し、それを実際の授業で達成できるように活動を行う。教師は、特に新人の教師は授業計画なるものを作り、それに沿うようにして授業を行う。熟練の教師は、脳内で補完し行動に移す。研究授業の際はきちんと計画書を作るようだが。日々の授業をこなす際に、計画書を作ってる暇などないほど教師というものは忙しいようだ。最近では、多忙な教師の負担を減らして授業に専念できるよう、担当の職員を雇うなどの工夫をしているらしい。



 話がそれたが、先に述べた授業を例にすれば、具体的な到達点がまさに「枷」であり、これを最大限生かした授業が理想的な授業、つまり「理想的な文字表現」だと私は言いたいのである。教科書だけ与えて、これで勉強しなさいと言うのは簡単だが、「枷」のない授業は混沌を生み出す(ヒトは際限なく低きに流れることのできる生き物故)。自分で目標を決定し、それに向かって邁進することが出来るならば、もう学校なんか通わずに自宅学習でも構わないと思う(まぁ実際、学校で学ぶのは知識だけではないので一概にはいえないが)。



 また、「理想的な文字表現」を考える上で、「枷」と同じように採り上げたいことがある。それは『キャラクターが勝手に演じはじめる』(『本題』p35 4行目 小林さんの発言)現象である。この私見の一つ目の要点において私は、某喰種漫画の月山某さんを例に出し、「表現者」の表現を深く理解することについて述べたが、あれもこの現象に当てはまる気がする。私は未だこの現象に出会ったことは無い。短編で物語を書いたこともあるのだが、書いていた当時は日常生活を優先し、執筆活動に身が入らなかったように思う。半ば作業のように書いていた。それを良しとする精神状態だった。書き上げたものを読み返して、なんか浅いなと思ったことは今でも覚えている。そこから、徐々に詩の世界に傾倒していった。しかし、作り上げた者特有の、作品に対する愛着というものは微かに感じていたことも確かだ。



 この現象について、私の強引な解釈を述べて良いのならば、「キャラクターが勝手に演じる」というのは幻想である。しかし、素敵な幻想だと思う。非生物が生物のように動き、話す。それはもう表現者の手を離れた存在と言っても差し支えないだろう。意識的に表現者が書いているのであれば、「勝手」とは言えない。しかし、無意識のうちならば、この現象は成立するのではないだろうか。尤も、無意識に表現するなど困難の極みであり、そうそうお目にかかれるものではない。だからこそ、この現象に対する期待は高いのだ。そして、この現象を引き起こし、「読み手」にさえも感じさせることが出来たならば、それはもう「理想的な文字表現」だと言えるだろう。



<次に続く>

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