3 要点二、「マジョリティーとマイノリティーの対立が文字表現に及ぼす影響」
二つ目は、「マジョリティーとマイノリティーの対立が文字表現に及ぼす影響」について。
「マジョリティー」は大多数、「マイノリティー」は少数派、の意味で使用する。ヒトの特定の部位に関する好みを例に話そう。
君は「胸派」か、それとも「尻派」か。別に答えなくてもいい。世間一般的には、どちらかと言えば「胸派」が「マジョリティー」だと言えるのだろうか。赤ん坊はみな乳を吸って成長するからな。記憶の奥底に刻まれやすいのだろう。しかし、某監獄スクールという漫画に出てくる校長は「尻派」だ。男子生徒に対して独自の理論を熱心に展開していた。どちらがいいかという論争に対する私のスタンスは、「どちらも尊いものであり、比べることそれ自体が無意味」というものだ。異論は、まぁ、認めるが。
あえて、この「多数派少数派」を対立させようとするならば、どうなるか。「読み手」の、さらに特定の諸君は既に体験していることだろう。そう、「多数派」が「少数派」を押しつぶそうとするのである。最悪、少数派は消え去る。まさに『戦いは数だよ兄貴』である。数が多いだけで有利なのである(ちなみに私は〇ンダムにあまり明るくない。この言葉をよく見るので覚えていたに過ぎないから、〇ンダムに関する質問などしないように)。まぁ、時として個人が大多数に打ち勝つこともあるが、そんなものは稀である。
さて、これを文字表現の好みに置き換えて考えてほしい。何が起きるだろうか。ヒントは総合ランキングである。日間ランキング、週間ランキング・・・。心当りは? この「小説家になろう(以下「なろう」)」に自身の作品を投稿している「書き手」のあなた方には分かるだろう。
そう、「マイノリティー作品の窓際族化」である(「窓際族」は、日陰に追いやられた者の喩として使用した。決して貶すつもりで使ったわけではない)。ものによっては他の作品との差があまりにも開きすぎて、需要が少なく、見向きもされない作品もあるだろう。彼らの境遇を思うと、涙が止まらない。何を隠そう、私も窓際族だからだ。私は主に「詩」を中心に投稿している。主にというか「詩」しか投稿していない。けれど、詩を書くのは楽しいのだ。例え誰も見てくれない日があったとしても。落ち込むこともあるけれど、細々と書いている。
確かに、「なろう」はどちらかというと、ファンタジー作品の方が主流であると思うし、そんな中で見てもらえるように、評価をもらえるようにするには、並々ならぬ努力が必要なのかもしれない。某書道漫画に出てくる半田某は、美しい文字を書く努力の過程について次のように述べている。少し長いが採り上げる。
『プロの書家があっさりと美しい字を書いてるとでも思っているのか!? 一枚の書に込められた熱い思いをくみとるんだ。何千何万という先人が紙上に何兆何京という思いを綴る。肉体疲労。精神衰弱。ただひたすら孤独と向き合う!! (モノローグ:極限。そう、極限を見るのだ。あと一歩。あと一歩と完成に近付いてゆく。しかし先はまだ延々と続く砂漠。もう歩けない。書き疲れた。そう思う瞬間。見えるんだ。書の神が。) しかしその神もまた砂漠で見る蜃気楼!』(最後の!は本来表記されていないが、半田某の様子を見て入れた方がより正確に伝わると思ったので付け足した)。
運よく流れに乗っても、ランキングという名の都会に繰り出し、そこに居続けることができるのは限られた者のみだ。部門ごとにランキングは設けられているが、マイノリティーであるというだけで、ハンディキャップを背負っている気がする。無いはずの「大多数と少数」の対立がそこかしこで起こり、筆を置く者も少なくないのではないだろうか(中にはかなりの期間更新を停止し、それでも何とか復帰するという心強き者もいるが・・・)。最近は総合ランキングの中でも、ファンタジー以外の作品が増えつつあり、見ていて嬉しい。受け入れられているのかしら。
実力主義の世界にこんな理屈を持ち込んでも、まるでなしの礫(「こちらからたより(連絡)をしても返事が無いこと」(新明解 p1105)の意味だが書いている最中は無意味という解釈をしていた。申し訳ない)、負け犬の遠吠えかもしれないが、それでも私は、声を大にして言いたい。
『たまには普段見向きもしない分野のものを読んでみてはどうだろうか!』
そうして、マイノリティーがマジョリティーと同じように受け入れられる基盤が整えば、窓際族(前述と同様の意味で使用)などという悲しい存在は減るだろう。
より面白い文字表現を追求できる環境になってほしいものだ。
ヒトの感情は読む時の作品に対する姿勢、気になっている事柄など、些細なことによって左右される。そして、それは時に作品に対する印象さえも変えてしまう(歪めてしまうこともある)ので、読み始める時は出来るだけ頭を空っぽにすることを勧める。何か感想が浮かんできたのなら、どうしてそう思ったのか一度自身を振り返ると、作品とは全く関係のないところに原因があったりもするので、注意されたし。
<次に続く>