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別の世界に行ったら男の娘をやるハメになったボクの話  作者: くうや
第六章 男の娘メイド・竜戦編
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第九十三話 「…………ああ、任せろ」

―――10年前、魔障活性化の混乱の中で当時5歳のセディンカーマリアル家第二子サーリャが行方不明となる事件が起きた。首謀者はセディンカーマリアル・ハーン・スペリアスとすぐに判明したが、霧の活性化による人員不足の為捜査は難航。


結果、事件より3週間後にサーリャは救出されるが既にケディフェリス中毒を引き起こす程の状態となっており、犯行に於ける手段の悪質さは多くの王族を震撼させた。

そしてスペリアスはセディンカーマリアルの旗名を剥奪されると言う形で終結を迎える。


その後、事件を境にリスリムはレオナを妃にと公言し始め、この一件は一部の王族貴族へ未だ深い爪痕を残す……。







「事件については私も知っているが……しかし幼碧エメラルドのあだ名で考えるとユウが狙われる事に違和感がある」


「確かにそうね。あの方はブロンドに碧眼を好む事で有名。童女趣味から魔王封印体が狙われると言う点はわかるけれど流石に考えすぎじゃないかしら?」


「いえいえー、あのお方の趣味は童女だけではなくてー、他にも色々ありまして―――」



二人の疑問に答えるべくペリアは言葉を続けようとするがそれを大きな足音が遮る。

視線を向けた先にはニーアと瓜二つの少女が慌ただしく足音を響かせ、こちらに駆けてきた。



「お、おね―――アミィ!? どうしてここに……駄目じゃないレニア様のお傍に居なきゃ! う、うん。わかった。わかったから落ち着いて……」


肩で大きく息をするアミィの手を強く握り、困惑を抱えながらニーアは言葉を向けた。

アミィはハァハァと荒ぶる息を整えると鏡合わせのように目の前のニーアと向かい合い、手を握ったまま沈黙する。


「……うん、そう。わかった私たちもすぐに向かうわ。アミィは先にレニア様のお傍へ。……うん、こっちは大丈夫だから」


ニーアは何度か相槌のように頷き、彼女だけが喋るその光景はまるで独り言のよう。

落ち着きを取り戻し、小さく微笑むとアミィを見送ってはいつも通りの冷淡な面持ちへ戻ると彼女は二人を見やる。


「二人共、魔王封印体の事は一旦後回し。指令室に向かうわよ」


「何かあったのか?」


「……先遣隊と竜の戦闘が始まったわ」


アミィが向かった方向を向くと同時に彼女はそう短く述べ、彼らを置いて足を進めた。













「状況は?」


「敵の数、老竜エンシェント1体を含むおよそ50程。戦闘にて先遣隊の3割が負傷、後続の騎士200名、魔術師50名程が参戦し応戦中です」


「50……? 予定では100近くだったハズだ。まさか何らかの手段で更に進軍を早めて残りを置いてきたか? まぁ良い。先陣へ展開している転移魔法陣をこちらからの増援専用に切り替え、後方の魔法陣を負傷者転移用に振り分けて我々の部隊が向かうまで耐え凌ぐように伝えろ」


「は! 承知しました!」


多くの王族が緊急で作られた指令室に集まっていた。そこには予想外の事態に狼狽える者や椅子に腰かけ冷静を装う者など様々。

そんな中、指揮権を持つリスリムは伝令役の騎士へ指示を出すと床に付く程の長いマントを翻し、腰掛けるレオナへ視線を向ける。



「これから負傷者が一層に増えるだろう。レオナ、お前にはそちらの管理を任せる」


「判りました。貴方の言葉通りこちらが引き受けましょう。あと……ユウの事、お願いします」


「…………ああ、任せろ」


「お、お待ち下さいリスリム様! このような事態の中、貴方様が自ら出陣されるのは少々危険すぎます!」


レオナとリスリムの会話へ声を荒げて割り入る一つの声。

黙って話を聞いていたが、耐え切れずに意見したと言った様子でそのまま感情的にズカズカと歩を進め、二人の間にその痩せこけた身なりの良い男が立つ。


「ならば誰が戦場で兵を鼓舞する? ならば誰がこの戦況で勝利に導く為、剣を掲げると言うのだカーリ卿」


「た、確かにそうですが貴方様は選帝を控える御身! そこを良くお考え頂きたい!」


「だからこそだ。この程度の障害で躓くようなら王の器では無い。貴殿はそう思わないか?」


「ぐっ……!」



キッパリと言い切られる言葉を前にカーリは何も返せず黙り込み、それと同時に部屋のドアが開くと3人の人影が部屋へ入り一同の視線はそちらへ流れる。



「遅れて申し訳御座いません。ニーア・ネヴィリウムと以下二名、遅ればせながら到着致しました」


銀髪の彼女は部屋に入ると深々と頭を下げてそう述べると顔を上げる。

リスリムは一同を一瞥すると目を細め、そのまま答えない。

そして部屋に入ってきた従者を見て何故か安堵の息を小さく漏らす者が居り、リスリムは違和感を覚える。



「と、ところでリスリム様! 現在貴方様の指揮下にある、魔王の姿がぁ……お見えにならないようですが?」


その言葉にリスリムを含む4名は固まる。

この作戦に於いて主戦力の一つとしてこの作戦に参加するハズの魔王、悠が現状行方不明なのだ。

ニーアたちは何も答える事が出来ず押し黙り、静寂が一室を覆う中で数名の王族がいやらしい笑みを必死にこらえてる様子が彼女たちの目に映る。


本来ならその事実はリスリム、ニーア、ペリア、ルシードのみが知る。

だが王族の一部は何らかの理由で魔王が行方不明な事を知っている事を確信させる表情を浮かべており、その事へ加担している者がいる可能性を思わせる。

しかし同時に今、それを証明する物が一切無い。


「どうされましたか? 私はてっきり貴方様とご一緒かレオナ様とご一緒と思ったのですが……そこの従者、魔王はどこに居るのか知っているか?」


その矛先は突如リスリムからニーアへ向けられる。

彼女は自分より身分の高い人間の質問に答えなければならないが、同時にリスリムより他言を禁じられている状況。故に沈黙と言う形が彼女に許された選択ではあるが……このカーリと言う人間はそれを許さないだろう。


「ほら、どうした従者よ! 早く答え―――」


「奴なら負傷者を治療中だ」


「……へ?」


嬉々と問い詰めようとするカーリへ彼はそう答えるとはんっ! といつもの調子で鼻を鳴らす。

予想外の返答を前に痩せこけた彼はそのまま固まり、沈黙。



「えっと……お待ちくださいリスリム様。どうして魔王が治療など―――」


「奴は上級の始まりの海を使える。嫌がるあの侍女もどきを説得し、無理矢理治療に回しているからな……流石にこの僕でも言い聞かせるのに骨が折れた」


「ば、馬鹿……な!?」


「気になるなら確かめに行くと良い。しかし奴も気が立っているだろうしなあ。どうなるかまではボクも保証出来ない」



リスリムの言葉にカーリは狼狽えるがそこから先の言葉は言い留まり、先程まで薄く笑みを浮かべていた王族連中も同様の表情を見せる。リスリムの言葉は嘘。

しかしそれを断定出来る要素がここには無く、彼の言う通り魔王が治療を行っている様子を確認できたとして……気が立っている魔王を前に最悪どうなるかわからないと言う不安が過る。

そんな困惑を思う連中を前に彼は風を切りながら悠々と歩を進め、不敵に笑う。


「これ以上問答していては兵を悪戯に負傷させる。僕が出た後に魔王もすぐに向かうよう手筈してくれ」


「は。承知致しました」



そう告げると彼はすれ違いざまにペリアに対してアイコンタクトを飛ばし、そのまま部屋を後にする。

そして状況がわからないレオナは彼を見送った後に腰かける王族たちへ視線を向けると……数名は心なしか目をそらす。



「……レオナ様、レニア様のお姿がお見えにならないのですが」


ニーアは自分の主人がこの場に居ない事を不自然に思い、そう尋ねる。

本来ならレオナの隣に座り、先程自分より先にこちらへ向かった筈のアミィの姿が無い事に疑問を覚えたのだ。



「お母様は万が一の為、アミィと一緒に封印の間へ向かわれたわ。貴女はこの場で待機しててとの事」


「そうですか。……有難う御座います」


自分の質問へ答えてくれたレオナに一礼するとニーアはいくらか安堵し、彼女が座る席の脇へゆっくり歩を進めその場で立つ。

自分の主人がこの場に残したと言う事はレオナをサポートしろと言う事だと受け取り、そこが自分の場所であるかのように粛然として見せる。




「……さーってと。ではでは自分たちもー、お仕事お仕事-ですねー」


緊迫した空気を物ともしない様子の彼は軽く延びをするように胸を張って見せ、くるんと振り返ってルシードに視線を向ける。

そしてフレンドリーに顔を近付け、ポンポンっと肩を叩くと……


「――急げ。との事でーす」


リスリムより向けられたアイコンタクトの内容を伝えるとその美男子はニッコリと微笑んで見せる。

そしてルシードが動きやすいようにワザとらしく言葉を続ける。



「ではルシード様ー、申し訳ありませんがーこれをリスリム様にお届け願えますかー? 自分はーこの場を離れる訳には行かないのでー、使いぱしりみたいなお願いですみませんがー代わりにレオナ様のお傍にこのペリアが付いていますのでー」


彼はそう言いながらポケットより取り出した何かをルシードの手へ握り込ませる。

それは無くさぬようにしっかりと握らせるようにも思えるが……中身が他人に見えないようにしている。

何を渡されたか解らないが意図を理解したルシードは頷き、


「承知した。任せてくれ」



彼はそう答えると急いでその場を後にした。

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