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別の世界に行ったら男の娘をやるハメになったボクの話  作者: くうや
第五章 男の娘メイド・渡竜編
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第八十八話 「おろー?」



「現在上陸した竜は速度を落し、3日後にセヴィア山脈へ到着する予定です。しかしナブ海岸、セーズ平原に設置されていた魔術防壁に竜が接触した痕跡が一切無く、時詠の巫女の見解では防壁に影響されず侵攻出来るすべを持っていると見て予定より早く山脈へ兵を配置するべきだとの事で……魔王封印体サマ、貴方も明日の夕方よりセヴィア山脈へ向かってもらいます」



夜の20時過ぎ、自室へニーアさんが緊急会議での内容と今後の事で言伝に来た。

彼女がボクへ直接って事は……恐らくレニア女王陛下が加わっての会議結果と考えた方が良さそうだ。


「では家政婦長ハウスキーパーには私の方より伝えておきますので出発の準備を明日の昼までしっかりとお願いします。着替えや諸々に関しましてはこちらの方でご準備しますので、魔王封印体サマは戦いに於ける準備を入念にお願いしますね」


「わ、わかりました。そう言えば昨日の模擬戦の事で……」


「はい、ジェネヴラに大敗したと存じておりますがどうかなされましたか?」


「リスリム……様の期待を裏切るような結果になったと思うんですが、大丈夫でしょうか」



昨日の模擬戦にて、ボクは彼女の言う通りジェネヴラに負けた。

そしてそれはリスリムが期待していた実力以下と見られ、今回の作戦で戦力外だと言われるのでは……と不安があった。

一対一であんな有り様だったし、やっぱアイツは使えないなんて言われる可能性もあり得る。



竜呑りゅうばみに負けた事は作戦に影響は御座いませんのでご安心を。リスリム様も魔王封印体サマの実力は戦力として通用するとの評価です」


「そっか―――良かった」




いくらかの不安が解消され思わず安堵の言葉が零れる。

我ながらあの負け方はかなり不味かったと自覚していた分、不安は一層だっただけに思わず素が出てしまった。そんなボクを一瞥して彼女は『白々しい』と言ったような視線をこちらに送ると小さく吐息を一つ。



「先程の出発の件ですが」


「は、はい!」


「ルシードに話す分には問題御座いませんのでご安心を……それでは」



ボクが聞くであろうと察した内容を放つと軽く会釈をし、早々に部屋を後にする燕尾にゴシックスカートの彼女。

ルシードさんのとこに行ってるの知ってるんだな……そう言えば前に夢の件で話をした時に相談してみるとかルシードさん言ってたっけなんて思い出す。


しかしニーアさん、終始キツイ喋りだったなぁ。あの見下したような視線もあってツンデレと言うよりツンドラだよ……。


あと格好と喋りのツン具合が相まってどっかのアニメに居そうな……いやむしろワンフェスとかに居るレイヤーって感じだな。みんなコスプレって勘違いするだろうから同人イベとかで混じってても間違いなく違和感がなさ―――




「それと言い忘れてましたが」


「はいすいませんっ!?」



ノックも無しにガチャリとドアが開き、脊髄反射で謝ってしまった。

そんなボクを訝しげな表情を浮かべつつ小首を傾げ、彼女は一拍を置いて続ける。


「……明日、くれぐれも寝坊なさらぬように」


「は、はいわかりました気を付けます!!」

















「ルシードさんまだ戻ってきてないな」


日課の一つ、ルシードさんの部屋で読書をすべくボクは彼の部屋へ足を運んだ。

明日の出発は夕方だし、準備も昼までにって話だからいつもよりいくらか余裕がある。

今日はいつもより沢山読めそうだななんて呟きながら部屋の中で乱雑に立つ本の塔に手を伸ばす。

ここ数日で30冊近くは読破したけども、それだけ読んでもやっと塔一つを半分ほど減らした程度だから全部読み終えるまでどのくらいかかるんだろう……。



「今日はこれとこれ、この体術なんとかってのも気になるから読んでみるか」


本の山を見回しては気になった本をおもむろに選ぶ。

とりあえずイリシア文字や簡易イリシア文字、セプト文字でいくらかの文章を書けるまでなったので、最近の読書スピードは元の世界の本を読むのより少し遅いくらいだ。

とは言ってもいざ文字を書けと言われると、文字のバランスは悪い。

時間を見て練習してるけれどボクはどうも筆記体が苦手なようでミミズが這ったみたいになってしまう。

その点、簡易イリシア文字はブロック文字のような感じで書きやすい作りになってて、一般に浸透してるのが簡易なのも頷ける。



「ひぇー。お前まーた本読むのかよ。すっきだねぇー」


「……今のボクに一番足りない物はこの世界の知識だから。それに本を読むのは昔から好きなんだ」


「へー。で、それ何の本なんだ??」


「えーっと……『誰でも簡単・クーリラン国体術!』と『豊作の為の混合上位魔術のススメ・天候操作編』と『お手軽冒険者料理』と―――」


「まてまてまてまて。それ、常識かっ!?」


「い、良いんだよ! どっかで役に立つかもしれないだろ!」



自分の好みでチョイスしたのをひた隠ししながらそう誤魔化すとボクは背を向けて読書開始する。

昨日振りに突然出てきたと思えば何なんだよ全く……。

そして本を読み耽るボクの周りを妖精サイズのトシキは軽く飛び回り、同じように気になった本を抱えては彼も読書を開始する。

―――が、早々に飽きたのか別の本を手に取り、ちょっとするとまた別の本へ手を伸ばしてはくつろぎながらページをめくる。

それは姉弟が同じ空間でゲームしたり本読んだり、各々好きな事をやりながらくつろいでるような。

そんな中、トシキは読書に飽きて本を床に置くと開いた本をマットにしてその上へ寝転がる。





「そう言えばトシキも文字読めるんだっけ」


「まぁ一応なー。つっても今は覚えて読めると言うより魔力読み取ってる感じ。お陰で第五の時、久々にセプト文字書いた時にゃぁ失敗したりして大変だったぜ」


「……そんな事もあったねー。あ、そう言えばあの時の『人誅ジンチュー?』って何だったの?」


「ん? あー……。あれはもしかしたらお前は置いて行かれるとか言う状況になり兼ねなかったから、日本語で何か書くかって話になったんだ。そしたらマエダが書きたいって言いだしてよぉー。

『日本人で漫画アニメ好きなら知っている作品の言葉しかないでござる!』とか騒いで書いてたけど、お前元ネタわかった?」


「元ネタ……? うーんごめんサッパリわかんなかった。ボクにだけ何かを伝える為に難解な単語を書いたのかって深読みしてたや」


「だよなぁー」


『おろー? これがジェネレーションギャップでござるかぁ……』



突然割り込んできた元気のない彼は掻き消えるくらい小さな声でよくわからないワードをまた口にしてすぐにフェードアウト。

そしてそんなやり取りも忘れ、ボクはまたいつもの読書を読み続ける機械と化す。

時折、トシキが話しかけてきてはそれに対して軽く返し……を繰り返していると部屋のドアが開く。


「お前、明日出発だと聞いたがこんな時間まで大丈夫なのか?」


「お疲れ様ですルシードさん。出発は明日の夕方らしくて問題無いです」


「そうかなら良い。ん……お前の横の―――」


「ようルシード、おひさし」


部屋に戻り、上に羽織ったコートを脱ぎながらルシードさんはボクの横で寝転がる小さな彼へ視線を向ける。

そう言えば一昨日の騒動の件で今、トシキがここに居るのは色々マズイんじゃぁ……。



「レオナ様に不敬を働いただけでは飽き足らず、今度は私に何かするつもりか魔王よ?」


「こないだの事は悪かったって。まぁ何つーかお前さんと話たい内容があってよ」


「ほう? 貴様が折り入っての話とは。―――で、何だ?」


「あー……。後でお前と二人きりでも良いか? そのよ……」


詰問を含んだキツイ言葉に対し、トシキは頬を掻きながら歯切れの悪い返答をしてみせる。

どうやらその話の内容がボクに聞かれてはマズイと言わんばかりの素振りをしたかと思えば沈黙が続く。


「それならボクは部屋に戻るよ」


「―――そうか。気を遣わせてしまってすまん。もしあれなら今日読もうとしていた本を持って行くと良い」


「え、良いんですか?」


「ああ、後で返してくれれば問題無い」


「ならお言葉に甘えてお借りしていきます。それじゃトシキも変な事しないようにね? ではおやすみなさい」


「ああ、悪ぃユウ。後で説明すっからよ……」

 




正直、先日の件の事もあってトシキたちがまた何かやらかすんじゃないかなんて不安はあった。

しかし本当に彼が隠しておきたいならボクが寝てる時間に部屋を抜け出し、ルシードさんに会う方法だってあるのにそれをしなかったと言う事は、今はまだ話せない内容なのでは? と察した。


レオナの件はまだ煮え切らないモノがあるけれど、あれもレオナとボクの現状を良くないと思ったキサラギさんがわざわざ危ない橋を渡ってまで起こした行動だった。

やり方は極端だし、危なっかしいモノだったけれど彼女なりに心配してくれていたのはトシキやウメコの話を聞いて知った。だから今の件も何かしら彼なりの思惑があるのだろう―――とは言っても簡単に信用するのはどうかと自分でも思う。

けど、何でもかんでも頭から全て疑うのは違う気がしたボクは本を手に取ると自室へ戻った……。












「で、わざわざ私に話とはなんだ魔王よ」


ユウが居なくなった本だらけの一室で彼は赤眼を細めるとそう言葉を向ける。

妖精サイズのトシキはそんな彼と向き合うと神妙な顔付きで見つめ、


「単刀直入に聞くが……レオナへ敵対してる王族貴族ってぇのはお前は把握してたりするか?」


「―――まぁいくらかは。しかしそんな事を聞いてどうする」


「一昨日の会議の時によ、イヤーな匂いを漂わせてる貴族が居てな……」



訝しげに返す彼に対し、トシキは眉根を顰め視線を逸らすとその先の言葉に詰まる。

それは過去の不快を語る事を躊躇う様子とも似た表情で、それをいくらか察したルシードは軽く吐息を零すと椅子の背に身を預け、その続きを黙って待つ。

部屋を照らす淡いランプの灯が語るのを今更迷う妖精の心を表すかのように揺らぎ、それに合わせて部屋の中に伸びる影はゆらゆらと揺れる。

そして迷いを振り切るようにくせっ毛の妖精は大きく頭を振ると顔を上げる。



「―――チッ、めんどくせェアタシが話すトシ坊替われ。

……はえー話がだ、ファーミの匂いさせたヤツがあの場に居た。そしてケディフェリスの水がレオナに擦りつけられてたんだよあン時」



舌打ちをして語り出すその口調は先程のトシキの物では無く、乱暴な物言いのキサラギの物へと変わっていた。そして目の前のルシードから先程までの冷淡な表情が消え失せる。



「……待て、ファーミとケディフェリスと言えば…………騙し水と狂い水のか?」


これまで何事にも動じないと言った態度で話を聞いていたルシードであったがその単語を口にすると同時に大きく眉を歪め、膝の上へ置いていた手が小刻みに震える。

それは会話で知った内容に対し、衝撃を覚えた物から来るものでは無く、指先にまで力が籠る様からして……憤り。

そしてそれと似た物を目に宿した小さな妖精は、それを確認するようにゆっくり口を開いた。



「ファーミはケディフェリス愛用者がその匂いを誤魔化すのに使う香水で別名・騙し水。そしてケディフェリスの水と言えば別名・狂い水。昔から一部の王族が好んで使う中毒性がつえぇ―――媚薬だ」


先日、職場の新人君(18歳)との会話の際にジェネレーションギャップと言う単語を向けた際、「ジェネレーションギャップってわかんないです」と返されて絶望しました……

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