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別の世界に行ったら男の娘をやるハメになったボクの話  作者: くうや
第五章 男の娘メイド・渡竜編
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第八十六話 「魔王封印体サマ」

短めです。

「う……ん…………」


「おお、起きたか」


「ヴィグフィスさん……あれ、ルシードさんも」



重い頭を動かしては自分はベッドから身を起こす。

えーっと……何で自室のベッドで寝てるんだ? ああそうだ。リスリムと一緒に騎士団へ行って、何でか模擬戦やる事になっておじいちゃんとも戦う事になって……


「―――そう言えばボク、負けたんですね」


「……ああ。しかしサマザ大司教相手に健闘した方だ」


「…………」



ヴィグフィスさんが励ましの言葉をくれるがボクは返す事が出来ない。

ジェネヴラと戦いを思い出しては言葉が出なかった。


「しかしあのジェネヴラとやり合うとはお前も無茶をやるなユウ」


「とは言っても手も足も出なかったですけどね……」


「あの方の扱う神獣ジェネヴラは対竜用に魔装された召喚獣だからな。私の鎖黒ざくろでも数秒で倒すほどの実力を持っている」


「ルシードさんのあの鎖黒ざくろでも数秒……?」


「それに加え、原竜リントブルムの古竜などが得意とする炎雷風属性の攻撃を全て無効化、ジェネヴラを使役するサマザ様自身も同じくその属性の攻撃全てを無効化とする衣を身に着けていらっしゃる。故に竜を蹂躙する姿から付いた呼び名が竜呑りゅうばみな訳さ」


 「炎雷風を無効化……だからケナズ系もミョルも効かなかったのか」



隣のルシードさんによる説明で自分の攻撃が一切通じなかった理由を聞き、同時に言葉に詰まった。

―――そう、その他の属性……ハガル系であればダメージを与えられたかもしれなくて、もしかすれば勝負は変わっていたかもしれないと言う事に気が付く。

いや、そうじゃない。

ボクは相手の事を気遣うような形であのおじいさんを過小評価してサンクリズルをはじめ、召喚スキルを使うのを躊躇った。

更には戦いの最中だと言うのに攻撃が通じないと諦め……思考停止したのだ。



「ほんと最近ボク、色々と負けまくりですよね。……はぁ」



模擬戦の事もそうだが、夜に行っている召喚獣との稽古でも負け通しな事を思い返しては溜息が零れる。

よくよく考えたら夜の稽古でもそうだ。フヴェズルングとフェンリルの予想外の戦い方やスキルに対して振り回され、仕様と違うなんて文句を言っては毎回負けている。

ルシードさんからは戦闘中に考え過ぎで動きが止まったりして隙が出来ているせいだと言われるけれど、正直どうすれば良いかわからず今に至っている。


「久し振りにお前の戦闘を見たが、何と言うかユウらしくない、とは思ったぞ」


「ボクらしく……ない?」


思い悩んでいるとヴィグフィスさんが顎に手を宛てながらそうボクへ向けて来た。




「あぁ。オレの印象だとユウはその圧倒的な力で蹂躙する戦い方か、相手を翻弄しては虚を突く戦い方をする。そんな印象が強かったからな!」


「ヴィグフィスの言う通り第五での後半はその様な戦い方が多かったのはある。遠距離で圧倒するか、近接したかと思わせて召喚などを行い、そちらに意識が行った所を狙う……変則的と言えば伝わりが良いかもしれん。しかし夜の稽古は逆に正面切ってやり合おうとしたり、変な気遣いが目立つ」



自分の戦闘スタンスってはた目にはそんな感じなのか。

正直無我夢中で戦ってた事が多いからそう言われてもピンとこないが思い返せばミョルとか魔法魔術系を出会い頭に大量詠唱で一気に決めたり、召喚でタゲを取ったとこをミョルで蹂躙……魔王戦に至っては相手の中に入り込んで―――と言われてみれば変則的と言うかからめ手が多い。


「お前は細かすぎる性格のせいか思考が一点に行くのが良くないな! もっとこう、広く気軽に見渡すくらいの心構えで戦うべきだろう。そして思うままにガンガン攻めるくらいで良いんじゃないか?」


「逆にお前は何も考えなさすぎな戦いが多いがなヴィグフィス」


「フ、フハハハハハハハ! そ、そこは心強い仲間が居るから良いのだ!」


「物は言い様だな」


ルシードさんの辛辣な一言を彼は笑い飛ばして誤魔化す。

そしてそのまま旅をしてた時のような談笑となり、いくらか時間が過ぎると久し振りの楽しいひとときは終わる。独りきりとなった自室はいつも以上に静寂を見せ、ボクはそのまま眠りに就いた。












―――カチカチ、カタカタ……と薄暗い部屋の中で聞き慣れた音が響く。

自室を照らすモニターから見えるのは俯瞰視点で進めるネトゲのソドソ。

敵を見付けてはスキルや装備、アイテムを割り振ったショトカを押して敵を狩る。

ただ効率だけを求め、目標のモンスターをひたすら狩り、時間になればいつものマップへ移動して目当てのボスを倒して行く。時々襲ってくる邪魔者プレイヤー相手には召喚を使って妨害しつつ、相手が対策していなさそうな状態異常を振り撒いて対処に追われたところを仕留める。


それはキャラ職業ジョブのトリックスターの持つ、キリング系をフル活用したプレイング。

他者すらも踏み躙り、自由気ままにゲームを進める……それがボクの、ネトゲでの戦闘スタイルだった。
















「―――竜がもう上陸した……!?」


「声が大きいですよ魔王封印体サマ。ただいまその件で緊急会議中、指示があった場合すぐに対応出来るように自室待機していて頂けますか? 家政婦長ハウスキーパーには私の方より話を通しておきます」


「わ、わかりました」


午前の仕事中にニーアさんより呼び出され、信じられない話をされて思わず声が大きくなる。

現在未使用の応接室の一つに入って人が居ないのを確認して話をしているが、「どこで聞かれるかわからないのですよ」と鋭く赤眼を細めて彼女は警告の一言を刺した。

しかし久々に会ったけど、相変わらずこの人は怖い……。ボクを見る目付きもそうだが、声のトーンや向ける言葉の節々に嫌味に思える部分があるし、言葉の中にあるトゲが凄い。

大体、魔王封印体「サマ」ってなんなんだよ……むしろサマいらないでしょ……。


「それと」


「は、はい!?」


ジロリとこちらを睨まれ、自分は考えてた事を見透かされてたのかと思わず上擦った声で返事。


「この件は他の侍女には他言しないように。転移魔法陣作成の人手が足りずに駆り出されたとでも誤魔化して下さい」


「は……はい」


「…………魔王封印体サマの本来の仕事は食客。今一度それを心して下さい。では」



その言葉で会話は終わる。

他の侍女には……って事はノーウェンさんとか皆に話すなって事だよね。

要は仕事仲間への誤魔化しも「食客」としての仕事だから文句は言うなって言いたかったんだろうな……。

彼女の言葉に反発を覚えながらもボクはそれを噛み砕き、みんなへニーアさんから言われた通りの作り話を伝えると罪悪感から逃げるように自室へ向かった。



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