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別の世界に行ったら男の娘をやるハメになったボクの話  作者: くうや
第五章 男の娘メイド・渡竜編
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第八十三話 「ね?」



「レ、レオナ様落ち着いて下さい! そのように魔王を刺激されては……」


先程まで会話で済んでいたやり取りは一変し、一触即発な状況と化していた。

レオナが視線を向ける先を中心に光剣が円陣を組んで頭上を回る。

それは五つの層を作り、ゆっくりと右回りと左回りと規則的に回転して見せる。


「おいおい……無詠唱で聖封印術ってェおかしいだろ。精度も第五の時の比じゃァねェしよ。だがオメーは大事な事忘れってよなァ? ソレ使ってどんだけ脅されても怖かァねェぜ?」


キサラギは挑発するように下卑た笑みを浮かべては顔を歪める。

しかしレオナは安い挑発に乗る訳でも無く、小さく息を吐いては相手に猶予を与えるような態度を取って見せる。


「レオナ! お前がそのように敵意を見せては魔王に反抗の機会を与えるのと同じだ! 抑えろ!」


先程まで一貫して毅然とした態度を見せていたリスリムも目の前で繰り広げられる光景に危機を覚え、立ち上がっては声を上げる。

しかしそんな声に対し彼女は流し目で答えては静かに口を開ける。


「何故ですかセディンカーマリアル・パーディンズ・リスリムよ。この者は此度の選帝を止めた方が良いと言い放った。これは私だけでは無く、同じ立場に在る貴方を始めとし選帝に携わる王族貴族の方々の全て、そしてそれに関わるこの国の国民だけでは無く、それに力添えをして下さっている三大国家をも侮辱した内容で到底許される話ではありません。違いますか?」


粛然とそう言い放つ彼女の言葉に誰も反論が出来ない。

それもその筈、先程リスリムは名誉ある名家と血筋を侮辱したとキサラギに説いた。

そしてキサラギはそれに応え、それを評価したのだ。

故にレオナが激昂する事に誰も口出しする事が出来ず、何度も止められたにも拘らず言い続けたキサラギも放った言葉に対し撤回をする事も出来ない。


「―――で、そんなにいきり立ってるのはイイケドよォ、やんのか? あァ?」



詫びる様子も無い彼女の言葉に応えるようにレオナはブロンドをゆっくり揺らしては左手を真横に伸ばす。

その先には先程キサラギが砕いたElfの球体の残骸。

目を細め、不敵に薄く笑みを浮かべるレオナのその一挙一動は年頃の少女の物では無く、レニア女王陛下を思わせる威圧感を見せる。



「そうね。でもこれだけじゃ貴女に通じないし、面白くない……アーフェクトリー・ミスティックスピア」


そう呟いたと同時に宙を浮いていた剣は砕け散り、球体の残骸も光の粒となる。



「待って、妾の指輪が! ブレスレットが! ああネックレスもどう言う事じゃあ!?」


「わ、わしの聖護符が!! 聖護符が!!」


「わ、わわわたくしのマジックステッキの石が! 石がぁあああ!!」


要談の間で反響する数々の絶叫。

そしてその中を金と銀の光が飛び交ってはレオナの周りを高速で不規則回転したかと思えば集束し、キサラギの頭上で一本の槍が垂直に立つ。



「―――申し訳ありません皆様方、後程お返し致しますので」


「……マテ、何だァ……これ」


金と銀が入り混じるシンプルな造りの槍はキィイインと微かに音を奏でながら宙に浮く。

Elfで造り上げた物だと言うのはわかったが、先程の聖封印術の剣とは全く別物だとキサラギは察した。

それは第五の戦いに於いて見せた聖封印術のどれにも該当せず、しかも他者のElfを織り交ぜて形成している為、レオナのElfを持っている事など関係無しにキサラギへ大打撃を与えるだろう。



「貴女が第五でユウにしていた事の応用をしただけ。

では貴女がさっき述べていた『ユウのこれからを決めてやるくらいの事をしないのか?』と言う言葉通りに言わせて頂くわ、魔王よ退きなさい。そしてユウを返しなさい」



冷酷を宿した瞳でレオナはそう威圧する。

キサラギは頭上にある槍を今一度見やり、前に立つレオナに視線を向けると堪え切れずに失笑を漏らす。


「くくく……くははははははッ! ちょォっと虐めてやるつもりがよォ、出来るなら最初からやれってんだよったくよォ!」


緊迫した中で声を上げては満足気な顔を向ける。

目的としていた物が達成されたと言わんばかりに、嬉しそうに口の端を上げて。


キサラギが今回の一件で表に出てきたのは突き詰めればレオナの自立。

それは悠が居ない状況下でもはっきりとした意思で判断を下す事が出来る胆力と、自分にそれだけの事が出来ると言う自信を覚えさせる事。

本来ならばじっくりと時間をかけて、段々とそれを培う物だがレオナにはそのように時間をかけている暇も無く、同時にそれを示すだけの物を早急に強いられていた。

故に悠を引き合いに危機感を覚えさせ、明確な敵と言う対象に自らなる事でレオナへ決断を迫ったのだ。


かなりの賭けでもあったが、過去に出会ってすぐの悠を助けようとした行動力とホワイトプリンセスとして魔王討伐に至るまで耐えてきた彼女の底力を信じて、キサラギは劇薬とも言える手段を取った。

そして結果としてレオナはそれに応え、それを達成したキサラギは安堵と歓喜ゆえに声を上げて笑ったのだ。


しかしそんな魂胆などレオナが知る由も無く、何を言わんとするか理解が及ばない彼女は警戒に薄く目を細める。


「そう睨むなよ……わーったよ。ユウを返すぜ、じゃァな」


彼女は手をヒラつかせてそう答える。

と、同時にスーツ姿のキサラギの身体は大きく歪み、委縮したかと思うと薄紅色のドレスに身を包んだ悠の姿にへと変わる。

一同は緊迫した事態を前に引き攣った顔でその様子を見守り、状況がイマイチ飲み込めない悠はキョロキョロ辺りを見回しては頭上にある槍に気が付くと驚きの声を上げ、困惑した表情。



「驚かせてごめんなさいユウ……アーフェクリア」


彼の姿を前にいくらか頬を緩ませ、頭上に展開していたミスティックスピアを解除する。

散開した光は先程騒ぎ立てていた淑女や中年たちの元へ帰り、元の形に戻ると持ち主たちは安堵の声を漏らしレオナは今一度謝罪の言葉を口にすると視線を戻す。


「ごめんレオ……ナ。どう言う状況か聞いても、良い?」


彼は入れ替わっていた間に何があったかはわからないが、かなり揉めた事はいくらか察していたようでおずおずとそう尋ねる。

問いに応じる形で彼女は柔らかく微笑み、心配要らないよと言った様子で見つめる。


「ちょっと魔王とキツイ口論をしただけよ、ね? 皆様方」


いつもの清涼を含んだ声色で彼女はそう向ける。

確かに少々キツイ口論を交わした、と言えなくもない状況であった。

だが一触即発な状況であったと誰も言えず、皆が口々に「そ、そうですな」と答える。


先程まで頼りない素振りで幼さが垣間見えていたレオナは突如、レニア女王が見せる威圧を漂わせてかと思えば言葉だけでは無く実力で魔王を圧倒して見せた。

同じくElfを扱う者たちは彼女が行った、『他者のElfを集め、それを用いて術を展開する』と言った芸当を目の当たりにしてその力を認めざる得なくなった。

と言うのもElfとは本来は継承して使う事が出来るハズの物にも関わらず、レオナは他者のElfを魔法陣も無しに分解し、自身の力として扱った。


これは前例を見ぬ技術であり、彼女を過小評価していた多くの王族貴族たちは覚えた戦慄を見せぬように必死となるしかなかった。




「ユウ、もう一度確認するけれど大迫轟の節メリサリンド・ルゥで戦いに参加するって話、問題は無い?」


「う、うん。初めからそのつもりだから……大丈夫だよ」


「……わかった。ありがとう」




悠の言葉に今一度頷くとレオナはゼルートへ顔を向けた。

そこに迷いは既に無く、真っ直ぐな視線を受ける老人はその先に続けられる言葉を静かに待つ。


「此度の大迫轟の節メリサリンド・ルゥに於ける戦いに於き、ニイシロ・ユウは戦いに参加すると言う事をラキナ・ルゥ・レオナ、この私が改めて明言致します。つきましてはセディンカーマリアル・パーディンズ・リスリム殿が率いる部隊に所属させて頂く事を願います」


「承知致しました。……しかし何故リスリム様の部隊を御指名されるのか御聞きしても良いでしょうか?」


「彼とユウは何度か面識もありますし、私も昔からの顔見知り。気心が知れた仲故に任せたい。そのような私情です。……ダメでしょうか?」


「いえ、問題ありません。リスリム様も宜しいですか?」


「―――フンッ! 一つ言わせてもらうなら、せいぜい僕の顔に泥を塗らないようにとその侍女に指導しておけだけだ!」


予想だにしなかった形で自分に話を振られ、いくらか反応が遅れるも相変わらずの態度でそう言い放つと彼はそっぽを向く。

老人はそれを合意と判断し、他に異論がある者は居ないか確認を終えるとレオナへ視線を戻す。


「それでは他の方も異論が無いようですので希望通りの形で、と言う事で。では続きましてどの迎撃位置に置きましての割り振り等について話を進めさせて頂きたくあります」





それから要談を含んだ作戦会議は滞りなく進み、2時間ほどで纏まると解散となった。

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