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別の世界に行ったら男の娘をやるハメになったボクの話  作者: くうや
第五章 男の娘メイド・渡竜編
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第八十二話 「ドンマイ」

「だからってさ、あんなタイミングでさ、あんな酷い言葉を向けてさ、サイテーだよ……」


ウメコが言わんとした事は何となく察した。

しかしどう思い返してもやっぱりキサラギさんが放った言葉をどうしても許せず、薄暗い空間の中と同じ色を含んだ溜息を交えてボクはそう零す。


「萌えっ子はさー甘すぎるんよ。優しさじゃなくて、甘いん」


「急にそう言われてもわかんないよ。ボクは自分の出来る事をしようとしてるだけだし……レオナの助けになりたいって思ってるだけで」


「ウチは違うと思うん」


「……どう言う意味さ」


「萌えっ子がこの世界で生きる意味になってるんよ。あの子の存在その物が」


その言葉はずるりと手を伸ばし、ボクが違うと並べる言い訳の上を這って見せると無自覚にも胸の内に潜んでいた核心を握り締める。

確かにレオナに対してボクは好意を抱いている。

けれどそれがはっきりとする以前より、どこか彼女に固執していた。

同時にぶり返す言葉。



『―――ですがあなたはそうやって拾った命を投げ出す理由には思えないのはわたくしの考えすぎでしょうか?』

『―――だがユウはどうしてそこまで出来るんだ? いくらレオナ様に想いを寄せてると言っても流石に』



思い返される言葉と同時に「もう大事な人を失いたくなかった」からとボクは答えた。

けれど違う。その先にあるモノに気が付くが、言葉にするのを自分は即座に覆い隠す。


ボクは………………



「まぁ別にそれ自体は良いと思うんよ。人それぞれだしね」


「……え?」


「問題はそれよりレオちーも思考停止して、萌えっ子に依存してるどころか萌えっ子基準で今しか見えてない事なんよ」


呆然とするボクの鼻をツンツン突っつきながらウメコはふーんむと唸る。

どう言う事かがわからず思わず首を傾げ、自分は黙ってしまう。


「解りやすく言うとだね、レオちーが補助輪ナシに自転車の練習してるとこを萌えっ子がコケ無いようにずっと後ろ掴んでるみたいな状態なん」


「う、うん」


「人それぞれだけど、補助輪ナシに自転車乗れるようになるまで色々あるよね?」


「真っ直ぐ走れなくて何度もコケたり、怪我したり……」


「それを繰り返して段々上手になるのは解るよね?」


「……うん」


「でも萌えっ子が今やってるのは『怪我したら痛いよね! 大丈夫!?』って過保護に守り続けちゃってる状態なんよ。それじゃいつまで経っても一人で走る事は出来ない、いつまでも萌えっ子って言う支えが無いと進めなくなってしまうんよ。そんで今のレオちーはそれにどこか気が付いてるにも関わらず、それに甘えてるん」


確かに彼女の例え通り、ボクはレオナが傷付く事を強く恐れている。

だから傷付く事が無いように、悲しまないようにとボクは出来る事をしようと今している。

ああ、そうか……そうじゃあない。


「ボクは……レオナを自分と、重ねてるの……か」


また一つ、無自覚の中にあった感情に気が付き思わず零れる。

だからレオナが傷付く事を過剰に恐れ、キサラギさんが放った言葉をその場限りの感情で判断していたんだ。



「でもボクが深く干渉しないように気を付けたとして、レオナも同じようにその……依存してた場合どうしたら良いか自分にはわかんないよ」


「その為にアキラさんが表に出たん。大丈夫なんよ」


「キサラギさんがって言うのにいくらか不安があるけど……どうしてキサラギさんが?」


荒っぽいイメージでそう言う事は面倒だと一番言いそうな彼女がレオナの為に動いたと言う事に疑問が浮かぶ。

何と言うかレオナの事を一番嫌がりそうな印象もあるし、言ってしまえばこの間まで敵だった訳だ。

ボクに協力してくれるのは同じ界客で、そう言うやり取りが少なからずあったからと理由があるけれどキサラギさんとレオナの間にはそれが希薄だ。



「んー何かねぇアキラさん曰く、『告ったタイミングがクソなんだよ焦りすぎなんだよマジイラつくんだよあいつァ』って怒ってた」


「ど、ど言う事……てかちょっと待って。前に聞きそびれたけど何でそれを知ってんの!?」


「そりゃまぁ繋がってるから色々と見てるに決まってるんよ」


「NOOOOOOOOOOOOOOOOOッッッ!!」



絶叫しながら顔を覆って身を丸める。

これあれだ、穴があったら入りたいってヤツだ。てーかリンクあるの思いっきり忘れてたよもう今のボクにプライベートなんてない……。

よくよく考えたら虐め受けてた時より酷い羞恥プレイじゃないコレ? 等と思い返すと気恥ずかしさが加速し声は声にならず、気が付けば悶絶しながら呻き声しか出ない。

そんなボクの背を慰めの手二つがポンポンと叩く。


「大丈夫なんよ。萌えっ子が我慢出来ず爆裂魔法放ってる夜中とかはリンク切ってあるか―――」


「ああぁあああぁああああああああああああああそれもうやめてもうやめて仕方ないだろボクだって男なんだよ我慢してるんだよでも無理なんだよてか何でウメコはそんな当たり前にそう言う話してくるんだよぉおおおおおおおおおおおおおぉおおおおお!」


「「ドンマイ」」


「…………やめて、惨めになるからほんっとやめて」


公開処刑により悶絶する自分に向けられる憐みの声はこれ程に無い同情を含み、また優しく背を叩く。









「で、告ったタイミングがーってどう言う事? イマイチわかんないんだけどさ」


「ウチも恋愛経験無いからよくわかんないんだけど、アキラさんはムードぶち壊しでこれからの中で悩んで話をしてる最中にそう言う話をするのは焦りから気持ちを伝えたんじゃって言ってたんよ」


「焦り……?」


「アキラさんの話だと、レオちーは選帝で女王になる事が出来ないって思ってるんじゃないかって言ってたんよ。そして無理だった場合はリスリムボーイに嫁ぐ事になる。そうなると萌えっ子とゴールするのは不可能になっちゃうからそうなる前にそー言う関係になっちゃって、外堀を埋めてしまおうとしてたんじゃないかって言ってたんよ」


気を取り直して先程の続きを聞く。

しかしその内容は予想していた物とはかけ離れていた。


「待って、ちょっと待って。それってレオナ相当悪い子に聞こえるんだけど、てかめっちゃ怖いからてかソレ、ヤンデレじゃん? むしろサイコパス入ってない!?」


「あーごめんごめん。レオちーがそう計算してって話じゃなくて、無意識にそう計算して告白って形になったんじゃないかって言ってたんよ」


「いや、無意識の方が余計怖いよっ!?」


述べられる内容に対して頭が追い付かない。

てか無意識に計算ってどんなだよ。それってもう二重人格とか多重人格でもう一つの人格がそう目論んでたって言った方が納得するレベルのヤバさだよ。


「こうも言ってたんよ。『子宮で考えた結果だろーなァ』って」


「……ナカミジューヨンサイノボクニハ、イッテルイミガワカリマセン」


「ウチ16歳なんよ」


「ワーイトシガチカァーイウメコオネーサーン」


キャパオーバーした自分の脳はアラートを鳴らす事無く思考停止。

いくら薄い本やゲームでそんな単語を知っていると言っても異性からそんな単語を向けられたりしたらどうしたら良いかわかりません助けて下さい雪姉さん。



「アキラさん曰く、『最終的にどんな形でも一緒に居られるように本能で答えを出した結果』って。けどレオちーはそれの為に自ら立ち向かわず、萌えっ子に縋ってるから気に入らないっても言ってたんよ」


噛み砕かれた言葉にやっと納得が行く。

確かに言われてみれば彼女は結婚なんて色々すっ飛ばした内容を口にしていた。

世間知らずだから……と言われればそうなのかも知れないがそれでは説明し難い違和感と言うか、彼女の言う通り焦りにも似た物があった。

そしてこれは自分では到底気が付く事が出来なかったであろう話だろう。

その証拠として違和感を覚えてもそれについて思考が傾く事が一切無かった。


「ま、アキラさんなら上手くやると思うんよ」


幾らかの不安をなだめるようにウメコはにへらと笑って見せる。

まぁ色々と心配だけど、と晴れない感情を何とか落ち着けつつ待つ事にした。

何の算段も無くキサラギさんが強硬手段に出たとは思えないし、レオナなら何かに気付いてくれるはず……そう信じて。











「つってもあの人、気が短ぇからスンゲー心配なんだけどマジ」


そして空気読まない一言が心を落ち着けるボクの感情を横殴りした。

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