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別の世界に行ったら男の娘をやるハメになったボクの話  作者: くうや
第五章 男の娘メイド・渡竜編
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第八十話 「激しく動揺しすぎじゃねェか?」

「……ユウ、今……なん……て?」


愕然とした表情で顔を向けるレオナを前に悠はだらりと椅子の背もたれに身を預けると首を垂らしながら今一度彼女を見やっては歪に口角を上げる。


「甘えてんじゃねェ、つったんだよお嬢ちゃん」


「……魔王っ!?」


その一言と同時にレオナが立ち上がると数名が手で術式を切り、悠たちの真向かいの席に置かれる球体は光ったかと思うと―――


「遅っせェよ」


バキィン! と激しい閃光と金属音を辺りに響かせて粉々に砕け散る。

右手をピストルに模り、術を展開しようとした数名に指先を向けては不敵に笑う。


「ば、馬鹿な! 発動と同時に破壊……だと……」


「ったりめェーだろォ。これ見よがしにコアをうんなとこ置かれてまともに喰らう方がバカって話だ」


「ぬぅならば……!! 其れは痺れを過ぎては灼熱を覚える異色、其れは悠久を魅せる無色! 其れは久遠を模る汝を送る柩の白色! フェージネリアエネッッ!!」


「ま、待って下さ―――」


遮るレオナの声も虚しく、詠唱が終わると同時に悠を中心に魔法陣が展開されて術が発動し、氷雪にも似た白塊が高速で彼の周りを回る。

激しい発光が辺りを強く刺激し、その光景を見守る者はみな目蓋を閉じる。



「効いてやれねェなァ?」



一言と同時に破壊される白塊。

それは水中で砕けたガラスのようにスローモーションで弧を描き、それらが落ちる中で腰掛けたまま円卓の上に足を乗せて悠は笑う。

その場にいる一同は恐怖を前に声を上げる訳でも無く、起こった事に理解が追い付かずに口を半開きしては呆然とする。



「―――ってこのまんまじゃユー坊がやってるみてェに思われっか」


彼は何かを思い出したかのようにそう呟くと、頭をガシガシと掻いて見せたかと思えば幼い姿は大きく歪み崩れ、形を変える。

その光景を前にやっと悲鳴がいくつも上がり、場が騒がしくなる。


「その姿……あの時の」


「よォ久し振りだなァ? あんまりフザけた話ばァーっかしてっからよォ、思わず出てきたゼ」


自分へ言葉を向けたレオナを今一度見つめるとOL姿の彼女はソバージュを掻き上げながら不気味に笑って見せた。












「―――っぶは!? ど、どうなってんの!? ちょっとあのタイミングでどう言う訳だよ!!」


「っと、暴れんな暴れんなって! お前が今出てもダメなんだって!」


「駄目でござるよ! 今ここでリタきゅんが出ても彼女の為にならん! 堪えるでござるよー!!」


「最近やけに静かだなと思ってたけど、最初からこれ狙ってたな! くそ、はなせ!」



レオナへ酷い言葉を向けたと思えば意識が暗転し、気が付けば仄暗いいつもの場でボクはゴロウさんとトシキに地面へ押さえ付けられていた。

近頃静かだった事にいくらか疑問はあったけど、あのタイミングで……しかもあんな酷い言葉を向けた事に怒りが噴き出す。


「ちょいまーち。トシきゅんもゴロウちゃんも萌えっ子離したげて。これじゃ何が何だかわかんないだろうし、萌えっ子がAlp暴走させたらヤバイんよ」


「むう、確かに……」


目の前に座り込んだウメコの言葉に2人は戸惑いながらボクを解放する。

正直、どう言う理由があったとしてもあんな言葉を向けたキサラギさんに対しての怒りは消えない。

……けれど、話を聞かないとわからない。


「ごめんね。ほんとーは話すべきだったんだろうけど、それじゃ意味無いから黙ってこんなカタチになったんよ」


「……どう言う事さ」


「んーと、萌えっ子は最近のレオちーどう思う?」


「どう思うって……」


質問の意味が解らず言葉が詰まる。

身を起こして考えるが何を聞きたいのかがわからない。

正直、どう思うと聞かれても数日間顔を合わせていなかった為に何と答えるべきか迷う。

その前の事で考えたとして……選帝に於いての事で悩んでる彼女の助けにならなきゃって思ったくらいか。


「これから選帝があるから、彼女の力になりたいって考えてるくらい。後は目先の大迫轟の節メリサリンド・ルゥの事とか、第九の事とか」


「それ、答えになって無いんよ」


「え? どう言う事さ。レオナの事を聞いたんじゃないの?」


「んー……今の返答だと今のレオちーを見て萌えっ子がやろうとしてる事なんよ。そうじゃなくて、今のレオちーがどう映ってるか。それを聞きたいんよ」



その台詞にハッとする。

ウメコの質問に対し、自分がズレた返答をしていた事。

そしてこちらをじっと見つめるウメコの目が今までにない程、冷たく見えたかと思うと―――


「アキラさんの言った通りになっちゃってるんよ……」


彼女は軽く首を振ってはそう零す。

訳が分からず、でも何が? と聞き返す事も何故か怖くて口に出来ず固唾を一度飲み込む。


「2人とも大事なトコが見えてないんよ」



悲哀の瞳を向けるウメコを前に、予想だにしなかった一言を前にボクは言葉を失った。












「あーんまビビんなってよォ? こっちは話するだけだっつーの」


キサラギはテーブルの上へ乱暴にどかりと足を上げる。

戦々恐々の様子の一同を前にケラケラ笑って見せ、その中で恐れを見せていないのはレオナと数名と数える程で、相変わらず場は静まり返ったままだ。

数名は我先に逃げ出したいと言った姿勢で腰を浮かした者も居るが、プライドがそれを許さず辛うじて立ち上がらずに震えていると言った様子。



「……って言ってるそばからよォ、そこ。コソコソ術式組んでも魔力の流れが急激に変動すっからバレてっからな? それによォおめーら勘違いしてるみてーだが封印してるコイツを殺したら封印解けてどうなっかしらねーぞ? 第九目的のおめーらに取って死活問題だろ」


その一言に多くの人間が大きく肩を震わせ、それはテスト中にカンニングがバレて動揺する生徒のよう。

そんな様子を見飽きた、と言わんばかりにキサラギは大きく溜息を吐くとこの場を取り仕切っていた老人へ視線を向ける。


「ゼルートつったっけかじーさん。なァんか知らねェ内に大迫轟の節メリサリンド・ルゥに協力するっつー話になってっけどよォ……ウチらは一切手を貸す気ねェからな?」


「な……!? 貴様、200年前、そして15年前及び10年前の悲劇を引き起こし、このイリシアを穢して於いて言える立場とでも……」


「さっきからギャーギャーうっせェなこのガリポッキー野郎おめーにゃ聞いてねェんだよ。200年前の原因作ったのはウチら界客使って召喚に失敗したオメーらの先祖だろうが。15年前にしろそうだ。人のAlp勝手に引っ張って自爆してりゃ世話ねェわなァ?」


「ガ、ガリ……!? 貴様、聞いておれば界客の分際で!! 物は物らしく大人しく使われる事を全うすれば良いのだ!!」


「おーおーアツくなるとこそこかァ? しかも人を物扱いとか王族貴族は昔っから変わらずイカレてるなァ……おいレオナ。コイツ否定しなかったどころか逆ギレしてっし、このガリポッキーも主犯の一人にちげーねェぞ」


「な……!?」


「後おめーとおめーも、あとあそこのハゲ一帯も一気に魔力乱れてっぞ? こりゃひでェどいつもこいつも勝手に激しく動揺しすぎだろハゲだけにってか? ブハハハハ!」


「戯言も好い加減にしろこの女っ!! 魔力の乱れ等、適当な事を口にしおって何を以って15年前の事を我らがやったと口にするか!! 魔王と言えど斬り捨ててくれよう!!」


ハゲと呼ばれた中年の男は激昂すると声を張り上げ、手より光の剣を出して見せる。

その光は白色を強く帯び、その輝きからしてElfの力。

しかしキサラギは畏れる事も無くそれを見つめると相変わらずニヤニヤと相手を小馬鹿にした素振りで視線を向ける。

そして一言―――


「アツくなってっとこ悪ィけどよォ頭と剣が眩しいおっさんよォ」


「……最期の言葉なら聞いてやろう」


「あーどうも。とりあえずよォ……アタシがいつ、アンタにまで・・・・・・15年前の事を・・・・・・・やったなんて・・・・・・言ったっけ・・・・・? もう一度言おうか。激しく動揺しすぎじゃねェか?」


彼女はトントン、と自分のこめかみを指で叩いて見せては「少し頭冷やそうか?」と今一度挑発を含んだモーションを見せる。

その一言に言わんとする事を察した中年の彼は強く唇を噛み締めては押し黙り、上げる拳を納めるように剣を消すと何も言わずに席に腰を降ろした。


「ってーワケだ。こう言う腹黒い連中とのやり取りっつーのはこうやんだよ。覚えておきなレオナ様よォ」


首を動かしながらそう言葉を向けながらキサラギは不気味に笑って見せる。


彼女が取った方法は鎌掛けの常套手段で疑わしき内容を相手に向けながら挑発し、その際に相手が関与する別の内容も最初に提示して餌を撒く。そしてそれに反応したところへ主語を欠いた形で相手に向ける。

これをする事により感情で思考が偏った人間は一つの事に意識を持って行かれ、それを否定する為に相手は自分からボロを出す。

彼は見事それに引っ掛かり、自白してしまったのだ。




「魔王の貴女が何で……」


「……。とりあえずおめーらのやった事とかはどうでも良い。それよりだ、大迫轟の節メリサリンド・ルゥに関して話を進めようか? アンタらはウチらに協力しろっつー話、返答次第じゃ受けてやらねェ事もないゼ」


レオナの疑問に答える事無く、一拍を挟むとキサラギは話を切り出す。

彼女が口にした内容に小さく眉を動かしながらゼルートが顔を向け、鋭い眼光を向ける。


「―――と言うのは? 御聞き致しましょうか」


「お、物分かりが良くて助かるわ」


老人の射殺すような視線にも物怖じせず、軽いノリでそう返すと上げた足を下ろし、彼女は頬杖を突いては流し見てゆっくり一言。





神の鳥ラプターに関する情報を全てよこせ」


ついでだからもう一つ上げ。

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