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第七十四話 「レオナの父親だったりしてな?」

※少しきつい性的描写があります。

2016/8/10 式符の使い方を少し追加。

2016/8/11 ルシードの名前を間違っていたので修正。

暗い、くらい、闇。


真っ暗で静寂が周りを覆っていると言うのに不思議と孤独感は無い。

例えるならば星も月も見えない真夜中の森にいるような感覚。

自分一人きりだけども、辺りに息づく樹々が安心をくれるのと似た安堵が辺りを包む。


「―――――――――、―――――――。―――」


静寂の中で聞こえる擦過音に似た何かがボクに届く。

耳に意識を傾けると声に聞こえなくもないけれど、幻聴だと言われればそのままスルーしそうな弱々しい音。

そちらに顔を向けて目を凝らしてもその姿が見える訳でも無く、草が擦れ合うような小さな音が時々届く。


「誰か、居るんですか?」


気が付けば暗闇に向けて言葉を発していた。

その言葉に共鳴して擦過の音はいくらか強さを増す。そして音の間隔が狭まり、何度も何度も奏でられると重なっては時折はっきりと聞こえるようになる。

気が付けばそれは多くの人間のざわめきのようになると辺りを覆い、何かの単語のようなものが耳を幾度も過ぎる。

そして耳元をそよ風が吹き抜けたかと思えば、それはやっと言葉になってボクに届いた。


「娘を……娘を、助けてくれ。頼む―――」


擦れた、酷く疲弊した男性の声。その言葉に強い悲哀と哀傷を感じ、ボクの胸を締め付ける。

知りもしない、初めて聞いた声のハズなのに何故だろうか……どこかで聞いた事があるような、と気が付けば記憶の底に手を伸ばすが、大気を震わせる音と突然流れる映像がその手を強く跳ね除けた。


「……ゥルォゴァアアアアアアアアアアア!!!!!」


それはおおよそ人が発する声なんかではなく、近しい物で例えるなら獣の咆哮。

地の底を這うような低音から、一気に金属の塊がぶつかり合うような高音を交えた耳障りな轟音が幾重も混じる。

それは耳を通じて頭蓋を震わせ、脳を痺れさせては眩暈と吐き気を引き起こす。

雄叫びに混じって流れる映像は黒と、銀と、濃い青。そしていくつもの傷痕と、生傷。

色は右から左へと、左から右へと好き放題に流れては使い込まれた金属のように鈍光を幾度も見せて走る。

目が慣れるとその色が鱗のようなモノだと自分は気付き、ふと中心に佇む黒い黒い球体へ目が行く。

入り乱れる景色の中、粛然を抱いたように在る漆黒に惹かれ、ボクは頭痛も吐き気も忘れてそれをじっと見つめる。

―――そして、球体の中に赤い火が灯ったかと思うと一瞬浮かび上がる小柄な人影……その光は冷たさを含んでこちらに向く。


それが何かがわからなかったが、その光が宿すモノが友好的な感情からかけ離れた物だと悟った瞬間、闇の中で同じ色を宿した赤がいくつも灯る。

その明かりに照らされ、赤黒く染まった多くの巨体はボクを取り囲み、剣のような不揃いな牙が並ぶ大口をこちらへ向けてきた…………









「うわぁああああああああああああああああああああっ!!!」



「うわっとヨイっしょぉおお!?」



ボクは恐怖から思わず声を上げて身を起こす。

迫り来る牙を前に死を覚悟し、泣き叫んで抵抗した……と思えば、涙目の視界の先にあるのは絶望の光景では無く、まだ明けていない陽に薄く照らされている自室だった。


「どうしたユウ。 だ、大丈夫か?」


「え、あ……きーちゃん? じゃないか、トシキ……か」



荒れた息を整えていると顔の前に飛び込んで来る心配を浮かべた小人の顔。

オレンジ色のゆるふわヘアーと浅黄色のドレスを揺らしながら小さな羽をパタ付かせる。

その姿を見て、夢だったのかと意識が現実に引き戻されてボクはいくらか落ち着きを取り戻す。

日差しの入り具合からまだ朝の5時くらいっぽいな、と過ると仕事の時間前に目覚めた事に少しほっとする。



「ちょっと変な夢見ちゃってうなされただけかな。あはは」


「夢? まぁ夢ってぇのは現実にあった事を整理する働きがあるっつーから……どーせオメーの事だから昨日の事でレオナでへーんな夢でも見たんだろ? ん?」


「ち、違うってば! そう言うのじゃなくて……変な声が聞こえたり、暗闇の中から竜みたいのがいっぱい出てきて襲われたりする夢」


「―――変な声? ちょいとくわしく」



先程のいくらか抜けた顔から一気に引き締まった剣幕を見せる小人。そして息がかかる程の距離までずずいと顔を寄せてきた。

唐突の豹変ぶりに気圧され、どもりながらボクは夢の内容を最初から彼に説明する。

その間、トシキは何も言う訳でも無く真剣に耳を傾けては何度か相槌にゆっくり首を動かしていた。




「で、襲われたとこで目が覚めたって感じ」


一通り説明をし終えると彼は空中で胡坐をかいたまま唸って見せては黙る。

改めて夢の内容を自分の口で話してみて思ったけど、夢くらいでトシキも大袈裟じゃないかな? なんて思ってしまったけどもいくらか生々しさを覚えただけにそれを口にするのは思い留まった。

と言うのも、夢で感じたものがほんの少しだけAlpの中に入った感覚に似ていた為だ。


「前に変な夢とか寝てて誰かの声がやたら聞こえたりって現象はねーか、って聞いたヤツが起きたんだろう。早い話が他の界客とお前が繋がったって話だ……あれ、それにしちゃリンクが通った形跡が見えねぇ? っかしーな」


「リンク? それって死にかけた界客とトシキたちの間に出来る繋がりって言うアレ?」


「そそ。俺らと同じ状態になってっから、お前も他の界客と繋がりが出来んのは普通の話なんだが……にしちゃぁ痕跡が全然ねぇなどうなってんだ?」


「じゃ、じゃあただの勘違いってヤツじゃあ―――」


「と思いたいトコだがお前の中のAlpが過剰反応してんのが不自然なんだよ。うーんもしかしてアレか。昨日の事を考えっとぉ聞こえた声ってのはぁ……」


彼は指をピっと立てては意味深に一拍、間を置く。



「レオナの父親だったりしてな?」


「は、はいィいいィいいいいいいいい!?」


「いやだって竜みたいな影が見えたんだろ? それって間違いなく大迫轟の節メリサリンド・ルゥを暗示してるし、娘を頼むってそこまで強い意志をお前に向けてくるって大迫轟の節メリサリンド・ルゥで何かが起きるんで、レオナパパが助けを求めてきたと考えたら説明つかね?」


「え、ええぇぇええ……」


彼の言葉に困惑で言葉が詰まる。

確かに彼の言う通り考えれば一通りの話が合う。

大迫轟の節メリサリンド・ルゥでレオナに何か危険が迫り、それに対しての助けの声。

通年より多く渡竜するって話を考えれば最悪、多くの人が亡くなるだろう。

そう言う事も含めて考えて行けば―――

いや、おかしい。何か肝心な事を忘れてる気がする。


そんな違和感を覚えて視線を上げれば小刻みに震えて口元を必死に抑える妖精さんの姿。



「……ってそんな訳無いじゃないか! 何でこの世界の人と界客のボクがリンク出来るんだよ! ボクをからかったな!」


「ぶっ! ぶわっはははははははははははは! やっと気が付いた! くそ笑える気付くの遅ぇっつーの! いーっひっはははははははははは!」


「こんのぉぉおお! 流石に怒ったからなぁあああ!」



怒り心頭で我を忘れたボクはくるくる回りながら笑いまくるトシキに襲い掛かる……が、ひらりと軽く躱されて更に頭に血がのぼる。


「コラー! 逃げるな! この、この、この! 銀の車輪ラッド! 銀の車輪ラッド! 銀の車輪ラッド!」


「はーっはっはっはっはっは! 速度強化したくれーで捕まるかってーんだ! イヤッフゥウウー!」


ネトゲスキルを使って追いかけ回しても彼は風に舞う木の葉のようにヒラリヒラリと伸ばす手をすり抜ける。くるくる回りながら挑発を含んだふざけた顔に余計に苛立ちを覚え、気が付けば部屋中をドタドタ走り回り、自分がメイド姿でスカートなのも構わず、アクロバティックに跳び回りながら生意気な妖精を必死に追い回す。


「く……っ。くっそぉこうなったら―――やぁああ!」


ベッドの上に飛び、天井、壁と三角飛びをして相手の予想を掻き乱しつつ先程手に取った枕を腰にあてて彼の視界に映らないように動く。追い回していた所を突如変則的な動きを見せた事でトシキの動きは狙い通り一瞬の隙を作り、それを目がけて枕を投げる。

風切りが空を割く音を奏でる中、カチャリ……と言う日常で聞きなれた音が。

しかし怒り心頭した頭ノイズキャンセラーはそんな些細な音を勝手にカットする。


「うわったぁああああッ!?」


ズバァアアアン!!!






トシキの叫び声と同時に響き渡る爽快な音。

それは部屋全体に響くと壁の間を何度か反響する。


「や、やったか……?」


確かな手ごたえを感じた自分はそう零しながら着地すると、その台詞がフラグでしかない事にはたと気付く。


「あっぶねぇ…………あ」


仕留めたと思えば手の間から逃げて行く蚊のように現れた妖精さんの姿に再び怒りが込み上げるが、彼が向ける視線の先へ顔を向けて一気に血の気が引く。


「―――少々気になってので来てみれば……」


久し振りに聞く声は勢いよくストライクした枕に阻まれ、いくらかくぐもる。

そして言葉の後に続いてズルリ、と滑っては遅れて落ちては乾いた音を立てる枕。

その先から現れたのは……



「まぁ、元気なのは良い事だが……早朝から随分とはしゃいでるなユウよ」


銀髪赤眼に眼帯の鼻血を垂らしたルシードさんだった。














「ほんとごめんなさいルシードさん。ちょっとカッカしてたら思わず……」


「気にするな。ノックの返事も待たず、騒がしさに興味惹かれ勝手に開けた私も悪い」



ボクの部屋のソファーに腰かけながら彼は軽く笑ってそう返してくれた。

一週間ちょっと振りだけど、何か数ヶ月会ってなかったような感覚を覚える。

それのせいか久し振りに会えた事が嬉しくて思わず笑みが綻ぶ。


「そう言えばルシードさん急にどうしたんですか? 今って色々忙しいって聞いてましたが」


「……ああ、名の通りの仕事で最近忙しいがいくらか時間が出来たのでな。あと……」


彼はじっとボクを見つめては何かを確かめるような素振りを見せ、ソファーの前のテーブルの上にフィギュアのように静かに座るキーリエことトシキを一瞥して言葉を続けた。


「ユウの魔力、と言うよりAlpだな。少々気になる揺らぎを感じたもので顔を出したのさ」


その言葉にボクは思わず固まる。

トシキならわかるけどもどうしてルシードさんが即座に気付いたんだろ……そう言えば魔力を感知出来る力を持ってるんだっけか。もしかしてそれで察知したのだろうか?

ボクは少々戸惑いつつも先程見た夢を話す事にした。




「―――なるほど。理由はわからんがそれによってAlpが揺らいだ訳か。夢がこれから起こる事なのか、ただの夢か確かめるすべは無いが、レオナ様にはまだ話さない方が良いかもしれん。流石に無いとは思うが前国王の声だった場合色々と問題が出てくるしな……そうだな、念の為にニーアとアミィには伝えておくか」


顎へ指を宛がいながら彼はそう口にする。

夢だから気にするなと笑われるかなって不安だったけども、ルシードさんはそんな様子を一切見せずに真剣に聞いてくれた。

しかしルシードさんが来るほどAlpが乱れるって結構危なかったんじゃ……なんて今更になって少々不安を覚えていると彼は立ち上がる。



「さて、もう少しゆっくりしていたいところだがそろそろ戻らないとまずいな」


「すいませんわざわざ来て頂いて……」


「気にするな。それにそちらの方も問題なさそうで安心した」


彼が向ける視線の先には先程から一言も喋らずテーブルの上に胡坐をかいたままのキーリエさんは、視線に気付くとフイっと顔をそらしてそっぽを向く。

前にルシードさんが魔王の話の際に難しい顔をしていたのを思い出し、心配になりながら見守る。

しかし心配を余所に彼の顔からは以前のような険しさは失せており、表情も大分柔らかだった。


「ああそうだ……これを渡しておこう。この式符を持って私の名を口にすれば私の部屋に直で来れる。もし何かあったら尋ねてくると良い」



彼はそう言い残し、部屋を後にした。


















ぐじゅ……くちゅ。くちゅくちゅ……。

薄暗い中で湿った肉と肉が擦れ合う音が響く。

嗚咽とも嬌声とも取れるケダモノが漏らすような声が時折聞こえては先程の音は激しさを増す。

その音に不思議を抱いて一つ足を進めれば生臭さと生暖かさが漂い、思わず顔をしかめたくなる。

匂いの先へ視線を向ければ大きなベッドの上で一つの醜い肌色が艶やかないくつもの肌色に手を伸ばし、舌を這わせ……と目をそらしたくなる光景が広がっていた。



「ああ、欲しい。欲しい欲しい欲しいぃい……あの子供が。あのまだ熟れきれていない子供が」


汚らしい顔を歪めながら中年の男は涎にまみれた口で欲望を吐き出す。

同時に男を囲む幼い少年少女らは狂ったように声を上げては、恍惚に頬を染めるとくたりとベッドの上に倒れる。しかし男はそんな事も構わず幼い身体へ貪るように行為を続ける。

悪臭が充満するその一室は見回せば豪勢な造りで、部屋の絨毯も細かな刺繍が施されどこかの名家の一室であろうと伺える。

しかし部屋の中で行われている催し物はそんな豪勢さからかけ離れた醜いカーニバル。



小太りの彼は傍にある大きなブランデーボトルのような瓶を手に取り、傾けては中から垂れる黄金色のそれを浴びる。横たわる者たちにもドレッシングのようにそれをふんだんにかけると、先程の物とは比べ物にならない程の声が木霊する。

黄金のそれを浴びた者たちは狂ったように身体を痙攣させ、叫びにも似た嬌声を撒き散らしながら男に縋りついては乱れる。

そして音と熱は激しさを増し、ベッドは悲鳴のように何度も音を立てる。



「欲しいぞ、欲しいぞ。レオナもあの子供も……あの魔王の子供も!」



男の目は欲望を色濃く宿しながら荒れた息の中、絶頂と共に願望を吐き出した……。

書いてて涎まみれとかコイツまじばっちぃなって思いました。

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