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第七十三話 「―――貴方の様な勘の良い方は嫌いですよ?」

アカツキ。

トシキたちが彼と知り合ったのは召喚が失敗し、Alpが激しく入り乱れる中だった。

多くの感情と殺意、悪意たちが混濁する激流の中でアカツキはその意識を切り離し、それを抑制する形で一緒に霧の中に消えて行った。

交わした言葉は少なく、Alpの中に呑まれるトシキを引き上げた恩人。と、彼の中ではその言葉が全てだった。



『おれが言えた義理じゃないんだが、出来たら全員を元の世界に帰してやってほしいんだ。もうおれにはムリだからさ、悪い。頼む―――』


消え入る声でアカツキはそう口にして、霧に溶けて行った。

結果として霧がイリシア大陸を覆うと言う事になってしまったが、悪意の強いAlpを霧として吐き出さなければ激情に呑まれた魔王によってイリシア大陸は第五外大陸のように跡形も無く消えて無くなっていたであろう。しかし、その事実を知り得るのはトシキたちと当時の事故に携わっていた関係者一握りだった。



「マジかよ……あの人関係者とか聞いて無いんですけど。200年越しの衝撃の告白とかマジ勘弁してほしいんすけど」


彼はハァ、と大きく溜息を吐き出してはうな垂れながら座り込む。

自分を救ってくれた存在が未だに続く大きな問題の原因の一つと言う事実に対して感情が追い付かないと言った様子。

しかしキサラギはそれに対して取り乱す訳でも無く、腕を組んだまま静かに佇んでいた。


「―――アカツキの事ァ今更言っても仕方ねェ。アイツが居なきゃウチらはお陀仏だったんだ……それで充分だろ。

アタシは魔法大国はアズで記憶してたがァ、アズライールってのが正式な名前か? Alp持ちのあの女と同じ名前だがァ、偶然じゃねェよな?」


鋭い目を細めながら彼女は言葉を述べる。

自分の中で違和感を覚えたものを確かめるように、感情に任せてまた間違わないようにと言った表情で慎重さを胸に置いた様子で。


「大昔に呼ばれていた正式な国名であり、彼女は関係者です」


「……あの女は霧の影響化で当時の記憶がねェとかホザいてたが、あの戦いで発動した法陣は対魔王の物だった。そしてクラックを目的としてるなら、それを固定化する働きのあるAlpとElfを魔力に還元する働きがある物を仕込んでた理由がイマイチわっかんねェんだわな。そしてクラックを作りたいなら国の抱えてるElf持ちとあの女のAlpなり、巫女のAlpをぶつけりゃいい話だっつーのに何故それをしねェのかが疑問だ」


「それは黒華本人が知らない……いえ、思い出せていないからですね。あの法陣に関しては貴方たちが打ち破るのは想定内でしたし、目的はまた別ですから。そしてローズや黒華本人の力を用いて召喚を行わない理由はゲートまで作れてもラインを作るにまで至らないのが理由です」


「思い出せない? どう言うこったそりゃ。ウチらがどうにか出来るのわかっててどうしてうんなもん……。しかもライン作れねェって問題でもあんのか?」


「質問のいくらかは与えられていない内容なので現状お答え出来ません。2人がラインを形成出来ない理由としては、Alpの中に『元の世界に帰る』と言った強い意志が足りない為にベクターを確保出来ないのです」


「全部に答えるってワケじゃァねェのかよ。……はァ。要するにあの女はてめー帰りたさに召喚するワケでもねェって話か……つっても所有権が理由で脅されてやるようなタマじゃァねェし、目的は何なんだか」


キサラギは自前のソバージュ頭を軽く振っては返答の内容を噛み砕いては整理を付ける。

自分たちと同じ界客が召喚を行っていた事実と自分たちが置かれた状況の原因であるクロカに憤りを感じているのは確かだが、それ以上に知らなければいけない事があると言った思考がその感情を冷やす。


「で、第九召喚がァ止めれないのはわかった。それはいつ起こる? 規模は?」


「時期はわかりません。ですが3年以内に起こるでしょう。そして規模は―――最低でも200年前に起きたレベルの物が発生します」


曖昧さを孕んだ返答であったが述べられた内容の前に一同は言葉を失う。

200年前に起きた物でさえ国のいくつかを滅ぼした物だったにもかかわらず、最低でもそのレベルの召喚が起こると言う話なのだ。


「故にアカツキが求めた物を確立出来れば、貴方たちの求める方法に行き着くのです……界客を元の世界に帰し、あちらの世界より魂を引っ張らずに意思の無い無機物などをこちらの世界に引っ張る方法が」


淡々と語られる内容を前に皆は何も答えない。

話される内容は全て理解出来る。しかし納得が追い付かず喋る事がいくらか阻まれるのだ。

口を開けば落ち着かせようとしている感情が不意に零れ、そのまま止まらなくなる事を恐れて。

そんな中、トシキはふぅ。っとワザとらしく息を吐き出してはうな垂れた首を上げ、胡坐をかいたまま彼女を見やった。


「で、その召喚には誰の力が使われるんだ? ユウとレオナはまぁ当然として……そんだけ大型の物になりゃぁかなりの人間の力が必要になるだろうし」


彼は過去に向けた内容から先に対しての疑問に切り替え、いくらか矛先を変える。

これからの事を考えるならば過去に対しての質問もするべきであるのはわかっていた。が、今これ以上はそれをするのは得策では無いと押し黙るキサラギを前にそう判断したようだ。


「……悠の力は利用されるかもしれないですし、されないかも知れません。レオナの力は使われません。そして質問に対して与えられていない物があるので全てお答えが出来ません」


「またダメな内容かよ。どーもユー坊に関係する事以外は答えられない事が多いみてェだなァ」


しゃーねェかと猫目の彼女はボヤくと拍子抜けした様子を見せた。

これ以上は質問しても無駄かと言った調子で軽く頭を掻くと、「今はこれ以上やめておくか」と自ら話題を終わらせる。

今明らかになる内容は一同を動揺させる物が多く、それを落ち着かせて質問を投げかければ答えが得られない内容がいくらかある。

それは平然を保とうとするキサラギたちのペースを乱し、僅かながらも苛立ちを抱かせるには充分な物。

故にこれ以上続けて感情的にならないようにする為、中途半端ではあるが話を終えると言う形がベストと彼女は判断したようだ。



「そーいや……」


キサラギがこれ以上の質問を諦め視線を逸らしたと同時にトシキは思念体を見上げては、彼女の一部分を神妙な様子で眺めつつ、慎重に言葉を向ける。



「お前ってクロカの思念体で、情報をそのまま反映しているんだよな?」


「そうですね」


「お前のスリーサイズって85、63、83で合ってるよな?」


「はい、間違いありませんね」


「もう一つ質問良いか? 黒華のバストサイズはいくつだ?」


「―――貴方の様な勘の良いヤツは嫌いですよ?」


「あ、あだだだだだだだだだだっ!? 踏むな、頭踏むなってヤメロッテ! 俺が悪かったから悪かったですからぁああああああるふぉんすえるりっく!?」



どこかの女王様と土下座した下僕のような構図で彼は頭を思い切り踏み締められる。

メギョリ! と古木を万力で締めたような不規則な音が辺りに響き、トシキは「ロープ! ロープ!」などと地面を叩く。



「よぉウメコ。さっき自律ねェとか言ってたがァ……明らかにあんだろコレ」


「だ、だねぇ。なーんと言うか面倒なのが増えちゃったんねー。うん」


「ちィーとばかし便利かも知れねェなんて考えたのは間違いだったかねェ。まァ良い。そろそろ止めてやろうか。潰れトマト出来っとこ見てるのは趣味じゃねェや」



そう言って思念体とトシキの過激なSMプレイを止めるキサラギの姿を前にウメコは「自分がするのは良いのかな……?」と、小さな声で呟くと遠くに見えるゴロウと言う名の潰れたトマトを一瞥した。






「で、これからどうしますかねぇ。ユウに思念体の事を話すか迷ってんだけどよ。要談の件もあっし、変に考え事を増やさない方が良いよな?」


「それァウチも同じ意見だな。今は言わない方が良いと思うぜ。特に自力で何とかしようとしてる最中だからなァ。あとレオナの事もあっからよォ……」


先程の騒ぎからいくらか落ち着き、腰を降ろした一同は膝を交えて話し合う。


「あーレオナか。告白したんだったな。確かにそれを考えたら今話してもあんま良くねぇか……これでユウのヤツも晴れてリア充か。まじ爆ぜろ」


「いや、アタシが言ってるのはそう言う事じゃァねェよトシ坊。レオナ個人の話だ」


口を尖らせて僻みを含んだ言葉を吐き出す彼を軽くスルーしては珍しく真面目な態度で彼女は返答する。

肩透かしを食らったトシキは目を白黒させながら首を大きく傾げては疑問を見せる。


「今のレオナはユー坊に依存しすぎだ。好いた惚れたっつーのもあるがァ、ありゃ良くねェ。何かをやるにしてもぜぇんぶユー坊ありきの思考に偏りすぎてる」


「それ言ったら萌えっ子も同じく依存してると思うんよ? 今やってる事もレオちーの為じゃん?」


「ああ。でもユー坊はその為に少なからず自分を賭けてるだろ?

そして何をやるにしても自分の中でこうしようだとか、こうなった場合はああしようってプランがいくらかある。だがレオナはどうだ? ユー坊と話をしてる中でも答えをユー坊と言う他人に委ね、何かをするにしても自分からこうするなんて具体的な話をほとんどしてねェだろ」


その言葉を受けてウメコは納得した表情を見せ、ゆっくり頷く。


悠はレオナの為にと色々とやろうとしているが、自分の持ち得る手段をフル活用し、現状する必要のないメイドと言う仕事に就いている。結果的にレオナの為ではあるが、同時に自分自身の為に出来る事をやろうとしている。

だが逆にレオナは自分の置かれた状況に翻弄され、その為にしようとしている事に焦点が定まっていない。そしてその問題に対して悠に答えを求めると言った様子を見せ、思考の選択を彼に全て頼っているのだ。



「はえー話が悲劇のヒロインくせーんだよ。こんままじゃァロクな事になんねェ」


「つってもどーすんだ。ユウに話しても意味ないだろ?」


「話したら余計にあのバカ空回りすっだろ。……まぁ、いくらか考えはあっからアタシに任せろ」



身を乗り出してニタリと笑う彼女の顔を前にトシキとウメコはいくらか引き笑いを浮かべながら青褪める。

トシキは「笑顔が完全に悪役サイドなんすケド……」なんて言葉を喉から上に出るのを押さえ、口を両手で覆うと慌てて飲み込んだ。
























「―――無事に届いたみたいね」


ガラス張りのテラスの中で黒髪を揺らしながら夜空を見つめながら彼女はゆっくりと安堵した笑みを一人浮かべていた。

明かりを付けず、空に煌々と輝く星々を見つめては手を伸ばす。

夜の濃い藍色の染まったその一室の中で繁る植物たちは星の明かりを受けて輪郭を薄く緑色に光らせ、地面の赤レンガは暗さに染められ辺りの影と入り混じる。

そんな中、白椅子に腰かけて仰ぐ彼女も同じくその影に溶けるかのようだが、星明りがその輪郭を浮かび上がらせ、淡く彼女を照らしては神秘的な光景を醸し出す。




「至る結果はもう変えられない。でも、至るまでの事は変えられるはず……」


絵画の一枚のような美しさを見せる彼女はふぅ、と小さく溜息を洩らし、瞑目しては神に祈りを捧げる牧師のように胸へ手をあてる。


「―――何度も何度も諦めかけたけれど、けれど今度は、今回はきっと」


両手で顔を覆い、小さく蹲りながら嗚咽混じりに彼女はそう呟く。

その言葉はどこか贖いを含み、黒華は小さく身を震わせてると黒のスカートの上にポツポツと雨音のような滴が落ちる音が僅かに響く。




「だから待ってて。今度は必ず助けてみせるから……唯華」


弱々しい口調ながらも強い意志を宿したその言葉はすぐに辺りの影に溶ける。

そしてその言葉に応えるかのように辺りの樹々たちは小さく揺れてはその淡い輪郭を光らせた。

きっみの手で~ きっりさいて~ とっおい日のきーおーくーをー!

すいません無印派です。(おっさん

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