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第七十話 「愛は世界を救うのさ!!」

「―――召喚について具体的な話とかはされた?」


現実逃避に飽和した意識を現実へ手繰り寄せ、たどたどしい口調ながらもボクはなんとか言葉を口にする。

放心してる場合じゃない、しっかりしろ自分。



「今日の話し合いじゃまだ細かい話はされてないかな……。それよりも大迫轟の節メリサリンド・ルゥの話題で持ち切りだったから」


「そっか。そうなると後日の要談でボクが加わった所で、再度召喚についての話がされるかもって考えておいた方が良さそうだね」


「うん……にしてもユウって凄く冷静でちょっとびっくり」


「そ、そう? 構えてたのはあるけど、相当内心はかなり結構パニックだよ」


「えっと、相当なの? かなりなの……? 色々落ち着いてユウ」


「あ、あはは! ごめん」


テンパってるところを指摘され、咄嗟に上擦った笑い声で自分は誤魔化す。

心配そうに前屈みに覗き込んでくるもんだから、間近に迫った彼女の顔に余計焦っちゃって冷静を保とうとしてた思考はどこへやら。

―――しかし今の会話でトシキたちが何か言ってくると思ってたんだけど、何も言って来ないな。



『んあ? まぁー予想はしてたし、色々思うとこはあっけど現状じゃまだ情報が足りねぇ。そんで仮に今回の異世界召喚を阻止したとしても根本の解決にもならねぇ。お前が答え出てないように俺らも考え中ってワケさ』


いつも通りの気怠さMAXボイスの彼はそう言い終えると静かになる。

そして悩んでるのはトシキも同じとわかるとボクはいくらかほっとし、少し落ち着く。



「ごめんね。本当は召喚なんてしないって形にしたかったけど、私には無理で……」


「気にしないで。そうやって色々してくれてたってだけで充分だよ。ありがとうレオねぇ」


出来るなら召喚をする事も召喚に携わる事も避けたかったけれど、トシキたちを元の世界へ帰すと言う目的がある以上、それはあまりに甘すぎたと考え直す。


「とりあえず今は召喚をするしないの話は置いといて、ボクは状況の判断と大迫轟の節メリサリンド・ルゥの問題を優先しようと思う。アレもコレもって欲張っても大変だし」


「何から何までありがとう……。私もどうするべきかもっと考えなきゃ」


先程までの思い詰めたような表情がいくらか和らいだ彼女はボクの隣へ腰かけ、小首を傾げてはその無垢な瞳でボクを見つめてくる。

こちらを見ながら「ん~」なんて唸って、「うん!」といくらか力強く声を上げて立ち上がる。


自分は何を考えてるのか何を思い立ったのかわからず、広い部屋の中をちょこちょこと歩き回るレオナを目で追うだけだった。



「……ユウ、お願い」


「へ?」


目の前に立った彼女はいくらか紅潮で頬を染めながら両手でボクに便箋を渡してくる。

もしやラブレター!? な訳もなく、それは見覚えのある便箋で見覚えのある溶けた猫のイラストが添えられた物。


「これってクロカさんに貰った占いの結果じゃ」


「うん、巫女様の文字は私には読めないから。ユウに読んでもらおうと思って……」


「それは良いけど、ボクに内容がバレちゃ―――」


ボクはその先を口にするのをやめた。

また隣へ腰かけた彼女はそれを踏まえた上でと言った素振りで、いくらか顔をそらしてそのまま黙る。


「ユウには隠し事は嫌だし、もうイロイロ話しちゃったから、だいじょうぶ」


「……わかった。じゃあ、読むね?」



震える手で封を開け、紙を取り出して広げる。

とりあえず一枚目に目を通すとボクの時と同じように紙いっぱいに短文。

しかし自分の時とは違い、




「俯いて言葉を口にしてはダメ、顔を上げて。」


キチンとした助言と思われる言葉が一つ。


「えっと、どう言う事?」


「わかんない。他に何も説明は書かれてないね……」


彼女に向けてそのレター用紙を見せる。

何となく言わんとしている事はわからなくもないけど、抽象的で何とも要領を得ない。

仕方ないので一枚目の言葉に関しては後回しにして二枚目をめくり、目を通す。

するとそこにはレオナが引いたタロットの意味が自分の時と同様に綴られていた。









◆◆◆ ◆◆◆


THE LOVERS (ざ・らばーず)



正位置は選択、決断、判断、恋愛、結婚、友情などなど。

そしてレオナが引いた一枚目もあり、現状の貴女の気持ちを一番示すカードで恋。

現状、それに対していくらか満たされた状態であると同時に、選択をしなきゃいけない状況下でもある。

それが何に対してかはまだわからないけれど、近々悠と一緒に居る為に選択を迫られるんじゃないかなー?

後は別の意味で将来に繋がる出会い、人間関係が作られる意味も持ちます。



◆◆◆ ◆◆◆


TEN of CUP (てん・おぶ・かっぷ)


正位置では平和、結婚、家族愛などを意味します。

恋愛以外では目標を達成とか安定とかって意味がありますが、このカードは左側にあったので過去を意味するので昔にあった平和や家族愛、家庭を示している気がします。



◆◆◆ ◆◆◆


TWO of CUP (つー・おぶ・かっぷ)


正位置では繋がりや和解、絆や結婚などを意味します。

そして右側にあったカードで未来を意味する場所で出たので、今目の前を絶ち塞ぐ障害や干渉がゆくゆくは取り除かれる、なんて意味にも取れます。



◆◆◆ ◆◆◆


THE TOWER (ざ・たわー)


正位置では突然の変化、崩壊、破滅、転落などなど。

逆位置でも崩壊や破滅からの再生、復活、再開を意味するタロットの中で出るのを嫌がられる一枚でもあります。

そしてこれは悠に合わせて引いて貰った一枚でもあるので、ラバーズの裏にあると言った位置になります。

恋愛に於いて考えれば破局とか別れるって形に読めちゃうけど、前後を繋いで考えるとそうとも言えないのと、悠と言うキーを挟んで考えるとまた見方が変わってくる感じですね。



一枚で考えるとただの恋愛を示したようにも見えるけれど、この子達も全ての

枚数を合わせて考えてと言いたいんだと思う。

まぁ全部のカードを繋げて行くとレオナは悠が好きで、理由は貴女の抱えた問題を

おおきく変えた存在だからかな? でも貴方は気持ちを

うちあけるには過去が足を引っ張ってる上に貴女の血筋とかに大きく関わってる。

あまりにも多い問題を前にどれから手を付けるべきかどう解決すべきかわからず。

て、感じの状況と心境を抱えてるって様子だね。



そしてこれから更に自分を脅かす問題が発生すると思う。

家族や家庭……レオナは王女だからそれを踏まえると血筋やもっと大きな繋がりが過去と言う問題を盾に、一気に動き出す。

問題は自分のみならずそれらの周りを巻き込んだ形で起こり、最悪全てが崩れ去る危険性を示唆してて、ラバーズはその選択がレオナに委ねられるのを示してる。


あとは事情を知ってる身からすると貴女の国で起こった事イコール家族や家庭の事って感じに思っちゃうけど、もっと別な、もっと単純な問題も含まれてる気がする。

って言うのも2枚、家庭や家族に関係するカードが出て、もう1枚も結婚の意味とかを持ったカード。

そして2のカップで和解や絆と言う点を考えると、今も生きている人に対しての問題がキーって言うのがいくらか伺えるかな。


纏めると悠に救われて好きになっちゃったけど、それを打ち明けるには自分の過去とかモロモロと置かれた状況のせいで二の足を踏んでる。

そんでもって悠もレオナの事を好きだけど、尻凄みしてるせいでお互いに言い出せないーって状況になってる感じだね。だからレオナ頑張って言ってこ!

んでこれから起こる問題だけど、2人で何とかしてけば大丈夫。愛は世界を救うのさ!!





「―――と、書いてあるのは以上かな。もう一枚は……真っ白? だね」


「そ、そっか」


短くそう答えた彼女はそのまま静かになり、これまた気まずい沈黙が流れる。

……占いと言えど、ハッキリとボクの事が好きとか書いてあったがクロカさん何考えてるんだ。

矢継ぎ早に内容を口にして誤魔化したけど、心臓に悪い。

クロカさんもこっちの世界の文字で書き直してくれれば良かったのに、わざわざボクに読ませるようにしたんだか……。



「あれ」


「ユウどうかしたの?」


「いや、真っ白だと思ってたんだけど、端に小さく文字が」



間が持たずに手にある真っ白なレター用紙を眺めていると右下の端に小さな可愛らしい文字が。

そして一言、



「ヒント・火でーっす……?」


「火? そのお手紙燃やすの? 燃やすと魔法が発動するように細工してあるのかな」


「そんな事言ってなかった気がするし、違うと思うけど……うーん?」


裏表を返して見ても何も無く、火を使うと何かあるしかわからなかった。

彼女の言う通り燃やしても良いけど、もし間違ってた場合に大変な事になってしまうし、迂闊に行動には出れないので流石に思い留まる。



そんな会話も束の間、また互いに口をつぐむ。

何か言わなきゃと焦りが胸を叩くも、先程の内容がグルグル駆け回り気が付けば脳はオーバーヒート。

嬉しいと思う反面、それは彼女から直接聞いた訳でも無いので実は違うんじゃ? と言う思いが入り混じって脈を鳴らす。

自然に呼吸すらも苦しくなり、膝に乗せる手はスカートを強く握り締めては汗ばんでいた。ボクは落ち着けと言い聞かせながらゆっくり深呼吸。



「……巫女様って本当凄いね。思ってた事とか不安になってた事も言い当てて、私がユウ好きって理由もちゃんとわかってる、辺り……とか」


後半しどろもどろしながら伝えられた言葉に胸の中は破裂寸前の風船のように膨らみ、息が詰まる。

顔を動かそうにもキシリと音を上げて動かない……いや、全身が錆び付く人形みたいになっちゃって関節はギシリと音を立てるだけ。


「そう、だね」


「―――うん」


ぎこちなく擦れた声で返事をすれば、澄んだ声がそれに返す。


「ユウ……」


ゆっくり名を口にされ、背筋を何かが這う。その感触は心地好さを伴い、甘美とも似た気持ち良さの前に小さく吐息を漏らしながら顔を隣へ向ける。

彼女はストールを肩から下ろし……肌の透けるベビードール一枚で胸を隠しながらこちらを見ていた。

ほんのり頬を染め、緑の瞳は柔らかな宝石色を見せ、ボクの名を口にした彼女の唇は艶やかな色を浮かべる。

こんな時、漫画もゲームも役に立たないな……なんて言葉が過ってはどう反応したら良いかわからない事を、何かのせいにし出す情けなさ。



「ユウ……?」


扉を優しくノックするみたいに今一度、名前を呼ばれる。

その呼びかけに理性と言う薄壁は簡単に破られ、空いた穴から感情がひょっこり顔を出す。


「どうしたの、レオ……ナ」



穴からゆっくり出てきた感情は、取り繕うのをやめる。



「やっと普通に名前呼んでくれた」


「見た目が年下だから、レオねぇって呼ぶようにしてたんだ。本当はボク、中身14なんだ。ごめん、黙ってて」


「そっか……私と同い年なんだね」


彼女は打ち明けに対し、嬉しそうに柔らかく微笑んで見せる。


「じゃあ私もちゃんと伝えるね」


息を整え、一拍を置く彼女。

じっとこちらを見つめ、口を開く。



「ユウ、貴方の事が……好き」



その言葉は脳天から爪先まで突き抜け、頭が痺れる。

クロカさんの手紙や今までの挙動でとわかっていた事だけど、自惚れだったら? と言う気持ちからそれを受け入れれなかった。

そして同時にそれは自分から気持ちを口にすると言う行動にも蓋をし、踏み出せずにいた。

けど今それは全部無くなった。



「―――ボクもレオナが、好きだ」



何もかもが取り払われた感情は気が付けば素直に言葉となっていた……。

やっと告白ですわ! 遅いぞ!

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